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可愛そう?なセレスティーナ

 片手にはジョッキを、片手にはおつまみを、話題に出るのはその日の冒険譚。

 仲間との労をお互いに労い、そしてまた明日も頑張ろうと奮起する。

 一攫千金すらも夢ではない事実に胸を躍らせて、明日も冒険をする。

 そんな冒険者達の憩いの場ともいえる場所こそが、ギルドの二階にある酒場だろう。

 そして……その酒場に足を踏み入れた俺は……吐きそうになっていた。


「うっ……胸やけが」

「大丈夫ですか?」


 まさか、二階の酒場がここまで……ここまで……。


「むさ苦しい場所だったとは……」

「どんだけ男嫌いなんですか?」

「うるさい、それよりも俺に水をくれ」

「はぁ、ならちょっと待っててください、店員の人に貰ってきます」


 おいしそうな料理の香りに混じって、というかもはやほとんどその匂いしかしないのだが……とにかく酒の匂がすごい……。

 アルコール臭とでも言おうか。

 臭いのだ、とにかく臭い。

 何かが違う、俺の思い描いていた冒険者ギルドの酒場とは何か違う。

 とにかく俺ががっかりしていると……。


「一体どういうことなのよ!」


 どこからともなく女性の怒鳴り声が聞こえてくる。

 そちらの方に目を向けると……。


「あれは……セレスティーナか」


 先ほど二階に行っていたセレスティーナが、四人ほどのパーティーメンバーと何かを話している様だった。

 会話の内容が気になった俺は、グリムが水を持ってくる前に、セレスティーナ達の傍による。


「ダンジョン探索の分け前が私だけないって! 一体どういうことなのよ! 不公平よ! 不公平!」


 セレスティーナがそういって、先ほどよりも大きな声で目の前の四人に怒鳴りつける。

 その四人の中で長髪で緑髪の男がセレスティーナを、何言ってんだこいつとでも言いたげな目で見つめて、腰を据えて話し出す。


「なぁ、セレスティーナ、お前は荷物を持っただけだ」

 そういった男は続けて話す。


「冒険者としての経験をまったくもたないお前が、少しでも上の階級に行くための経験を積みたいというから荷物持ちで一緒に連れて行ったんだよ」


 男は淡々と言った。


「冒険者として役立たずのお前のいいところは力が少し強いというくらいだ。そして……そんな使えないお前を俺達が活用してやったんだ。お前は荷物持ちではあるが、この街で一番の冒険者パーティーである俺達と一緒にダンジョン探索での冒険の経験を積んだ。感謝こそされど、分け前をよこせと怒鳴られるいわれはない、分かったならどっかに行きな」


 緑髪の男はそういって、シッシと手を振ってセレスティーナを追い払う。


「なんですって⁉ いいから分け前よこしなさいよ!」

「あぁもう! やかましい奴だな! おいこら! やめろ! 俺に縋り付くな! どっかいけや! この役立たずエルフが!」

「やー! 分け前を私にくれるまで離れるもんですか!」


 セレスティーナが緑髪の男にすがりつく姿を見て、緑髪の男の仲間がなんだこいつという目で見て……そして俺も若干だが引いていた。

 こいつ、とんでもなく金にがめつい奴だったんだな。

 涙目で分け前よこせと怒鳴り散らすセレスティーナ、そんなセレスティーナを見て俺にとある考えが浮かんだ。


「カイト様~、カイト様~」


 グリムの声がしてそちらを見やると、コップを二杯分手に持って俺を探しているようだ。


「グリム~、こっちこっち」


 グリムを俺のいる方に呼ぶと、俺を見たグリムが首をかしげてこちらの方へとやってくる。


「どうしたんですか?」

「あれだよ」


 グリムが不思議そうに聞いてくるので、俺はセレスティーナの方を指さす。


「な、何ですかあれ? ん? あの方って私達を冒険者ギルドに案内してくれたセレスティーナさんですよね?」

「そうだよ、まぁ見ての通りの状況だよ」

「いえ、状況を見ても何のことだかさっぱりですけど……」

「カクカクシカジカでな」

「なんですかそれ? カクカクシカジカって言えば伝わるとでも思いましたか?」

「あれ? こういうのって伝わるもんだろ?」

「伝わりませんよ」

「まぁ立ち話してても仕方ないし、この席に座っちゃおうぜ」


 セレスティーナの奇行が見える席に俺とグリムが座って、ついでにグリムにセレスティーナがなんであのパーティーに絡んでいるかの状況説明をする。


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