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訓練結果と願いの大きさ


怪しげ満載の狐面男が主催する配信を見続けること、早30分ー

るいは、時折喉を潤しながら、にやにやを笑顔を浮かべて見続けていた。


「さあ、リスナーのみんな! 落ち着いてきたかな? 訓練の復習といこうか!」

狐面男は、魔法使いになるための訓練内容と詠唱時の注意事項について話し始めた。

「訓練はしているかな? 毎日しないと勘を取り戻せないよ~! 魔力は身体の中心にある。それは覚えているかな? まずは身体の中心という概念と魔力が流れている感覚をイメージしよう。吸った空気が気管を通り、肺に届いてガス交換をして心臓に戻る、酸素が全身に行き渡っていって、二酸化炭素を回収し、肺を通って口からは吐かれていく、これを意識して呼吸を重ねていくと身体の中心から温かいものが湧き出てくるのが分かってくるよ。その温かいのがいわゆる魔力と呼ばれるものだよ~」


狐面男は、器用にソファーの上であぐらを組んで座ると下腹部に手を当て、深呼吸を繰り返していた。


「練りあがった魔力を使う時は、なにをするんだっけ? 覚えているかな~。っそう! 使いたいことを想像するんだよ! 想像をより具体的にすればするほど、魔法に置換される精度は上がり、繊細な動きを出すこともできる。こういう風にね!」


右手の人差し指を指揮をするように動かすと、ぽわぁっと光った光の球が指の動きに合わせて動いた。

それを目撃したリスナーたちは感動や嘲笑を止まらぬ早さで入力し、右側のチャット欄は大盛り上がりで目で追えない速さで動いていた。そこには、すごい!魔法だ!などと感動や驚きを伝えるリスナーの他にも、CG乙などとからかうように非難をする声も上がっていた。チャットの中では、リスナーたちの戦いも始まり、収拾がつかない状況になってしまっているところもあった。


そんな中、狐面男の言うことを忠実に守り、深呼吸と想像を繰り返するいは、見当違いにのんびりと思考を巡らせていた。

「やっぱり杖なのかなー。詠唱もかっこいいけどなあー、最近のラノベは無詠唱だしな~」

るいは、チャット欄が大荒れになっていることにも気づくことなく、背もたれに身体を預けて天井を見ながら狐面の男が話す内容を忠実に再現しつつ、杖をまるでヴァイオリンの弓を持つように手首のしなやかさを意識してエア杖を持ち、動きを繰り返していた。


「そういえば、杖って何で出来てるんだろう。有名なやつは魔法の木とか魔法生物の何かだったりするよね。日本には魔法生物とかいないだろうし、現実的に作るとしたら木だな。でも加工が大変そうだな~。うーん、よくある手のひらの上に魔力を集めて魔法の練習とかしてみたいけど、杖が魔力を介して出力できるようにしているという説を採用すると効率が悪いのかな」

よしっと再度気合いを入れて座り直し、るいは魔法の訓練を繰り返した。配信が90分経ったところで狐面男は、だれてくるであろうリスナーたちを煽った。


「さーて! みんな! 魔法の訓練は順調かな? 眠気を覚ますプレゼントを用意してるよ! チャット欄は盛り上がってるところ悪いけど、本番はこれからだ。初生配信ということでどんなプレゼントだと思う? 結構大盤振る舞いしたんだよ。準備はいいかーい!」


ヘビーリスナーのるいも魔法訓練を一旦止めて姿勢を前のめりにすると、「えぇ! 準備はいいよー!」と拳を高く上げた。


「うんうん、準備万端みたいだね! 今日はなんと! 特別に! みんなが行きたい魔法世界に招待しまーす! 1名様限定! ひゅーひゅー!」

自分の言ったことに拍手をして、口笛のように声を出して盛り上げる狐面男は、チャット欄で興奮を隠しきれないリスナーと嘘だというリスナーが入り乱れていることを確認し、数回頷いた。


「うんうん、そうだよね。信じられない人もいるよね。でもさ、やってみる価値はあるんじゃない? 一生に一度、僕のチャンネルを見てくれているってことは魔法とかそういったことに興味がある人しかいないと思うんだ。どう? やってみなきゃ分からないよ。残念だけど僕の力では、1名様しか連れていけないんだ。ごめんね。倍率は、えっと……4万人分の1だ!」

画面に小さく映し出された視聴者数を見るために顔を近づけながら、人差し指を掲げて、「1」ということを強調して伝えていた。


「ふええええ?!?! 魔法世界にご招待?!?! いや、同接四万?! そんなに人気チャンネルだったっけ、これ?!」

るいは、食いつくように画面をみつめて、どんどん増える同接数を見続けていた。


「お、どんどん増えてきたねえ。僕も有名配信者の仲間入りだ。さて、リスナーのみんな! 期待半分冗談半分って感じかな? お待ちかねの招待方法を説明するよ! 方法は簡単」

