序章
人生にはターニングポイントがあるんだそうだ、人によって回数も違うし中身も違う。もし他人に貴方はどんな出会い、ターニングポイントがあったの聞かれたらこう答えるだろう。そう、あれは
暑さも厳しい8月、夏休みであることをいい事に11歳の俺は宿題をせずに毎日友達と遊んでいた。
昨日も深夜までゲームをしてしまい起きたら昼の11時、半分寝ぼけながらリビングへ
「陽もうお昼よ、それよりアンタ宿題はちゃんとやってる?」
「あ〜うん、ぼちぼち」
やってないほとんどやってない、そろそろ手をつけないとなぁと考えてはいるが遊ぶことの方が忙しい。
「陽、遊ぶのはいいかやるべき事はやりなさい」
「父さん…何でいるんだ?」
「今日は日曜日だ、遊びすぎて曜日感覚無くなってるだろ」
TVをつけて3人でそうめんを食べる、遊びに行きたいから黙ってお腹いっぱいになるまで。
「ごちそうさま!」
「もういいの?」
「うん、遊びに行ってくる」
「怪我だけはしないようにね」
使った食器をさげるため、台所へ
「あ、」
皿の上に乗せていた箸を落としてしまった。
「しっかりしなさい」
「はいはい」
箸を取るために屈んだ瞬間、チャイムが鳴る。
「お届け物です」
「俺が出るよ」
父さんが席を立って玄関へ向かう。
「あ、お父さん判子忘れてる」
母さんが父さんの後を追いかける。夫婦で何やってんだがと思いながら食器を流し場に置いて自室に戻ろうとした時、リビングに男が入ってきた。
「え、」
誰ですか…と言い切る前に男の両手に持っていたのは父さんと母さんだったもの。
2つとも首が曲がっちゃ行けない方向に曲がりねじれている。
「ママ」
男がそう言いながら母さんを席に座らせる。
「パパ」
母さんと同じように席に座らせる。2人を座らせたがそのまま机に突っ伏してしまう。
その様子を見ながらけたたましく笑う。
「なんなんだよ…」
こっちの事なんて気にせず顎が外れんばかりに。
「アー……」
そう言いながら男がこっちを見てきた。口を限界まで開け、目を見開いて。
そして体が震え始めると口から真っ黒な手が出てきた。
そのまま手が伸びてきて自分の体に触れようとした瞬間、チャイムが鳴る。
「すいません、佐原さんのお宅ですか」
延びてきた手が止まり時が止まった感覚に陥る。本当は助けて!と叫びたかったが声を出した瞬間、あの化け物みたいなのに殺される、その思って何も出来なった。
「反応が大きいのが1つ、小さいのが1つ…お邪魔します」
そう言いながら入ってきたのは黒い服を着た1人の女性
「とりあえず君を処理してから名前の確認をするよ」
男に拳銃を突きつけながらそう言う。
「あ、あの貴方は誰ですか」
震えながら声を搾ってその女性に聞いた。
「私?私は代行者だ」
そう言って引き金を引いた。
「君、もう大丈夫だ」
拳銃を撃った女性が自分に話しかけてくる。色々聞きたいことがあるのに脳の処理が追いつかない。
「そういえば私の名前を聞きたがっていたね、私は蛇池百合だ」
「蛇池さん!1人で先行しないでください!」
蛇池さんと同じ格好をした男性3人がリビングに入ってくる。
「敵が1人かどうか分からないんですよ!」
「まぁ、何とかなったし良いじゃないそれよりも事後処理をしよう」
「あ、あの蛇池さん!お母さんとお父さんは…」
「子供が生きていたんですか…下手したら「成る」かもしれませんよ」
「それは大丈夫だ。私が何とかするから君達は加害者の処理を」
「首が捻れた人間が起きてくるのを私は見た事ないな」
ハッキリと淡々とお前の親は死んだという事実を突きつけられる。
「じゃ…あの男はなんですか!どうなってるんですか!」
「私達はこう呼んでいる…残穢、生きる希望が全て無くなった人の成れ果て」
「これからどうやって生きればいいんですか…」
日常を奪われ仇を取る相手もいないこの先どうやって生きていくのか分からない。
恨めしい…死んだアイツがなんで自分の家に?なんで自分を殺さなかった?憎悪と疑問が体の中を渦巻いていく
「蛇池さん!その子を処理しないと本当に成りますよ!」
「大丈夫」
「佐藤君、私の目を見て」
そう言いながら蛇池さんは自分の手を握り目を見つめ額をくっ付けてきた。
「今はこうすることしか出来ない私を許しておくれ」
体全体が包まれるような安心感にさっきまで抱いていた感情が消えていく。
「おやすみ」
その言葉を最後に意識を失った。