reincarnator
「とりあえず転生者が吹っ飛んだところまで行きましょう。向かいながら魔王のことを色々教えるから。」
「わかった。」
「あなたはどこまで知ってるの?」
「俺は神の元で働いていた時、魔王達は悪いやつで神が転生者や天使を魔界に送り込んでるとしか教えてもらってないんだ。俺の仕事は転生者に神の力を与える事だった。」
クラーナーは少し鋭い目つきをした。
「魔神戦争は知らないの?」
「ライル様に会ってから知った。」
「別に様はつけなくていいのよ。」
「でも大魔王なんだろう?」
「大魔王と言っても王でしょ。それにその呼び方は昔魔王軍が滅ぼした国の人間が勝手に言い出しただけで、私たちは魔皇帝様以外は全員魔王よ。」
「今のほとんどの人間は魔王は世界に1体しかいないと思っているわ。」
「魔王の仕事は人間を滅ぼす事なのか?」
クラーナーは首を傾げ、興味深そうに相手の顔を見た。
「いいえ、秩序を保つ事よ。まあ人間が攻めてきたらやり返すけど…。転生者は神に命じられて魔王を倒しに来るけど、服従したり、余生を静かに暮らしたいと望むならそうさせるわ。」
「魔王は自由よ。何をしてもいいわ。城を作って軍を率いてもいいし、突っ立ててもいい、人間に混じってもいいし、支配してもいい、戦争をしてもね。」
「私は魔王城を建設して人間と外交を結ぶつもりよ。あなたはどうしたいの?」
「そなたを真似ようと思う。しばらく補佐しつつ勉強してもいいか?」
「ええ、構わないわよ。」
「しかしなぜ神と魔王は争っているのだ?それに人間ではなく天使を送れば戦力としては強いんじゃないのか?」
「神と魔王が争っている理由はわからないけど、人間を送る理由は神が人間の願いを叶えることができるからよ。」
「神だけが持つ能力。人間が純粋に心から願ったことを叶えることができる。場合によっては魔皇帝をもしのぐ力を手にできるわ。」
「厄介だな…。だがそれならなぜ魔王が簡単にやられてもいいはずじゃないか?」
「いくつか条件があるみたいよ。それに単純に魔王の力が想定外なんじゃないのかしら?条件の一つに、生まれ変わる世界の知識を持っていたら願いは叶えられない。だから力を与えた後でないと魔王のことを話せないわ。」
「あなたは転生者に力を与えていたんじゃないの?」
「俺は神の補佐を作業的にしていただけだ。後は緊急時の戦闘要員としてとか雑用とか。」
「ルビーは何でそんなに詳しいんだ?」
「私は魔王になる前はライルと行動を共にしてたから。魔王の中で人間や神について1番詳しいのは彼だから。」
「この辺ね。転生者を探しましょう。」
「その必要はないみたいだぜ。」
転生者は木に吊るされていた。
「気絶しているみたいだな。」
「クラーナー。周囲の警戒をお願い。」
「そうだな。転生者が一体とは限らないからな。」
(クラーナーがまともなことを言ってる!)
「さてと。起きなさい人間。」
「ここは?」
「目が覚めたようね。」
「出たな魔王!」
「あなたの武器はここにあるわよ。神からもらった力はこの剣ね。自分に能力を割り振ればよかったのにね。」
「嫌味か。さっさと殺せ!」
「いさぎがいいのね。一つ聞くわ。あなたは私たちが魔王だから殺すの?人間じゃないから?」
「お前らは人々を苦しめ、傷つける。だから女神様から 」
「私達が悪事を働いている証拠は?最初あなたから攻撃してきたわよね。」
「それは、…」
「返すわ。」
ルビーは魔法で転生者を下ろし、剣を彼の足元に投げた。
「ここから南西に行けば人間の国がある。彼らが本当に困っているなら私達をもう一度殺しに来なさい。北の山のふもとに私の城があるわ。神について知りたければ質問しに来てもいいわよ。」
「自分の目で確かめる。だがまだお前達を信用したわけじゃないからな。」
転生者が去ろうとした時ルビーが答えた。
「私は魔王ルビー。あなた名前は?」
「しょうただ。」
「しょうた、覚えておくわ。」
しょうたは去っていった。
「クラーナー!私達も一旦城に戻りましょう。」
「そうだな。」