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2話 秘密のビジネスカップル



「私の方は準備できてるから、山名の方が終わったら言ってね~」


自他ともに認める陰キャの俺が、なぜ美夜のような、女子からは羨望を集め男子からは問答無用で好意を向けられる、キラキラした美人の家に上がっているのか。


そこには、とある一つの理由があった。


空き部屋を借りて、俺はジャージにパーカースタイルのダル着に着替えを済ませる。それから、取り出すのは折り畳み式の手鏡だ。

ラメがこれでもかと散りばめられた見た目どおり、女性向けだが、俺にとっては手放せないアイテムの一つだ。


しめて10分ほど、ワックスで入念に髪型を整え、服の皺を伸ばして、軽く化粧までしてから、美夜が待つ部屋へと戻る。


その空間は、基本的には白とピンクで統一されていた。

人様にお見せする場所以外は、結構雑多に物が置かれており、ごちゃついているあたりも含めて、彼女らしさの現れた部屋だ。


「あは、やっぱり何回見ても豹変しすぎ。同じ人だと思えない。山名、実は誰かと入れ替わってる? 入れ替わりごっこしてるでしょ」


その中心にあるテーブルの前、三角座りをした美夜が、その大きな目を見開いて俺をまじまじと捉えてくる。


ここだけ切り取ると、本気で驚いた人の新鮮な反応に思えるが……むしろその逆だ。


「入れ替わってない。俺は俺だよ。二重人格でもないって。……そろそろ飽きないのか、このくだり。毎回じゃん」

「飽きないからやってんの。冴えない地味で無口な男の子が、誰もが振り向くイケメンに大変身! なんて、普通あることじゃないし」

「……悪かったな、普段が冴えなくて。もういいだろ、始めてくれよ」

「あは、もう少しいじりたかったんだけどなぁ。まあ仕方ない、じゃあ録画はじめるよー」


美夜は座布団の上で膝立ちになり、三脚に据え置いたビデオカメラに触れる。画角を調整したのち、スタートボタンを押した。


「はい、本日も始まりました! 日夜カップルチャンネル~! お月様担当・みやです」

「太陽担当、ひなたです。今日もよろしくお願いします!」



集まる理由というのは、これ、動画撮影だ。


俺・山名日向は、圧倒的に美人なクラスメイト、細川美夜と『日夜カップルチャンネル』なるコンビ名で、動画投稿者をしているのだ。


ちなみにカップルとは言っているが、それはあくまで動画内での話にすぎない。

二人で動画投稿を始めるにあたり、カップル設定の方が売れるだろう、という打算的な理由で、話し合いの結果、本物ということで通している。


「ひーなた! 今日の企画はなにやるの?」

「おい、みや。あんまりもたれかからないでくれよー。おも……」

「はい、そこまで! それ以上言ったら、優しくて温厚なさすがのみやちゃんも手が出ます」

「あぶねぇ……。あと一文字、本当にぎりぎりじゃん。というか、優しくて温厚なら、もうすこしは我慢しろっつの」


これも、あくまで動画上のやりとりだ。


美夜が俺の肩に手を置き、その上にあごを乗せて、にゃーとか言って甘えてくるのも、あくまでそう言う演出である。


こうすることで、

『二人の絆をずっとみてたい~』

『美男美女のベストカップル! 応援します!』

などという、投稿者としては「待ってました」のコメントを得られるうえ、動画の本題に関わらず高評価もつきやすい!



こんな風に動画を撮り出すことになったきっかけは、実に単純だ。


高校一年生の秋ごろ、もともと動画投稿を始めようと思っていた俺が、その旨をSNS上でつぶやいたところ、なぜか俺をフォローしていなかったはずの美夜から突然にDMが来たのだ。


聞けば、彼女も将来的な稼ぎ口を得るため、動画投稿をしたいと思っていたが、きっかけがなかったらしい。


そんな思惑が一致し、二人ですり合わせを重ねた結果はじめたのが、『日夜カップルチャンネル』だった。

二年生に進級した今も、その投稿は続いている。





【恐れ入りますが、下記をお願いします】


・面白かった、楽しかった


・続きが気になる




などと少しでも思ってくださった方は、画面下部の☆☆☆☆☆を★★★★★にして応援して下さると嬉しいです。


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― 新着の感想 ―
[一言] 冴えない地味で無口な男の子が、誰もが振り向くイケメンに大変身! なんてのは主人公の特権だよ。
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