映画って一体何ですか!?
家紋 武範様主催『夢幻企画』投稿作品です。
前話のあらすじ
戦闘の役に立たないという理由で、冒険者仲間からクビを言い渡された幻術師フォロウ。落ち込みながらの薬草採取の途中、謎の光と遭遇し、見慣れない女性を保護する。
女性は何者なのか? そしてフォロウの運命は?
それでは第二話『映画って一体何ですか!?』お楽しみください。
な、何とか家までたどり着いた……。
女の人とはいえ、人間一人担いで階段登るのは辛かった……。
何とかベッドに寝かせると、全身から汗が吹き出した。
「み、水……」
水瓶の水を飲むと、ようやく人心地ついた。
寝室にも一応水を持っていく。
「すぅ……。すぅ……」
見れば見るほど珍しい格好だ。硬そうな黒い服の下にやっぱり硬そうな白い服を着ている。
窮屈そうなスカートは膝が出るほど短い。布地が足りなかったのかな? 女の人の格好としてはあまり良くない気がするけど。
明るめの茶色の髪の毛は、長いけどちょっとぼさぼさしてる。髪をとかす余裕もないのかな。
僕と同じ貧乏所帯なのかも知れない。
「う、うぅん……」
あ、目を開けた。良かった。
「あれ? ここ、どこ?」
「大丈夫ですか?」
「え!? あ、あなた、誰!?」
あぁ、怯えないで! ここで大きい声とか出されたら、「女を無理矢理連れ込んだかこのバカタレが!」って大家さんに叩き出されちゃう!
「あの、僕、フォロウ・ワンダーって言います! 幻術師で、今は冒険者やってます! よ、よろしく!」
「……フォロウ、さん? 外人? えっと、げんじゅつし? ぼうけんしゃ? ……どういう事?」
何だか混乱してるみたい。落ち着かせるには、これかな。
「え!? あれ!? 何で花畑!?」
魔法を発動させ、部屋を花畑に変える。これで少しでも落ち着いてくれれば……。
「な、何これ! いきなり花畑に来ちゃった!? あれ!? でも触れない!? どうなってるの!?」
……余計混乱させちゃったかな……。とりあえず消そう。
「き、消えた……」
「あ、あの、驚かせてすみません……」
「あ、あなたがやったの!?」
「……はい。僕の魔法は、幻を映し出すんです」
今度はあまり驚かさないように、手の上に花を咲かせる。
「魔法……」
「あの、大丈夫ですか?」
呟いたっきり深刻な顔で黙ってしまった。どうしよう……。
「あの、この世界の名前は!?」
「せ、世界の名前!?」
え、何、急に!? 何て答えれば良いの!?
「この国の名前でも良いから教えて!」
「え、えっと、ユロピア王国、ですけど……」
「……魔法の存在、知らない地名、これは、そう!」
女の人が両手を上に突き出した!
「私、異世界に来たのね! やったー!」
「……えぇ……?」
突然の行動に、僕は怯えて見守るしか出来なかった……。
その後彼女を何とか落ち着かせながら、聞いた話を整理する。
彼女はこことは違う世界『ニホン』から来た人で、名前は夢美さんというそうだ。
夢美さんの世界では、魔法はなく、『カガク』という、人の資質によらずに使える力が発達しているらしい。
「私の世界でも昔はあったみたいだけど、今は無くてさぁ」
だから夢美さんの世界では、魔法のある別の世界に行く事は一つの憧れのようになっているそうだ。そんなに良いものじゃないけど、と思いながら口には出さない。
「……帰りたい、とかないの?」
「ぜーんぜん! 私、天涯孤独でね? 保証人もいないから寮付きで働けるとこにいたんだけど、そこが超ブラックで」
「ブラック?」
服の色と何か関係があるのかな?
「寮だから逃げられないし、毎日死ぬほど仕事させられてたから、ラッキーって感じ!」
「はぁ……」
まぁ心配してる人がいないっていうなら、いい、のかな?
「それよりさ! 頼みがあるんだけど!」
「な、何!?」
顔は綺麗なんだけど、ぐっと来られると怖い!
「ねぇ、映画作らない!?」
「エイ、ガ……?」
言ってる意味は全く分からない。
ただ夢美さんの、髪色に似た茶色の瞳は、子どもみたいにキラキラしていた。
読了ありがとうございます!
ふぅ、これでタイトルは回収。
異世界転移もので、主役が転移者じゃないパターンってどれくらいあるんでしょうね。見てみたい。
お人好しで流されやすいフォロウ君は、これからどうなってしまうのか!?
次回『怪獣ものって何ですか!?』
お楽しみに!




