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49話 危険すぎるよ、美夜さん。

auさん圏外だと!?




「馬鹿なことしてないで、早く戻れっての!」

「あぁ、はいはい。分かってるよ、山名なら絶対見ないよね。だから言ってみただけ。念のため、タオルも巻いてたしね。そういうのはもっといい関係になってからね。

 そういうところ、好きだけど。だってたぶん、他の男子ならみんな見てる。私、結構モテるんだよねぇ」


開いた口が塞がらなくなるような、大物発言だった。


普通なら、尊大だとか自信過剰だとか悪い印象を抱くかもしれないが、彼女に限ってはそうはならない。


美夜はただ、自分の価値を分かっているだけだ。分かったうえで、どういうわけか俺なんかに、こうして餌をぶら下げているのだ。

もし仮に、ここにいるのが俺じゃなく違う男なら、迷わず飛びついているだろうことも容易に想像できる。


「そこにいてもらってるのはね、雰囲気作りのためだよ」


美夜の声が再びくぐもったものになる。

浴室に戻ったらしいことにほっとしてから、罠かもしれないと一応振り返らずに、どういうこと、と聞き返す。


「見せつけてくる山名が悪いの」

「俺のせい……? 身に覚えがなさすぎる。冤罪だ」

「有罪だよ? 玄関前であんな夫婦みたいな真似するんだから。

これくらいやってようやく、日野さんより彼女っぽくなれるかなと思ったの。少なくとも、生配信の間はずっと私が彼女なんだし、さ。負けてられないじゃん」


それだけ言うと、浴室からはまたシャワー音が聞こえだす。


美夜は俺に、返事をする暇を与えたくなかったらしい。

なんて勝手な宣言だろうか。争うならば、別でやっていただきたい。


俺はため息をつくが、自室で見た寂し気な表情を思い返して、なんだかんだとその場にとどまり、座禅を組み続ける。


再び浴室内から声がかかったのは、10分程度あとのことだった。


「ね、クローゼットの中に着替え置いてあるから、取ってくれない?」

「……はいはい」

「あ、ちなみにブラジャーはひも付きの奴で、下は――――」

「な……、そういうのは自分でやれっての。俺はもう出るから。いいだろ?」


「ちぇー。まぁでもありがと。こんなアホらしいお願い聞いてくれて。おかげで、退屈しなかった。お礼に、ブラとパンツ見せてあげよっか?」

「いらねぇっつの!」


まったく、ろくなお願いをしやがらない。


すりガラス一枚の先、表情なんてまったく見えないが、それでも分かる。

今の美夜は、いたずらを仕掛けるときの子供みたく無邪気な顔をしているのだ。



さすがに着替えの際に、ここに残っているわけにはいかない。

俺が坐禅を解いて、立ちあがろうとしたときだ。

浴室の中で、ツルッと嫌な音がした。さらにはガタッと扉にぶつかる音がして、


「やっ……! 滑っ……!?」


美夜があげた短い悲鳴に、俺はついに振り返ってしまう。

しかし、「大丈夫か」と投げかけるまでもなかった。スライド式の扉が開き、奥から思った以上の勢いで、彼女が崩れ落ちてくる。


そのとき、はらりと一瞬。

ほんの一瞬だけだ。


とはいえたしかに、彼女が巻いたバスタオルがはだけたところを目撃して、視界はわずかな時間、肌色に覆われた。


一瞬、放心状態になるが、すぐに目を瞑る。その状態でもしっかりと美夜を受け止められたのは、男の意地といったところか。


だが、それはそれでまずい。目を瞑っているから、どんな体勢かは分からない。とはいえ、手のひらに吸い付くみたいな、このえもいわれぬ柔らかな丘はーー


「ご、ごめん……! ありがとう…………って、へ……?」


美夜はそこでやっと、事態を知ったらしい。

じたばたと暴れ、俺の腕の中から抜け出したのち、美夜は慌てて風呂場へと戻っていく。

扉に背中で寄りかかって、細くか弱い声。



「ご、ごめん…………」

「いや、俺はいいけど。いや、見てない、見てないんだ、ほんとに。それに、なにに触れたかも分かってないから、俺は!」


眼福……というほど見てないし、あの柔らかい感触もどこを触ったかなんて分からない。

この跳ねすぎてうるさい心臓も気のせいだ。

少なくとも、今はそういうことにしておきたかった。


こんな、安易なラッキーパンチは求めていない。

だって、ラブコメ漫画と違って、ここは現実だ。コメディだからでは済まされない。

都合よくシーン転換もしてくれないので、ここからどうすればいいかさえ分からない。


俺たちは扉を挟んで二人、無言で立ち尽くす。


「あーえっと、先に部屋あがってるよ俺」


やっと絞り出したのは、一時的な回避策であった。でも、これが今の最善策だ。


「……う、うん。ごめん、ほんと」


やらかしたことへの気落ちと、恥ずかしさが入り混じっているらしかった。

扉を通して聞けば、まるで蚊の鳴くような、小さい声であった。


危険すぎる、細川美夜……!




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