美少女と一緒の異世界転生は最高だ!
俺は、空を見る。
空には三つの太陽が浮かでいて、どこまでも広がる草原のその先には、街が見える。
それも遠目からでもわかる。
石造りのレンガで組まれた家、耳を澄ませばかすかに鐘の鳴る音も聞こえる、教会だろうか?
とにかく、目にするもの聞く音が現世とはまるで違う。
「おおお! すげぇ! 異世界に転生したんだよな!」
一人テンションの上がる俺、そんな俺とは対照的にグリムが空を涙目で見ながら……。
「アンヘル様あああ! お願いですから! 天界に返して下さい! 休暇なんていりません! 私には死神としての責務が!」
グリムが空に向かってそう叫ぶも、返答が帰ってくることは特になく。
そんなグリムの事を見ながら俺は、拳を握りながら言った。
「美人といっしょに異世界転生だ! やったぜ!」
そう、アンヘルは俺の要望に応えて、天界と現世の狭間で会った時のグリムの容姿をそのままに、冒険者風な服装を身にまとっていた。
俺の服装もグリムとほとんど同じでしいて違う点があるとすれば、グリムはミニスカートで俺はズボンということだろう。
ふと俺の視線が座るグリムのとある一点に集中する。
胸ではない、それは太もも……そうミニスカートなのだ、見えて当然。
絶対領域が最高だ、ありがとうアンヘル。
「どこを見てるんですか!」
「絶対領域を凝視してるんだ」
俺がさも当然のようにグリムにそう言うと、グリムは限界までスカートを伸ばして、膝をくっつけた。
頬を赤らめギッと俺の事を上目使いで睨んでくるグリムが、唇をプルプルと震わせながら話し出す。
「せ、正々堂々とセクハラをしないでください!」
「なら、今度からは隠れてセクハラをするな」
「誰かー! ここに変態がいます! 警察的な人いませんか! ここですよー!」
もはや、アンヘルに言っても無駄だと思い知ったグリムが、政治的な者達に助けを求めるが、この広々とした草原には俺ら以外に誰もいない。
「おいおい、冗談だよ。これからも真正面でセクハラをするから見逃してくれ」
「いえ、そもそもセクハラをやめてくれませんか?」
「無理だな」
「なら、突き出します」
「控えることを約束しようと思うよ」
「思うんじゃなくて、絶対に守ってください」
立ち上がったグリムが、ジト目で俺の事を見るので、俺は目を逸らしついでに話題も逸らすことにする。
「ところでしばらくはこの世界にグリムもいるんだろ? とりあえず、あの街に行って情報収集がてら、もしも冒険者ギルド的なものがあるなら、一緒に行って登録しようぜ」
せっかくの異世界だ、やっぱり冒険者として冒険もしたいし、クエストとか受けて美少女の窮地を救ったりしたい。
それにグリムは死神、神パワーで冒険の序盤はらくらくだろう。
俺がそんな事を考えていると、グリムが横から俺の顔を覗き込んでくる。
「話をそらさないで頂けますか? せめて私には手を出さないという条件は守ってくださいね、カイト様なら何かあった時にさも当然のように胸とか揉んできそうですから」
「まったく、俺がそんな事をする人間だと思うのか?」
「思いますよ」
即答かよ。
「っへ、見くびってもらっちゃ困るぜ、こう見えて俺はギャルゲーにも手を出してたんだ。最初にヒロインに最悪の印象を浮かべられていてもやがては俺とラブラブする事間違いなし、きっとグリムもそうなるさ」
「すみません、言っている意味がよくわからないですけど、気持ち悪い事だけは確かです」
しっかり敬語で毒舌を吐くグリム、しかしこれでいいのだ。
まさにこれはツンデレという言葉が生まれたときの美少女の反応そのもの、最初ツンツンやがてデレデレ。
うーん、ツンデレ……なんていい響きなんだ。
「また気持ち悪い事考えてますね」
「考えてないよ、それよりも街に行こうぜ、一緒にたくさん冒険しようぜ! グリム」
「はぁ……他に行く当てもなさそうですし、いいですよ。少しくらい付き合ってあげます」
グリムは、やれやれといいながら俺の後ろをついてくる。
「なんださっそくデレか?」
「デ、デレてません!」
こんな感じで俺のおふざけにグリムがいちいちツッコミを入れながら、街へと向かった。
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ではまた、次に会える時にバーイ!