Deadlock
「まずいわね。」
「いでよヴァーテル。」
ルビーが召喚できる最高位の使い魔だ。
「お呼びですかルビー様。」
「緊急事態よ。」
「現在の状況を整理すると私の領地で転生者が現れて、それなりの強さがあるみたいだけど正確な強さはわからないわ。応援要請したいところだけど先にクラーナーが応援要請した。」
「私が転生者のところへ向かいましょうか?」
「いいえ、あなたにはこの拠点の戦力増強と防衛をお願い。私はまずクラーナーの応援に行くわ。そこで問題を解決したのち、私の陸の領地でクラーナーと共に転生者と対峙するわ。」
「他の魔王様に要請してみてはいかがでしょうか?」
「現在、他の魔王は自分の領地で転生者と交戦中。ライルは神との戦いで休養中よ。レオンは1人で世界全体を総括しているから、よっぽどのことがない限り呼ばないわ。」
「かしこまりました。この拠点はわたくしめにお任せください。」
「頼んだわよ」
ルビーは転移した。
クラーナーは任された領地で考えていた。
「どうしたものか〜。」
そこにルビーが現れた。
「クラーナー、応援に来たわ。転生者はどこ?」
「はて?転生者とは?」
「えっ、転生者が来たから応援要請したんじゃないの?」
「私は魔王としてまず何をしたらいいか聞きたくてそなたを読んだのだ。」
「おまっ!」
ルビーは我を沈めて、頭を抱えた。
「はぁ〜。 いい、ステップのそ1。応援要請は緊急事態に使って。質問はメッセージで話して。」
「なるほど、人間で例えると電話だな!」
こいつ、アホだったのか。
ルビーは心で突っ込んだ。
ルビーは呆れながら言った。
「人間あるあるは地球に行ったことのあるライルと話してね〜。」
「そんなことより私の領地で転生者が現れたの。あなたもこっちきて手伝いなさい。魔王としてのノウハウはその後教えるから。」
「よしわかった!」
「いい、まず作戦を、、」
「うぉぉぉーーまってろーてんせいしゃーー」
クラーナーは転移した。
ルビーは目を点にしていた。
「アホだから懐柔されたのかしら。まあ戦闘力はあるし大丈夫だろう。」
「……」
ルビーは転移した。
ルビーが陸の領地に戻ると脳筋が城を眺めていた。
「立派な城だな。」
「あら、あなたセンスがありますわね。(頭はないけど)」
「何か今失礼なことを考えていなかったか?」
「いいクラーナー。この地図を見て。」
ルビーが地図を広げ脳筋に説明する⁉︎
「私たちはこの北と大地にいて、西は人間どもの生息地が広がっているわ。南も人間が生息していてその先は海。東はただ森林が続いていて魔物が多く生息しているわ。」
「そして転生者はそれらの真ん中に召喚され、その後北西に向かったわ。」
「私の建てた魔王城は北が山脈で覆われているから迂回されてきたから攻められることはないわ。」
「オーケー!完全に理解した!」
完全に理解した……?(本当か?)
「俺は北西に行って転生者を倒せばいいんだな。」
ルビーは転生者がどこにいるかを脳筋が把握している事に驚いた。
「いいえ。あなたは魔王城にある隠し通路を使って山脈を越えて転生者の進む道を先回りして欲しいの。私は北西に向かって転生者と対峙するから、クラーナーと私で挟み撃ちよ。」
「よしわかった」
ルビーはコウモリのような魔物を召喚した。
「この子が道案内をしてくれるわ。それじゃあまた後で。」
「おう、気をつけてな!ルビー。」
2人は別れた。
ルビーは北の山脈の西の端、崖を歩いていた。
「この方角をずっと先に進めば確かドワーフの国が。」
「なんにせよ転生者が西に向かわなくてよかった。西に向かえば人間の国。勇者の称号を手に入れ力が強化され討伐が困難になる。武器やアイテム、情報を手に入れる前に打たなければ。」
「転生者の場所はもう直ぐね。」
「ステルス」
ルビーの姿は不可視化された。
「この辺りのはずだ。勇者の痕跡があるがこの辺で途切れているな…。」
次の瞬間上から岩が落ちてきた。
ルビーは岩をかわし、落とし主に対峙した。
「急に攻撃するなんて失礼じゃないかしら。私はただの商人よ。」
「すでに女神様から聞いている。お前が魔王だな。」
(私がこのエリアの魔王だと知っている?このことを知っているのはライルが戻ってきた時皇帝の泉にいた魔王のみ。 魔王の中にスパイが?)
「あら、神はお元気?私のことなんか言ってたかしら?」
「世界を荒らす悪い奴だから成敗しろと。」
「私はまだ何もしてないわよ。」
「嘘をつけこの悪魔め。バードストライク!」
転生者は剣を振り斬撃が飛んだ。
(そこそこね。今の私なら勝てる相手だわ。でも他に力を隠してるかもしれないし、仲間がいないとも限らない。クラーナーが来るのを待って確実に倒しましょう。)
「今のが本気?あなたちっとも強くないわね。もっと私を楽しませてごらんなさい。」
「貴様!言わせておけば!」
ルビーは魔王の中では戦闘力は劣るものの戦略的かつ冷静な判断を下さるからライルに抜擢されたのだった。
「ファイア」
「中級魔法でこの威力か。さすが魔王だな。」
「私の軍門に下りなさい。私は必要以上に人を苦しめたりはしないわ。」
「信じれるか!」
転生者は魔王に斬りかかった。
「あなたまだこの世界に来たばかりでしょ。(私もだけど。)私が人間を苦しめてる証拠でもあるの?」
「女神様がそう仰った。それにお前は魔王だ!くらえレクイエムサンダー」
「愚かな考えね。もし神があなたの信じる神が悪だったら?」
「悪魔らしい作戦だな。俺を騙して後ろから切るつもりだろう。そうわいくか!」
「ここまで疑い深いなら少しは神も疑って欲しかったわ。」
「いいわ。決着をつけましょう。クラーナー!生け取りして。」
「おう!!待たせたな!行くぜー!アルティメットパンチーー!!」
転生者はかなりの距離を吹っ飛ばされた。
「生きてるかしら?」
「それにしても、さすがの実力ね。あの神に一撃食らわせただけあるわ。」
「……生きてるわよね?」