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45話 幼馴染ちゃんは神出鬼没。


そして俺は、再びやらかした。


朝が来て太陽が昇ったら、すぐにでも美夜を家に送り届ける。

そして何事もなかったかのように、姉を家へ迎え入れて平和な土曜日を過ごす。


そのつもりだったのだけど、目を覚まし慌ててカーテンを捲ると、そこには1番高いところまで昇った太陽があった。


結局クッションの上で寝たせい、痛む腰を抑えながら立ち上がる。


「…………山名ぁ、そこはもっと後〜」


ひと目、俺の枕に顔の半分を沈める美夜へと視線を送った。


相変わらずの派手な寝相で、訳のわからない寝言をこぼしている。


「んー……だめ、や、そんな無理やり…………」


おい、美夜の夢の中の俺はなにをしてるんだよ!


考えても悶々とするだけなので、それ以上は考えないでおく。


それより今は非常事態なのだ。やるべきは、状況把握だろう。


俺は部屋を飛び出ると、一階へと段飛ばしで向かう。



まず覗いたのは、玄関に置かれた靴だ。


美夜が穿いてきたライトブルーのスニーカーの横、見つけたのはストラップのついた赤い厚底ハイヒール。


それは昨日の夜まで、なかったものだ。


「……あの酔いどれJDめ。帰ってきてやがる、だと?」


焦りが一挙に増幅し、手先も震え出すが、えぇい! と俺は首を横に振った。


まだ、希望はぜんぜん潰えていない。

だって姉はたぶん泥酔して潰れる一歩手前で帰ってきているはずだ。


美夜の靴にも、もちろん美夜が俺の部屋で寝ていることにも気づいていない可能性が高い。

いいや、きっとそうだ、うん。


そうじゃなきゃ色々と困る。しばらく、あらぬ疑いで弄られること間違いなし!



俺はリビングへと駆け込む。


姉・山名遥は、そこにいなかった。

昼下がりのリビングは温かな日の光を浴びるだけで、無人だ。


けれど、そこに料理皿がたくさん並んでいるのはおかしい。

昨日は何もなかったからカップ麺に手を伸ばしたのだ。


「あ、起きたの。おはよう、ひなくん」


聞き慣れた、抑揚のない声を聞いて俺は背筋がひやりとする。


ちょっと車のスピード出しすぎてたわ〜、次気をつけるわ〜では済まないヒヤリハット。


綺麗に丸い羽根付きぎょうざを手に、キッチンから歩いてきたのは梨々子だ。

彼女用の起毛スリッパを、すたすた鳴らす。


「いつから来てたんだよ、梨々子」

「昼前。遥姉にお土産と、あとご飯作ろうかなって。よく寝てたね、こんな時間まで」

「あぁ、ちょっと夜遅かったから」

「今日が休みでよかったね。平日だったら叩き起こしてたところ」


……あれ、美夜がいることには気づいていない? 


ということは、黙ってやり過ごすという手もあるんじゃーーーー



ダークサイドに落ちかけて、俺は踏みとどまる。


いや、正直にいうべきだ、間違いなく。


…………それに、梨々子に限って美夜の靴があることを見逃すわけがないのだ。俺の家にある靴くらい、彼女はすべて把握していておかしくない。


「そうしてくれたらよかったのに。細川さんが起きないんだよ」

「なんだ。あっさり言うんだ、つまんない」


やっぱり知っていたらしい。

遊んだのか試したのか、そこは分からなかった。


ただいずれにしても、さすがに悪女を自認するだけのことはある。


「部屋、覗いたのか?」

「まぁね。あのお邪魔虫、すごい寝相でびっくりした。あ、そうだ。帰ったらすぐに洗濯してあげる。匂い取らなきゃ」


「…………もっと怒るかと思ったけど」

「どうせ動画の編集中に寝落ちでもしたんでしょ、二人とも死んだみたいに寝てたから」


ずばずば的中させてくるあたりが、梨々子らしい。


彼女はそれくらい、俺のことをよく知っている。

それに気づけたあたり、逆もまた然りというわけだ。


「ご名答だ。時間が遅すぎて、家に帰せなかったから泊めた。昨日歩きすぎて、疲れてたんだよ」

「そういうことなら、うちで預かったのに」

「……いや、絶対行きたがらないだろうよ。昨日の件もあるし。それにもう、夜中だったから」

「そう、分かった。……それだけ?」

「おう、それだけだ」


本当は少しだけ違うけれど。


昨日二人でカップ麺を食べて話したこと、あの時間のことだけは言えないけれど。


梨々子は何か知ってるふうだが、これは可愛いカマかけだろう。


いくら隣の家とはいえ、あの時間だ。

まさか聞かれてはいないだろう。


俺はきっぱりと答えて、目を瞑った。片目を開ければ、梨々子が頷いている。


「じゃあ髪、直してきて」

「……やっぱり爆発してる? いや、予感はあるんだ。この感じは暴れん坊だって」

「うん、かなり激しい。頭洗った方がいいかも。セット、やってあげようか」

「そんなことくらいできるっての」


本当の母親より、ずっと母親みたいだ、我が幼馴染は。

そう思いながらも素直に聞いてしまうあたり、俺も子供っぽいのかもしれない。

あくびをしながらも洗面所へ向かうため、廊下へ出ようとしたときだ。


「おはよー、起きたらいないからびっくりしたよ。なにしてるの? 遥さんとごはん?」


目を擦りながら、彼女は現れてしまった。

今にもう一度寝そうな顔で、回りきらない舌で言う少女は、細川美夜だ。


サイズが少し合わなかったのか、寝巻きのズボンは少し床に擦っていた。少しふらふらと身体を左右に揺すっている。


「えっと、……その大丈夫か? なんか不安定に見えるけど」

「朝は弱いの。ほんと、まじで弱いの。低血圧で」

「それはなんていうか……ご飯のせいだろうな、たぶん」


寝起きの美夜は、新鮮だった。

大人だとか、余裕があるとか、いつもそんなふうに評価されている彼女を思うと、まるで別人みたいに幼い。


が、その無垢な瞳が、獲物を見つけた猫みたく一気に大きく見開かれた。

やっと梨々子の存在に気付いたらしい。


「な、なんで、日野さんここに……?」


敵発見、みたいな。それくらい、一気に纏う空気が変わっていく。




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― 新着の感想 ―
[一言] >匂い取らなきゃ これ無茶苦茶怒っているように見えるが…。
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