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10話 美夜さんは、俺の昼休みが欲しいらしい。


『派手にやってくれたな、ほんと』

『まだまだ地味な方だと思うけどね。これまでだって、山名が変なふうに言われるたびに、私結構我慢してたからね? ちょっとそれが小爆発した感じ。コスモだよ。今日のは、ほんとにイラっとしたの』


あれで小爆発だとしたら、一生、大爆発はしないでいただきたい。


たぶんクラスの雰囲気が、取り返しのつかないことになる。みんなの青春に影を落とすことになりかねない。


彼女は自分という存在の与える影響力を分かっていないらしい。


『そんなことより、お昼休みの話していい?』


……そんなこと、とか言っちゃったよ、この人!


結構大きな出来事だったと思うのだが、彼女にはもう過ぎたことらしい。


『お昼休み、廊下に集合して、どっかで二人でご飯食べよ。教室でもいいけど、とにかくランチは一緒に取ろう。取っちゃお』


しかも次なる、普通では考えられない発言が飛び出してきたではないか。


取っちゃお、って。またしても軽すぎるし。


色々と物申したいことがありすぎた。まとまり切らない思考をしかし、俺はそのまま書き連ねることとしてしまう。


これだけ好き放題やってくれたのだから、こちらも言いたいことを言うくらいは許されるべきだ。


『その恋人の練習とやら、昼休みもやるのか? そんなことしてたら、ずっと仕事してるようなもんだし、いつまでも気が休まらないだろ?』


『私のこと心配してくれてるの? 嬉しいけど、まぁまぁ的外れ〜。好きな動物聞かれて、豚バラって答えるくらい的外れ。私はむしろ、たくさん恋人の練習したいくらいなの。

じゃ、決まりでいい?』


『いや、決めるにはまだ早いな。俺だって昼休みくらい休憩したいし』

『む、その言い草。私といたら休憩できない? 気が休まらない?』

『……そういうわけじゃないけど。細川さんが来たら、色んな人がついてくるだろ、もれなく。ハッピーセットのおもちゃ並に不可分だろ。それは疲れる』


俺はカーテンの裏側、必死でスマホを操作して、己の意見を訴える。


結構いい線をついた主張だったはずなのけど、美夜の方が折れてくれなかった。

そりゃあもう、超頑固だった。


『ちゃんと撒くよ、そこは。私、意外と足早いの知ってるでしょ。陸上部も目じゃないスピード見せるよ、馬の女の子より早く走るよ。ずきゅんと走るよ。

だから、山名のお昼休みもらっていい?』


あぁ言えば、こう切り返してくる。


俺はムキになって、なんとかさらなる理由を探そうとするが……


そこで『聖域』が破壊された。


カーテンが捲られ、一気に視界が開ける。それとともに、スマホをいじる俺の姿があらわになった。


それを見て吹き出したのは、たぶんというか間違いなく、美夜だ。


それ以外の人が、俺のような根暗野郎がスマホをいじってたくらいの小さなハプニングで、笑ってくれるわけもない。

彼女が笑いを堪える声が響く中、先生が俺の頭上、教科書を振り上げた状態で言う。



「授業を聞いていたなら、見逃してやろう。ここの『まく』はどういう意味の単語だ?」

「…………えぇっと、人を撒く?」

「不正解だ。『まく』は『負く』と書いて、負けるという意味だ。スマホは没収だ。あとで職員室に取りにこい」


……よもやの早期終戦、そして、ぐうの音も出ない敗北の仕方であった。



かくして俺の昼休みは、美夜に貰われることとなった。


次回、美夜ちゃんに貰われたお昼休み! 朝一たぶんで更新頑張ります〜!


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