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第二十八話『おかしな友人』

 最近、何だか友人の様子がおかしい。


 といっても、最近というのは、今から二年ほど前からになるのだが。



「おはよぉ」

「おはよう、刹那」



 あくびを噛み殺しながら化粧台の前に腰かける刹那。


 ルームメイトの朱莉はもう制服に着替え始めていた。 その鍛え上げられた細身のスタイルを眺めながら、彼女を入学初日にルームメイトに誘えて助かったと改めて思う。


 乙女の支度は時間が掛かる。 刹那はのんびりと準備を進めながら、例の様子のおかしい友人について思いを馳せることにした。


 その友人の名前は、小波 蒼である。





 火威 刹那は、引っ込み思案だ。


 仲のいい友人には比較的明るく接することができるが、友人の友人と話す機会とか、クラス替え初日とか、そういう場面では中々前に出ることが出来ない、そんな嫌いがある。


 そこそこに生きて、そこそこに終わる。 そんな生き方も悪くないと思う。


 友達も少なくないし、才能にも恵まれて胡坐をかく余裕もあった。


 だが、教室の中心で輝くものたちを見ていると、目を背けたくなる。


 そんな、どこか劣等感と鬱屈さのある人生。 夢も、前へ生きる気力も足りない。

 ハッキリ言って、輝かしく生きるものが羨ましいのだ。


 さて、彼女には小学生時代から付き合いのある友人がいた。


 その内の二人が、今も同じ高校に通う風間 霧矢と小波 蒼である。 

 刹那は昔から霧矢のことを想い、一度はフラれた身であるのだが。


 そんな彼女が今、蒼のことが気になって仕方がないのであった。





「やっ!!」



 放課後、体育館で武術に励む刹那。 お相手はもちろん今現在唯一の女友人である朱莉だ。


 彼女の放つ蹴りはきちんと武術の域に達している。 刹那の喧嘩ごっこの動きとは訳が違う。


 腕で辛くも蹴撃を防ぎつつ、刹那はちらりと体育館の中央を見た。



「小波、ちょっと教えて欲しいんだけど……」

「あ、もちろん。 俺でよければ」

「小波くん、ちょっと練習見てくれない?」

「おっけー、いいよ」



 蒼が、色んな人に囲まれて教えを乞われている。


 小波 蒼。 幼馴染の一人だ。


 刹那と同じオタク趣味を持ち、小学校高学年のころからよくアニメやライトノベルの話をしてきた趣味の合う少年である。


 言ってしまえば地味な少年だ。 中肉中背で体つきも普通。


 前に出ることが苦手で、才能にも恵まれていない。


 友人たち揃って教室の隅で陰の空気を呑んでいた仲間たちの一人である蒼。 揃って教室の真ん中にいる輝かしいものたちを小さく僻み、妬み、羨み、憧れていた、彼が。


 最近、随分変わってしまった。


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