第十一話『クラス分けは大事』
皆さま。 沢山の閲覧と評価、本当にありがとうざいます。
これから物語が本格的に動き出しますので、お付き合いいただければと思います。
皆様の想像を超える物語を綴れるよう、まだまだ精進いたします。
重ねてですが、数ある作品の中からこの作品を読んでいただき、時間を割いていただき、本当にありがとうございます。
「蒼、ああいう女の子がタイプなんだ」
クラス分けの紙が貼られた場所へ向かいながら、朱莉が蒼に批評する。
ねー、意外、と刹那が続く。
「あの子って早乙女 ルイだよね? 性格凄いキツイって聞いたけど。 私は友達になれなさそう」
「小波は将来尻に敷かれそうやな」
「それにしても、いきなり告白するなんてびっくりしちゃったね。 そういうのってまず友達になってからとか、順序があるんじゃないの?」
「あの幼馴染グループには入り込む隙がないんだ、少しくらい強引にと思ってさ。 それに、顔ぐらいは覚えてもらっただろうよ」
悪い意味でじゃなければいいがと心の中で付け足す。
蒼にとって予想外なのは、既に『入学初日に告白したやべー奴』みたいな肩書が蒼に向けられる視線に絡まっていることだった。 あまり周りのことは考えていなかったので、学校生活に支障が出てほしくないところである。
さて、聖雪の今年の入学者は二百三十人ほどらしい。
校舎の前の掲示板には、クラスの大きな括りの下に生徒の名前がびっしりと羅列されている。
この手の学校はライトノベルの鉄則的に完全に実力主義。 学力はそれほど重視されず、純粋な戦闘力でSからFまでのクラス分けがなされる。
聖雪ほどの名門になると、『外れ者』の人間はせいぜいCランクが限界だろう。
……もちろん、例外はある。
「小波、何というか、すごいね、ほんとに」
ぽかんと口を開けてクラス表を見上げる刹那。 その目は、Sクラスの強者たちのリストに名を連ねる小波 蒼の文字を見ている。
自分の努力がこうやって形になる感覚はこの世界に来てから初めて味わったもので、やはりまだ慣れなかったが、心地いい達成感を伴うものだった。
「あったりまえやろ。 小波は人の何十倍も努力してるんやからな」
「何で風間が自慢げなわけ?」
「友達なんだからええやろ!」
刹那と霧矢が元気に言い合いをしている間、朱莉が蒼の制服の裾を摘まんでくる。
その口元には、小さな笑み。
「蒼、やっぱりすごいよ、おめでとう。 私なんて、努力した気になったけど、結局Dランクだよ」
「聖雪に来れること自体、誇りに思っていいことだよ。 朱莉もすごいんだ。 それに、大事なのはこれからどう頑張るかだと思う」
「ええー!! 朱莉ちゃんDランクなん!? 俺はEやったわ~」
朱莉との間に暖かい家族の空気が流れたと思いきや、そこに霧矢がへらへらと入ってくる。
その後に、トボトボと刹那が輪に戻ってきた。
「私……Fランク……やっぱりやっていけるか超不安……」
朱莉が女子同士ということで刹那のフォローに回る中、失礼ながら、蒼は少し羨ましいなと思った。
何故なら、
「ねーねー!! 見て見て!! 私たち三人お揃いFランク!!」
「全ッ然嬉しくないわよ!!」
「俺は嬉しいねー。 穏やかな学校生活が待ってるぜ」
「ちょっとアンタ、立派なFNDの一員になろうとかそういう崇高な意志はないの!?」
件の幼馴染三人組は、全員Fランクなのだ。 これもライトノベルの定番である。
最強の力を持ちながら最底辺のクラスに属す主人公と、そこに集う美少女たち。
底辺でありながら最強の力で最強を打ち倒し、わーすげーと注目を浴びるというお手軽カタルシスのための設定である。
あの男は、目立たないように試験でわざと手を抜いてFランクになるように調整したのだ。 ルイとの関わりを増やすために蒼も同じことをしようかと思ったが、変に加減をすると普通に試験に落ちそうだったのでやめた次第である。
セナは力は強いがそれを制御できない故のFランク。
そして最強の血筋を持つ早乙女家の子女であるルイも、“訳あって”Fランクだ。
教員が生徒たちを誘導する。 蒼たち四人は帰りに一緒に帰ることを約束して、それぞれの教室に向かった。