序章3
声をした方を向くと1人の女性が立っていた、家族が殺され自分も殺そうとしてきた残穢から守ってくれた人。
「貴方は…蛇池さんですよね」
「うん?私の事知ってるのかな」
「子供の時助けてもらったんです」
「悪いが記憶力に自信がなくてね、君が言うならそうなんだろう」
「蛇池さん、顔覚えるの苦手なのに残穢に関してはめちゃくちゃ記憶力いいの不思議ですよね」
もう1つ声がするほうを向くとソファに男性が1人座っている。自分が今いる場所は病院で治療を受けている状態全身火傷を負っていた筈なのに綺麗に治っていた。どうしてこの2人が俺の部屋に居るのだろうか?
「さて、本題に入ろう君の住んでいた孤児院が全焼生き残りは君だけだ」
淡々と語る蛇池さん…この流れはもしかして自分が犯人だと疑われている可能性が高い。
「違うんです!俺は何もやってないんです!体から炎を出す奴がいてソイツが!陽香まで奪ったんです」
「じゃあソイツが孤児院に火をつけたと…犯人が君だけを残して?」
「それもよく分からなくて…」
アイツは陽香を抱えながらあの人は…とか言っていたそれが何するかは分からない。
「もし、君が犯人じゃなかったとしても普通の生活は送れないよ」
蛇池さんは笑いながらそう言った。
「孤児院の火事でこの病人搬送された時は、全身の激しい火傷を負っていたにも関わらず、今はピンピンしている」
「残穢になると知性を失い、人間離れした体格と力を得る事がほとんどだ。しかし偶に奇跡的な確率で知性はそのまま、力だけを得る人間がいる」
「君は人ですら無くなったね」
俺は…自分は…人間ですら無くなり遂に1番嫌っていた残穢そのものに成り果ててしまった。
「君には2つの選択肢がある」
「2つ?」
「1つ目、代行者になり残穢を滅してもらう
2つ目、国の実験材料として人権を失う、君みたいな存在は余り存在しなくて希少価値が高いんだそのどちらかなんだがどっちがいい?」
決まってる、俺は元々代行者を目指していたんだ。こんな形で願いが叶うなんて最悪だがやってやる。陽香を…みんなを奪ったアイツを殺す。
「代行者になります…」
「両方嫌だと言われると思っていたよ」
「もし嫌だと言っていたら?」
「病室から霊安室に移ってもらうことになる」
笑えないジョークだ。
「蛇池さん」
「なにかな?」
「孤児院を襲ったのは残穢ですか?」
「そうだね」
「大事な人が攫われたんです…ソイツを救うため、殺された子供達を弔うため俺は頑張ります」
「明日この病院に迎えをよこすから気張りたまえ」
そう言って2人は病室から出ていった。
これが佐原陽のプロローグ、随分と長い過去話になったと思う。この事件がキッカケで「代行者」になったのだから。