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訓練と願いの大きさ

「さあ、リスナーのみんな!復習といこうか!」

狐面の男は、魔法使いになるための訓練内容と詠唱時の注意事項について話し始めた。


「訓練はしているかな?毎日しないと勘を取り戻せないよ~!

魔力は身体の中心にある。それを意識して呼吸をしていくんだ、すると徐々に魔力が練りあがっていくのが分かるよ。」


男は、ソファーの上であぐらを組んで座ると下腹部に手を当て、深呼吸を繰り返していた。


「練りあがった魔力を使い時は、なにをするんだっけ?・・・そうだ!想像だよ!想像をより具体的にすればするほど、魔法への精度は上がり、繊細な動きを出すこともできる。こういう風にね!」


右手の人差し指を指揮をするように動かすと、ぽわぁっと光った光の球が指の動きに合わせて動いた。

それを目撃したリスナーたちは、右側のチャット欄は大盛り上がりで目で追えないほどの速さで動いていた。そこには、すごい!魔法だ!などと感動や驚きを伝えるリスナーの他にも、CG乙などとからかうように非難をする声も上がっていた。チャットの中では、リスナーたちの戦いも始まり、収拾がつかない状況になってしまっていた。


「やっぱり杖なのかなー。詠唱もかっこいいけどなあー、最近のラノベは無詠唱だよね!」

るいは、チャット欄が大荒れになっていることにも気づくことなく、背もたれに身体を預けて天井を見ながら狐面の男が話す内容を忠実に再現しつつ、杖を妄想の中で持ち、動きを反芻していた。


「杖って何で出来てるんだろう。魔法の木?魔法生物とかも知らないし、やっぱり木かな。加工が大変そうだな~。よくある手のひらの上に魔力を集めて魔法の練習とかしてみたいなあー、死ぬまでには魔法使いになって無詠唱とかもやってみたいな~!」

よしっと再度気合いを入れて座り直し、るいは魔法の訓練を繰り返した。配信が40分経ったところで狐面男は、リスナーたちを煽った。

「さーて!みんな!魔法の訓練は順調かな?盛り上がってるところ悪いけど、本番はこれからだ!

今日は、生配信ということでスペシャルプレゼントがあります!準備はいいかーい!」


ヘビーリスナーのるいも魔法訓練を一旦止め、「えぇ!準備はいいよー!」と拳を高く上げた。


「うんうん、準備万端みたいだね!今日はなんと!特別に!魔法世界に招待しまーす!1名様限定!ひゅーひゅー!」

自分の言ったことに拍手をして、口笛のように声を出して盛り上げる男は、チャット欄で興奮を隠しきれないリスナーと嘘だというリスナーが入り乱れていることを確認し、数回頷いた。


「うんうん、そうだよね。信じられない人もいるよねー!でも、やってみる価値はあるんじゃない?やってみなきゃ分からないよ?僕の力では、1名様しか連れていけないんだ。ごめんね。倍率は、えっと・・・4万人分の1だ!」

画面に小さく映し出された視聴者数を見るために顔を近づけながら、人差し指を掲げて、「1」ということを強調して伝えていた。


「ふええええ?!?!魔法世界にご招待?!?!どうやるの!!」

るいは、食いつくように画面をみつめて、抽選方法を待った。


「リスナーのみんな!期待半分冗談半分って感じかな?お待ちかね!招待方法を説明するよ!

方法は簡単。どれだけ魔法世界に行きたいかを頭の中で願うだけ。いわば、妄想だ!」


その発言にチャット欄は更なる盛り上がりをみせ、狐面の男は頷きながら話始めた。

「ポイントは、具体的に願うこと。その方が願いが大きくなって分かりやすくなるんだ。締切は10分後!もう始めないと間に合わないよ!当選者には直接会いに行くよ!まったねーーー!」


配信画面は閉じられてもなお、チャット欄は盛況だった。

瞬きを忘れたるいは、頭の中を整理し始めた。


「願うだけ、妄想なら任せろ!明日から年に1度の5連休!締め切りが10分後。それまで具体的に魔法世界について願えばいいと。よし。」


どんな魔法世界にしようかわくわくしながらぼふんっとベッドに仰向けになり、目を閉じた。

この30年考え続けてきた異世界、魔法正解、魔法使いについてむくむくとるいの妄想が膨らんできた。


***


やっぱり王道!ヨーロッパ系だよね!王国で騎士団とかいる感じ?神がいる魔法の国!定番の貴族社会!だけど、魔力量とかが優先されてるのがいいよねえー!食べ物は美味しくて、いや、食材は豊富で自分で料理するのも楽しいかも!魔法は杖もいいけど、詠唱もあり!変な恋愛ドロドロはなし!恋愛よりも魔法を楽しみたい!!どっかーんって大きい魔法もしてみたいよね~むふふふ♪

あんまり厳しい家だと生きるのつらくなるから、生活だけは普通がいいな。両親にもないがしろにはされず、一人で勝手に魔法の練習ができる時間も欲しい!広い裏庭で!楽しみすぎる!!

全属性使いたいな~さすがに欲張りセットすぎるか?まあ、妄想だから。定番のイケてる上司にガタイのいい騎士団長とか?!看護師だし治癒魔法とかも興味でてきちゃうな~むふふふ


「ぐふふふ」

気持ち悪い笑い声が漏れながら、るいは妄想の海に深く潜っていった。


***


「さーて、どのくらいの人が取り組んでくれてるかな。おっ、結構やってくれてるー!嬉しいー!」

狐面の男の目の前には異質なウインドウがいくつも出現し、人々の願いの大きさがグラフになって映し出されていた。


「この人は恋愛メインがしたいのか。イケメンと恋したいよね!この人はー?生活魔法かーほのぼの系ね。それも楽しいよね~ただ!今回はどーんっと魔力強めたいんですよね~。純粋に魔法が好きで使いたい、みたいな人が最適なんだけど。みんなラノベ好きすぎだな~ははは」

ウインドウで願いの大きさを覗いていると、とあるモニターがピカピカと強い光を放っていた。

願いが他の人より何倍もの大きさになっているリスナーがいた。


「なにこの光?この人すごいじゃん!」

ウインドウをタップし、画面を拡げて、願いを覗いてみると思い描いた妄想世界が見ることが出来た。

中世ヨーロッパの世界で貴族社会と魔法世界で、杖を使わずに様々な魔法を使いこなしている姿をしていた。

「おおぉ!魔法好きなんだー!魔法使いになりたい?やばすぎ!最高のリスナーじゃんー!」


男はモニターを操作し、魔法正解招待への手続きを始めた。


「どれどれ、お名前なんですかーっと。…ふはっ」

ニヤッと口角が上がり、親しみを込めた猫なで声で名前を呼んだ。


「みーやぎさんっ♪当選おめでとう。」



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