ざまぁ展開って何ですか!?【おまけ】
家紋 武範様主催『夢幻企画』投稿作品です。
このおまけで無事完結となります!
追放ものにはざまぁ展開が必須かなぁ、と。
(ほんとは十話目に入るはずだったのに、話が膨らみすぎて足が出たなんて言えない……)
第一話に登場した、どこかで見たことあるような三人組が再登場! フォロウを追放した彼らを待つ運命とは!
おまけ話『ざまぁ展開って何ですか!?』
控えめなざまぁですが、お楽しみください。
「久し振りだねぇフォロウ」
映画の上映を終えた僕に話しかけて来たのは、見覚えのある女性だった。
「た、タッカビーシャさん……」
「ボクちゃん達もいるわよ〜ん」
「ふんがー」
「ネッチーさんにキンバッカさんも……」
僕を冒険者から追放した三人だ。何の用だろう?
「随分羽振りが良くなったそうじゃないかい」
「え? いや、そんな事は……」
「誤魔化しちゃって〜。聞いちゃってるのよ僕ちゃん達〜。何でもエイガってのが大当たりしてるみたいじゃないの〜」
「あ、はい、皆さんに喜んでもらって……」
「その稼ぎ、少しワテらに分けてくれでもええやろ?」
「え?」
三人が一歩迫ってくる。
「いいだろう? あたし達とあんたの仲じゃないかぁ」
「僕ちゃん達、今ちょ〜っとお金に困っててね〜」
「助け合いでまんねん!」
うーん、困った。
夢美さんが皆が楽しく観れるようにと、入場料を安くしているから、人気はすごいけどお金は生活に困らない程度。
人にぽんぽんあげられるほどじゃない。夢美さんとのお金だし。
「考えてもごらんよぉ。あんたがこのエイガってのやれるようになったのは、あたし達が引導渡してあげたからじゃないかい?」
「そうよ〜。冒険者に向いてないってはっきり言ってあげたから、今のフォロウちゃんがあるんじゃないの〜?」
「感謝してええんやで!」
……そうかも知れない。僕が夢美さんと映画に出会えたのは、冒険者仲間から外されたからだ。
改めて言われると辛いけど……。
「お話は伺いました」
いつの間にか夢美さんが側に来ていた!
……聞かれてたんだ……。
「ですが冒険者である皆様に、ただお金を差し上げるのも失礼かと存じます。どうでしょう? 皆様を主役の映画を作りまして、その売上の半分を差し上げると言うのでは」
「あ、あたし達がエイガに出るのかい!?」
「あら〜、僕ちゃん達有名になっちゃうわ〜」
「お金ももらえて一石二鳥でまんねん!」
三人は上機嫌だけど、夢美さん、怒ってる?
なら何で三人の映画を作るなんて言ったんだろう?
「内容はこちらにお任せ頂けますか?」
「あぁ、勿論さ。エイガなんて分からないからねぇ」
「フォロウちゃん、頼んだわよ〜ん」
「ワテ有名人になってまうで!」
「承りました」
機嫌良く帰って行く三人を見送って、張り付いた笑顔の夢美さんに恐る恐る声をかける。
「あの、夢美さん? どうし」
「帰ったらすぐ新作作りよ」
うわ! すごく怒ってる!
