第3話 転校生
あまりの衝撃に教室で初めて大声を出した俺は、初めてクラスの注目の的になった。
こういう悪目立ちだけはしたくなかったのだが。
とりあえず、担任の先生に着席するように言われた俺は、頭をかきながらサッと着席した。
顔が熱い。恥ずかしいな。これ。
「さて、佐々木さん。自己紹介をしてもらえるかしら」
「はじめまして!零明女学院から来ました!佐々木実乃梨ですっ!よろしくお願いします!」
沈黙していた教室はまたもや歓喜で響き渡った。美人な上に明るく、いかにも優しそうな雰囲気のある少女だった。以前の高校でも、人気者であったのだろう。
佐々木さんの自己紹介も終わり、諸連絡に移ろうとしたとき、俺はとんでもない事に気づいた。
俺の席の隣。誰もいなくね?
俺の予感は的中。佐々木さんは俺の隣に座ることになった。なんだかクラスの男子の目線が厳しい。うぅ。
とくに話しかける必要も無いと思ったので、俺は再び机にうつ伏せになろうとしたその時、
「ねぇねぇ」
ん…。 なんとこんな住む世界が違うかのような美少女が俺の方に顔を近づけて話しかけてきた。
あぁ…やばい。すごくいい匂いがする。陰キャキモオタにはこんな攻撃に耐性なんてついているわけがないじゃないか。
顔が赤くなっていないかと焦りまくった。
「ど、どうしたんだ?」
「せっかく隣になったんだしさ、仲良くしてもらおうと思って。 君の名前を教えてくれるかな?」
俺は頷き、「山崎歩。どうぞよろしく」とだけ答えた。
こんな無愛想な回答にも彼女は太陽のような明るい笑顔で、感謝を伝え何事も無かったかのように、諸連絡を受ける。
朝のSHRが終わり、休み時間に入った。その途端、隣の席では有名人の記者会見のように人が集まっていた。近所迷惑だ。騒がしい。
「おまえ、2次元に近い美少女が転校してきたからって、あんなリアクションはないだろ。さすがの俺も引いたぞ」
みんな佐々木さんに気を取られている中、俺のおともだちはわざわざ傷に塩を塗りにきた。
「違うんだよ」
「何が」
「確かに佐々木さんは可愛い。だけど驚いたのはそこじゃないんだ」
そう。今日、家で紗知と見たアルバムの中にあった写真の女の子にそっくりだったのだ。