エルフの名前はセレスティーナ!
「おーい、そのこエルフの人~」
俺はすぐそばを歩いていた、金髪で巨乳の美少女エルフに声を掛けた。
エルフは呼ばれたことに気づいたのか、俺達の方を向くと、不思議そうな顔をすると……。
「ん? なに? 私に何か用?」
分かる……、言葉が分かる。
「おいグリム、言葉が分かるぞ」
「ええ、その様ですね」
俺とグリムのやり取りに首をかしげる金髪エルフ。
「ねぇ、私暇じゃないんだけど、冷やかしならもう行くわよ」
「わああちょい待て!」
「何よ?」
うわお、初対面の人にここまで嫌そうな顔をできるものなのだろうか。
「えーと、俺の名前はカイト、こっちがグリム、俺達訳あってこの街に越して来たんだけど、まだよくわからなくてよ。とにかく仕事を斡旋とかしてる場所あったら教えてほしいなぁって」
「ふーんそうなの、ならこれから私冒険者ギルドの方に顔出すんだけど、一緒に来る? 案内するわよ」
このエルフ、実はいい奴?
「おお、まじか! 助かるぜ」
俺は金髪エルフの提案に笑顔で答えて、グリムにも確認を取るために顔を合わせるとコクコクと頭を縦に振っている。
「というか、あんた名前は?」
「あんたじゃないわ! 私にはセレスティーナって名前があるのよ」
「長いな、セレスって呼んでもいいか?」
「案内しないわよ?」
「セレスティーナ様! 万歳!」
金髪エルフことセレスティーナに冒険者ギルドに案内してもらうことになった。
「ここが冒険者ギルドよ」
セレスティーナに案内されて、たどり着いた冒険者ギルド……そこは。
「ボロボロだぁ」
そう、ボロボロなのだ。
出入り口の扉は穴だらけになっており、冒険者ギルドの看板はインクがかすれてほとんど読めない。
外観がこうだと中も……。
「ほら、何突っ立ってるの?」
セレスティーナがそういって、中に入っていくので一緒に入ると……。
「うわぁ」
悪い意味で予想の斜め上を行った。
二階から一階を見張らせるつくりになっている冒険者ギルドの内装は、外に負けず劣らずだった。
まず、床が抜けている個所が多く、応急的な修理しかされていないのか板とかで隠すように補強しているに過ぎない。
二階には酒場があるようで、昼でも冒険者の利用者が多いのか、上の方がかなり騒がしい。
「活気はあるんだな……ボロボロだけど」
「そうですね、ボロボロですけど……」
俺とグリムが冒険者ギルドの内装を見てそんな事を言っていると。
「あんた達、この街に来るのは初めてなのよね? なら冒険者登録とかは?」
「いや、まだだな」
「そう、ならあっちの受付のカウンターで登録の方をしてるからやってきちゃいなさいよ。私は用事があるから、もう行くね~バイバーイ」
セレスティーナはそういって、二階に上がって行ってしまう。
俺はセレスティーナに言われた通り、受付の方へと行って冒険者登録をしようと話をしたところ……。
「登録の方には500モネダの手数料がかかりますが、よろしいでしょうか?」
……。
500モネダ?
「なぁ、グリム」
「なんですか?」
「お前、お金とか持ってたり……」
「あの状況で連れてこられて、お金なんて持ってるいけるわけないですよね?」
「ですよね~」
そう、俺らは一文無しなのだ。
受付のお姉さんが俺らを交互に見てくるが……気まずい!
言えない! というか言いたくない! お金ないです。だなんて!
「あの……えーっと……出直します」
「あ……はい」
お姉さん! お姉さんちょっと笑ってた、笑うのを我慢してる風だった!
「お、おい……どうすんだよ」
「別に登録しなくてもいいじゃないですか?」
「嫌だ! 異世界に来たからには冒険者になって、たくさん冒険しながらいろんな種族の美少女とキャッキャうふふしたい!」
「なんですか? その意味不明な欲求は?」
「意味不明とか言うな! 畜生きっと何かいい案があるはずだ」
俺がそんな事を考えていると……二階の方で騒ぐ冒険者達の声が聞こえてくる。
「そうだ、上にいる冒険者からお金を借りて、後で返そう」
「……」
「なんだよグリム?」
「いえ、何でもありません……」
グリムが蔑むような呆れた様な目で見てくるが、そんなことはどうでもいい。
手段なんか選んでいられるか。
俺は何が何でも冒険者になるんだ。
そうと分かれば、全は急げだ。
俺とグリムは二階の酒場に向かう。