第三十二話『何が起きた!!』
「おい、霧矢。 何がどうなってる」
「俺は何より、毎回毎回食堂に来るたび箸が動かない蒼、お前が心配や」
いつもの食堂。 蒼は霧矢の意見を受けてもううどんを頼むのを止めようと誓いながら、その光景から目が離せなかった。
メインキャラたちが食事を嗜んでいる。
眠たそうなハヤトに絡むミミア、距離が近い。
ルイのエビフライを勝手に摘まんで叱られているセナ。
寂しくなったルイの皿にから揚げをおすそ分けする刹那。
何か、増えている。 しかも蒼の超知り合いだ。
刹那は少し慣れてない素振りながらも全員と楽しそうに話しており、ルイとは特に親しそうだ。
友人が出来たことは素晴らしいが、それがまさかあのグループとは。
蒼がどれだけ切望しても入り込めない場所に、刹那は一瞬で溶け込んでいる。
訳が分からないままの蒼の視線に刹那が気付いた。
見せびらかすでもなく、刹那はにっこりと笑った後、ぱちり、ウィンクをする。
蒼は首を傾げた。 そのウィンクの意味を、蒼は放課後に知ることになる。
☆
放課後。
「よっ!! また断られに行くのか!?」
「頑張るねぇ小波ぃ!」
友人たちに茶化されながらも、今日もFクラスへ行く覚悟を固めながら帰り支度をする。
「頑張ってくださいね、小波くん」
ひらひらと手を振って応援してくれる琴音。
蒼の友人たちは呆然となって彼女の姿を目で追った。
琴音が淑やかに扉を閉めて教室を後にして、数十秒後のことである。
「小波 蒼!!!!!!!!!!!!!!!!!」
凄まじい勢いで扉が開いた。 扉が泣いている。
蒼は驚いた。 いや、驚いたどころの騒ぎではない。
あの早乙女 ルイが、蒼の名前を呼びながら教室に入って来たのだ。
金色の美少女は、教室を見渡して蒼を見つけるとずんずんと蒼に向かって歩いてくる。
怪獣の進撃を思わせる足取りに、蒼の友人たちが周りから消え去っていった。
どん、と蒼の前で立ち止まると、腕を組み、視線を反らしながら、彼女は言う。
「…………一緒に帰るわよ」
「………………ほえ?」
滅茶苦茶素っ頓狂な声が出た。 ルイは細長く綺麗に整った眉毛をピクリと動かしたかと思いきや、両手を机の上に叩きつけて言う。
「私と一緒に帰りたいの!? 帰りたくないの!?」
「か、帰りたいですッ!!!!!!!!」
まくしたてられるまま、蒼は立ち上がる。
「三秒で準備しなさい!!」
状況が全く理解できなかった。
喜びや感動は、もっと遅れてやって来るだろう。
ともあれ蒼は、荷物を殴りつけるような猛烈な勢いでカバンに突っ込み、本当に三秒で準備を終えた。
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