いきなりクビって何ですか!?
家紋 武範様主催『夢幻企画』投稿作品です。
期間中、毎日投稿をしたいなと思っておりました。でも短編のネタがもう無い!と悩んでいたところ、声が聞こえてきました。
なに強? 夢幻企画の短編ネタが思いつかない?
強 それは無理矢理短編にしようとするからだよ
逆に考えるんだ 「連載でもいいさ」と考えるんだ
そんな感じで思い付いた物語です。
十話前後で、期間内に完結する予定です。
毎日投稿する予定ですので、よろしければお付き合いください。
「フォロウ。あんたクビだよ」
「えっ?」
冒険者酒場の一角で、リーダーのタッカビーシャさんの突然の言葉に、僕は固まった。
「な、何で、僕、クビなんですか?」
「幻術師なんて全然戦闘の役に立たないじゃないかい」
両側に座るネッチーさんもキンバッカさんもうんうんと頷いている。
「そ、そんな事は、ない、と思います、けど……」
「例えば何だい?」
「えっと、幻を見せてる間に逃げたり、幻で脅かして追い払ったり……」
「あたしらは冒険者だ。逃げたり追い払ったりしてちゃ稼ぎにならないじゃないか」
「……はい」
うぅ、ごもっとも……。
「そうよー。冒険者気取るなら、キンバッカみたいにまともに戦えるようになるかー、タッカビーシャ様みたいに戦いに使える魔法を覚えるかー、ボクちゃんみたいに役立つ技術を磨く事ねー」
「……はい」
盗賊顔負けのネッチーさんが言うと説得力がある……。
「ワテみたいに身体鍛えないとあきまへんで!」
「は、はい……」
キンバッカさんみたいに強かったら良かったのに……。
「ま、悪く思わないでおくれよ」
「ボクちゃん達、もっと上に行くためには、君みたいな役立たずと組んでいられないのよねー」
「ほなさいならー」
「あっ、ちょっ、と……」
止める間も無く三人の仲間は行ってしまった。いや、元仲間、か。
「……どうしよう……」
魔法適正で珍しい幻術と相性が良いと言われ、舞い上がってのめり込んだのがまずかったなぁ……。
幻を見せられるだけの魔法に適した仕事は少なく、あちこちを転々とした後、冒険者になった。
これなら幻術を生かせると思ったけど、怪物退治には直接役に立たなくて、この有様……。
でもどうしよう。一人じゃ怪物退治なんか出来ないし……。
「はぁ……」
真っ暗な未来に絶望しながら、席を立つ。
「……ご馳走様でした。お会計を……」
「あいよ!」
伝票を見てまた溜息。
あぁ、やっぱり払ってないのか。
四人分の支払いは地味に痛い……。
軽くなった財布を補うべく、薬草採取を頑張ろう。
稼ぎは良くはないけど、危険は少ないし、何より落ち着くんだよなぁ。
幻術は何の役にも立たないけど、農家とかで仕事しようかなぁ。
「!?」
な、何だ!? 丘の上で、何かが光ってる!?
タッカビーシャさん達なら「きっと儲け話だよ! 行くよお前達!」って走って行くんだろうけど、僕にそんな度胸はない。ここは見なかった事にして……。
「えー!? ここどこー!?」
女の人の声!? 徐々に収まりつつある光の方からだ!
「え、ちょっと、何このでかいカエル! い、いやー! 来ないでー!」
気が付けば僕は全速力で丘を駆け上がっていた。登り切った僕の目には、
「来るなって言ってるでしょ! このカエル野郎!」
見た事のない、黒いピシッとした服を着ている女の人と、
げろろろろ……。
この辺りによく出る怪物、大ガエルが見えた。女の人を見て舌舐めずりをしている。
カエルには、これだ!
ぴえっ!?
「こ、今度はヘビ!? ……ぁぅ……」
僕が幻術で呼び出した大蛇に、大ガエルは悲鳴を上げて逃げて行った。良かった。
「あの、大丈夫、ですか?」
「……」
あ、女の人はのびてしまっていた。何の予告もしないで大蛇を見せちゃったから、仕方ないか。
でも困ったなぁ。このまま置いておく訳にもいかないし……。
「……重っ」
女の人を担ぎ上げると、ひとまず町へと引き返す事にした。
読了ありがとうございます。
フォロウを追放した三人から「やっておしまい!」「ポチッとな」「アラホラサッサー!」と幻聴が聞こえた方、僕と握手。
さて謎の女の人を保護したフォロウに待つ未来とは!?
次回『映画って一体何ですか!?』
お楽しみに!