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第八十七話『集う強豪たち』

いつもありがとうございます!

この度、第七十四話『疼く前世』に挿絵追加いたしました!よかったらご覧になってくださいませ!

 投げ捨てられた鍵が回転する。

 ルイの元へと、まっすぐに舞い戻る。


 しかし、起動装置に刺さろうとした寸前、空中の鍵を真横から掴む手があった。


 人差し指と中指で挟まれた鍵が、不服そうにカチカチと音を立てている。



「先生」



 ルイは、静かな気配を保つ黒髪の女性を見て声を上げた。


 羽搏 冥花。 ミミアの姉であり、小波と琴音の担任。

 行き詰まる戦場の最中、彼女は片方の手でタバコをふかし続ける。



「やめておきなさい。 下手をすれば、あなたまで死にます。 これ以上私の生徒に傷ついてほしくありません」



 諌める声とは裏腹に、その薄紫と水色の瞳は燃えるような怒りをテロリスト二人に向けている。


 ルイは、鍵を掴む冥花先生の手に、自分の手を重ねた。



「危険を伴うのは承知です。 でも、私は死ぬために努力を続けてきたわけじゃありません」



 冥花先生の目がルイを見つめる。 ルイは続けた。



「私は死にません、何があっても。 そうでないと、彼が私を救ってくれた意味がない」



 ため息と一緒に、白い煙を吐き出す。


 タバコを足元に落として踏みつけ、鍵を掴む手を離した。



「小波くんと同じようなことを言うんですね。 どうして私の生徒は頑固な子ばかりなんでしょう。 どうせ私の言うことを聞いたりはしないでしょうから、まぁいいです……でも、あなたは力の矛先を間違えています。 あのテロリストどもを倒したとて、小波くんを救えるわけじゃない」



 冥花先生が懐から何かを取り出しルイに投げた。

 ルイは刀を捨てて、それを受け取る。


 虹色の腕輪だ。 これと同じものを、たしか小波が嵌めていた。



「こういうこともあると思って、予備に作っておきました」

「これは……?」

「それは彼の力の制御装置。 一秒でも早くそれを彼に。 正直……それがあったところで彼が救えるかと言われると、頷きがたいですが。 このままにしておくよりはいい」



 冥花先生の美しい薄紫の虹彩が、水色の染まっていくのが見えた。


 一色の双眸を見せる彼女から冷たい殺意が溢れていく。



「あなたは小波くんを。 あの二人は……私が説教をくれてやりましょう」



 力強く頷く。

 冥花先生が紫の鍵を取り出すと同時、唱えた。



「『共鳴れ』!!」

「『狂れ――堕天狂化』」



《『不撓不屈』》

《『魔女』》

《Caution》

《C-caution》



 冥花先生が親指で鍵を上空に弾き、ルイが鍵を投げ捨てる。

 二つの鍵は重力に逆らい、主人の元へと舞い戻る。



《接続》



 燃えるような熱がこみ上げる。


 冥花先生の頭上に大きな純白の帽子が現れ、ルイが手を横に薙ぐと周囲に大量の青と赤の稲妻が落ちた。


 青の和装に赤い色が混ざる。 露出した腹に一本の細い熱が模様を描くように這う。


 冥花先生の頭に帽子がはらりと乗り、白の瘴気が周囲を覆い尽くした。


 地面を穿った青と赤の雷が二色の火花を打ち上げる。 



《Welcome to Fiona server》

《W-w-welcome to F-f-fiona Serv-v-ver》



 舞い落ちる花びらの中、少女は佇む。


 腹に浮かび上がった熱を放つ紋章に指を這わせると、背後で黒の尻尾が揺れた。

 この姿は、悪魔に似ていてあまり好きではないのだが。


 瘴気の中から白い魔法使い姿の冥花先生が姿を現す。



「私の生徒に手を出したこと……後悔するなよ」



 シュゴウが首を傾げる。



「まぁ。 煙を吐くもの同士、仲良くしましょうよ」

「お前と同じにするな――」



 冥花先生の姿が隣から掻き消える。

 ルイが次に彼女を認知したのはシュゴウたちの真上の空中。



 冥花先生が両手を翳す。 何かを察したのか、シュゴウと黒縄がその場を飛びのく。


 何の前触れもなく、彼女たちがいた場所に水色の光が巨大な球状の広がりを見せた。


 爆ぜるでもなく、瓦礫を生むわけでもなく、そこにあったものが、“消え失せた”。


 光が消えると、そこには綺麗に抉られたクレーターが出来上がっている。


 小波が冥花先生を見上げる。

 恐らく、シュゴウと黒縄以外の全てをハヤトだと認識している。 それを疑問にも思わないとは、おぞましい洗脳能力だ。


 ルイは拳を振り上げ、地面に叩きつける。

 二色の稲妻が地面を砕きながら進む。


 雷撃に気付いた小波の姿が掻き消える。


 ルイが手のひらの中に刀を呼び出し――視線をくれてやることも、構えを取ることもなく、真横からの刃を刀で防いだ。


 甲高い金属音。 今度は弾け飛ばされることなく、ギチギチと鍔迫り合う。


 歯をむき出しにして唸る小波と、遅れて目を合わせる。



「アンタは、私が救う……!! アンタが、私にそうしてくれたように……!!」

いつとありがとうございます!

3/10は、久しぶりに二話投稿できると思います。そのときは12時と18時に投稿する予定ですので、よろしくお願いいたします!

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