本編4
「ココとココに判子押して…そうこれで終わり」
あの後、日下部さんが呼んでくれた他の代行者の人が来て諸々の事後処理をしてくれた。今は本部に戻って蛇池さんに渡された書類を片付けている。
「面倒臭いよねこれ」
書いていたのは器物破損報告書、私がこの建物を残穢との戦いで壊しました。とかいうものこれが受理されることで建物の持ち主の保険がおりるとか云々らしい。
「蛇池さん…俺今日のパトロールで不思議な体験をしたんです。」
「うん」
「自分の背中から黒い手を見たいなものが出て…アレがちゃんと使えたらもっと被害は少なくて済んだのに」
「それはね、希望と呼ばれるものだよ」
「アーク…」
「君達が人から残穢になる時、負の感情に押しつぶされながら願ったはずだ。こうすれば良かったのに!それが残穢となった君達に与えられた、という訳だ」
「じゃあ…今日中華街で出会った猫みたいな残穢も今まで出てきた残穢達もアークによるものなんですか?」
「そうだね、人を辞めてまで何を願ったか知らないけれど」
じゃあ残穢そのものになってしまうのと俺達みたいに人型みたいになる違いというか線引きは何処にあるんだ?
「最後にいいですか?」
「なにかな?」
「俺やエミリア、日下部さんが残穢そのものになる可能性はあるんですか?」
「それは私には分からない」
「あ、陽君の仕事はもう終わりだから」
そう言われてメモ用紙と鍵を渡される、内容は何処かの住所だ。
「これは?」
「君、家ないだろうだからここに寝泊まりしてね」
「わ、分かりました」
「それじゃお疲れ様」
「お疲れ様です」
そう言って書いてある住所に向かう、一体どんな部屋なのか少しワクワクする。
「あ、あの陽さん帰ったんですか?」
「亜衣ちゃんお疲れ様、陽君とは入れ違いになっちゃったね」
「エミリアさんは特に大きな怪我は無かったみたいです」
「それは良かった、付き添いご苦労さま」
「あ、そうそう亜衣ちゃん達に言うことあるんだ」
「は、はい?」
「君達2人が住んでる家、まだ部屋に空きあるよね陽君も入るから」
「………」
「元々シェアハウス用で作られて6人まで住めるタイプだったんだけどようやく半分埋まったね」