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第四十一話『プレゼント』

今回は今後の都合上短めです!

「どうだった? カラオケ」



 蒼は駅の方へと歩きながら隣のルイに尋ねる。



「たまにはこういう娯楽も悪くないわね。 全然曲を知らないのが残念だけれど、とても楽しかったわ。 ありがとう」



 ルイからの素直な感謝に、また泣きそうになる。 結果として、メインキャラたちの役を担えたことに、心の中でガッツポーズをする。


 駅が見えてきたころに、蒼は一つ思い立った。



「そうだ!!」



 ルイにその場で待っててもらうように言い、蒼は駆け足で街の中へと入っていった。


 十分後。



「ごめん、デートの途中で抜け出しちゃって!!」

「何が何でもデートにしたいのねアンタ。 それで、どこに行ってたの?」



 蒼は息を整えながらルイを駅の側にある前衛的なオブジェ兼ベンチに促す。

 蒼も少し距離を取って腰かけ、手に持った袋をルイに渡した。



「プレゼントを渡すにはあんまり風情のある場所じゃないけど……開けてみて」



 ルイはそっと小袋を開ける。



「これは……音楽プレーヤー? セナが持ってたような……」

「うん。 ルイは音楽あんまり知らないって言ってたけど、音楽自体は好きだと思うんだ。 だから、これで、沢山の音楽に出会って欲しくて」

「そんな。 嬉しいけど、もらえないわ。 すごく高いんでしょう、これ」

「ほら、七月はルイの誕生日だし」

「五月よまだ。 ていうか何で知ってるのよ」



 あげたい。

 もらえない。


 そんな押し問答が続く。



「今日、付き合ってもらって本当に嬉しかったよ。 そのお礼だと思って。 まぁ、そのお礼だったらもっと高いものじゃないと気が済まないけどさ」



 二分程度が経つ。 先に折れたのはやはりルイの方だった。



「………………もう。 そんなに言うなら、頂くわ」



 ルイは押し合いへし合いした袋を自分の元へと引き寄せる。

 しばらく音楽プレーヤーを見下ろし、それから蒼を見た。



「プレゼントなんて、凄く久しぶりだわ。 本当にありがとう。 沢山使うわね」



 ルイは笑う。 何て美しい笑顔なのだろう。 彼女の笑顔は、誰よりも何よりも尊い。

 この笑顔を守るためならば、本当に、何でも出来る気がした。

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