「映画の力、たっっっぷり教えてあげましょうね……!」
僕はこくこくと頷くしか出来なかった……。
一月後。
「お待たせいたしました」
「お待たせいたしましたじゃないよ! どうなってるんだい! あれは、一体、何なんだい!」
「何かご不満がありましたでしょうか」
上映後、怒鳴り込んできたタッカビーシャさん達に、
『片付けが終わるまで対応出来ません。今しばらくお待ちください』
と待たせた夢美さんは静かに対応する。
「不満も不満よ〜! も〜、あっちこっちから笑われて、何かと思って観てみたら、僕ちゃん達のカッコ良さが全然出てないじゃないの〜!」
「ワテら怒ってまんねんで!」
それはそうだろう。
僕と一緒に冒険していた時の失敗談を、これでもかと誇張して、面白おかしい喜劇に仕立てたのだから。
転がる岩に潰されて布みたいにぺらぺらになったり、足の上に武器を落として目ん玉が飛び出したり、魔法に失敗して真っ黒になったり……。
作っていて、何度も笑い転げてしまった。
「こちら、売上の半分になります」
「だから何であんなの作ったのかいって聞いて……、えぇ!?」
「こ、これが僕ちゃん達の取り分〜!?」
「えらい大金やおまへんか!」
夢美さんが差し出したお金に、三人の抗議が止まった。僕もびっくりした。
短い物語なのに、日に何回やっても満席になる会場に。
そして怒ってるはずなのに、きっちり半分渡す夢美さんに。
「皆様のお陰で大変ご好評を頂いております。今後も上映の度に売上の半分を差し上げる予定です。映画の出来にご不満であれば上映を中止しますが」
「そ、そういう事なら悪くないですよね〜、タッカビーシャ様?」
「ワテらお金持ちで有名人でまんねん!」
「じゃ、じゃあこれからもよろしく頼むよ!」
「承りました」
結局三人はほくほく顔で帰っていった。
夢美さんの意図が読めない。恐る恐る聞いてみる。
「……良かったの? 怒ってたんでしょ?」
「だからよ」
「だから?」
夢美さんの顔が、恐い笑みに歪む!
「映画とはいえ、あんなドジで間抜けな様子を見せられたら、あいつらに仕事の依頼、来ると思う?」
そ、そういう事!? 上映すればする程お金は入るけど、代わりに冒険者としての信用を失うって事か!
「そのうち、映画の収入なしには食べていけないようになるわ。でも映画の人気は新作が出れば移っていく。気付いた時にはもう遅い、ざまぁ展開ってやつよ」
成程……。ちょっと胸がすく思いだ。
「でも何でそこまで……?」
「……だって……」
夢美さんが顔を赤くして唇を尖らせた。
「私のフォロウを馬鹿にしたのが許せなかったんだもん……」
僕のため、だったのか……。
「それに、あの女、巨乳をこれ見よがしにさらして、何か腹立ったし……」
私怨も混じってるみたいだけど……。
「ありがとう、夢美さん」
僕のお礼に、夢美さんはまた唇を尖らす。
「……ねぇフォロウ。そのさん付けやめない? 私達、その、夫婦、なんだから……」
言われて気付いた。確かにずっとさん付けで呼んでたな。
一個年上で、色々な事を知っていて、ちょっと心配になるほど頑張り屋で、尻込みしがちな僕を引っ張ってくれていて、どうしてもさん付けで呼びたくなるんだよね。
でもそうだ。僕らは夫婦。夢美は僕の可愛い奥さんだ。
「……ありがとう、夢美」
「……うん」
差し込む夕陽に照らされて長く伸びた僕らの影は、ぎゅっと一つになった。
最後までお付き合い頂き、ありがとうございます!
これでフォロウと夢美のお話はお終いです。
実は、ヤーサさんの依頼で刑務所に慰問に行ったり、
その際に思いついた、錬金術で作る『魔法を閉じ込めておける道具』を使って円盤販売を始めたり、
円盤なら一人用も出来る!と一人称視点で相手が好きな人になるデート映画を作ったり、
それが王様の耳に入って一騒動あったり、
と、アイディアはあるのですが、他に書きたいものもあるので、しばらくお蔵入りです。
ちなみに水渕成分様に看破されてしまいましたが、夢美の名前は夢を『む』、美を『び』と読んで、映画を表す『movie』から作りました。
なおフルネームは『杵間夢美』です。
「『夢幻企画』だから夢美だろう」と思ってもらえるよう、タッカビーシャ様始めサブキャラの名前をまんまにしたり、毎話冒頭にふりがな振ったりしてきましたが、まさか気付かれるとは……!
『ウォー◯ーをさがせ!』の作者の気分(笑)。
フォロウ君は、うつろなものを意味する『hollow』と、付き従う『follow』から作りました。日本語のフォロー(助ける)意味も乗ってます。苗字のワンダーは適当(笑)。
完結という事で後書きが長くなってしまいました!
ここまでお読みくださいまして、ありがとうございます!
また別の作品でお会いしましょう!