次の言葉を待つようにチャット欄は大盛り上がりでいろんな意見が交わされていた。


「ふむふむ、いい線いってる人もいるね。答えは、どれだけ魔法世界に行きたいかを頭の中で願うだけ。いわば、妄想だ!」


その発言にチャット欄は更なる盛り上がりをみせ、狐面男は頷きながら話を進めた。

「魔法は想像力と言ったよね? その想像力が強くないと招待する世界では生きていけない。だからこそ、どのくらい妄想ができているか、想像力があるかの適性を判断しようと思う。ポイントは、具体的に、細かいディティールまで想像すること。そうすれば、妄想が捗って、魔法世界に行きたいという願いに繋がって大きくなるからね。探しやすいし、分かりやすくなるんだ。僕の都合だけど、締切は10分後! もう始めないと間に合わないよ。当選者には直接会いに行くから、待っててねー! まったねーーー!」


配信画面は閉じられてもなお、チャット欄が鎮まることはなかった。

狐面男の発言を聞いて、瞬きを忘れたるいは、頭の中を整理することにした。


「宝くじも買わないと当たらない。想像するだけ、妄想なら任せろ! 明日から年に1度の5連休! 締め切りが10分後。それまで具体的に魔法世界について妄想して、いかに自分が魔法世界に恋焦がれているかを示せばいいと。30年魔法学校からの入学許可証を待っていたんだ! よしっ、やるしかない」


気合を入れたるいは、ぐっと拳を握ると、そそくさとワイヤレスのヘッドホンに装着し直し、魔法訓練の回のアーカイブを聞きながらベッドに大の字で仰向けになり、深呼吸をして、目を閉じた。

この30年考え続けてきた異世界、魔法世界、魔法、魔法使いを思い起こし、むくむくと脳内に妄想が湧き出てきた。

 

***


やっぱり王道はヨーロッパ系だよね! 王国で騎士団とかいる感じとかかっこいい。神がいる魔法の国! 定番の貴族社会! 平民とかは少し嫌だな~昔の貴族制って少し線引きがくっきりしてるからな。やっぱりここは、魔力量が判断基準の単純明快、力がすべてってのも燃える。食べ物は美味しくて、いや、食材は豊富で自分で料理するのも楽しいかも! 魔法は杖もいいけど、詠唱かっこいい。恋愛ドロドロはなくて、魔法を楽しめる世界がいいなあ。魔力量が多くて制御難しくて訓練中にどっかーんって大きい魔法もしてみたいよね~むふふふ♪ あんまり厳しい家だと生きるのつらくなるから、生活だけは普通がいいな。両親にもないがしろにはされず、一人で勝手に魔法の練習ができる時間も欲しい! 広い裏庭で! 楽しみすぎる!!

全属性使いたいな~さすがに欲張りセットすぎるか? まあ、妄想だから。定番のイケてる上司にガタイのいい騎士団長とか?! 看護師だし治癒魔法とかもできたら世界を救えたりするんじゃない! むふふふ。


「ぐふふふ」

実際に気持ち悪い笑い声が漏れながら、るいは妄想の海に深く潜っていった。


その頃、数枚のモニターが配置されたとある部屋では、見覚えのある狐面がデスクの上に置かれていた。

先ほど終えたマジックジャーニーの生配信画面を見ながら、チャット欄の勢いが止まらない様子に喜びを感じている男が座っていた。

「さーて、どのくらいの人が取り組んでくれてるかな。おっ、結構やってくれてるー!嬉しいー!」

狐面の男の目の前にはモニターの他に異質なウインドウがいくつも出現し、人々の願いの大きさがグラフになって映し出されていた。


「ほぉ。恋愛がしたいのか。イケメンと恋したいよね! わかるなー。生活魔法ね、ほのぼの系だ。育てたりつくったりするのが好きなんだろうな。それも楽しいよね~。ただ! 今回はどーんっと魔力量多い人をあの世界に入れて、魔力構築を強めたいんですよね~。純粋に魔法が好きで使いたい、みたいな人が最適なんだけど。そんなすぐ見つからないか。ははは、みんなラノベ好きすぎだなあ」

ウインドウで願いの大きさを覗いていると、とあるモニターがピカピカと強い光を放っていた。


「なにこの明るさ、バグ? ……え、この人すごいじゃん!」

ウインドウをタップし、画面を拡げて、願いを覗いてみると思い描いた妄想世界が見ることが出来た。

中世ヨーロッパの世界で貴族社会と魔法世界で、杖を使わずに様々な魔法を使いこなしている姿をしていた。

恋愛はせずに魔法を使いたい、魔力量が多い、全属性希望、妄想特化型の異世界設定と詳細なイメージが具現化している映像は周囲を見回しても異質だった。


「おぉ! すっごい魔法好きじゃん、この人。魔法使いになりたい? やばすぎ! 最高のリスナーじゃん!」


男はモニターを操作し、魔法世界招待への手続きを始めた。

ベッドで大の字になって妄想世界を飛び回っている女性を見て、うきうきが止まらない男は、直接当選結果を伝えようとどこに住んでいるか調べていると、見覚えのある名前が目に入ってきた。


「どれどれ、お名前なんですかーっと。…ふはっ」

ニヤッと口角が上がり、先ほどまでの男の声ではなく、親しみを込めた猫なで声で名前を呼んだ。


「みーやぎさんっ。当選おめでとうございます」



狐面男は、男の声で女性口調に近い感じで話しているイメージです。

ちょっと違和感があるところが私のポイントです(笑)

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