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第2話 これではいけない

そんな言葉をリック王子もライラも聞こえていないようだ。楽しそうに話している。


「リック、もうすぐ誕生日ね」

「ああ」


「ああって、それだけ」

「うん。まぁ」


「何言ってるのよ。次の誕生日で、正式に王太子に任命されるんでしょ」

「ああ、そうだなぁ」


「これで私も正式に王太子妃なんだわ~。あ、まだ婚約者だけどね。ね。リック。早く貰ってくれるんでしょうね。そーだ。その日はリックの式が終わったら三人でパーティーしましょうよ」


勝手に話を進めるライラに私は呆れ顔。

そう。リックは王子の座から正式に王太子として任命される。即ち未来の王だ。

ライラは妃に。私は武官として彼の手足となり働く。それが我々の未来。リックを中心とした未来なのだ。


「おいおいライラ。リック……いや王子殿下だってその日は大忙しだろ。パーティーもフォーマルなものをやるだろうし」

「え? そうなのリック?」


「ああ。そうだよ」

「やーん。つまんない」


「大丈夫だよ。ライラも呼ばれてるだろう。招待状が送られてるはずだぞ?」

「ま。そうなの?」


ライラは後ろを振り向き、ルミナスに声を荒げる。


「本当なのルミナス。私に招待状は届いているの?」

「は、はい。家宰(かさい)のフオルム様よりそのように伺っております」


それを聞くと、ライラは私たちの腕をほどき眉を吊り上げてルミナスの前に立つ。

そしてそのまま、ルミナスを平手で打つ。高らかな音が空に響く。ルミナスは驚いてその場に跪いた。


「ならさっさと言いなさいグズ! フン。リック行きましょうよ」

「あ、ああ……」


ライラに腕を引かれ、リックは心配そうに後ろを振り返りながら階段を登っていった。

私は頬を押さえるルミナスに近づき、手を差し伸べる。


「ルミナス。許してやってくれ。ライラは本当は優しい娘なのだが、将来君主になることで気持ちが興奮しているのかも知れない」

「い、いえ。もったいない。ジンさま。私が悪いのです」


「さぁ、手に掴まれ。急いで追いかけないとまたどやされるかもしれん」

「そ、そうでした」


リックとライラは並んでいる。その後ろにはリックの護衛三人。ルミナスは一歩引いてそのものたちの背中を追いかけながら駆けていった。

私もその後を追うが、いつの間にかファンの女の子たちに囲まれていた。


「ジンさま。我々と教室に行きましょうよ」

「ああ。ありがたいがその気はない」


「もーう。ジンさまのイジワル」


彼女たちにもそれぞれ婚約者がいる。

ルー男爵令嬢には一回り違うランス伯爵が。

ウェンディ子爵令嬢にはクエイト伯爵。

ミール子爵令嬢にはニーメア公爵。


彼女たちは恋愛ゲームがしたいだけだ。貴族という働かなくてもいい商売の暇つぶし。

決められた政略結婚とは違う恋。

その相手が私とは笑ってしまうのだが。

これが貴族の恋愛事情だ。自分の心とは関係のない結婚をさせられる。それに比べてリックやライラ達など羨ましい限りではないか。



教室に入ればすでにリックの隣りにはライラ。三人の護衛がその後ろに立ち並び、誰も近づけない。

ルミナスも教室の後ろで直立不動の姿勢をとっていた。

私も適当な場所に座る。


ライラはリックに一礼し立ち上がる。私はライラを気にしてそちらに首を向けると耳元でささやいた。


「お花摘み」

「ああ──」


つまりトイレ。そんな淑女のために気付かないふりをして省みないのが礼儀だ。ライラは私から離れてルミナスの方に首を向ける。


「何をしているのグズ! 主人が立っていると言うのに!」

「は、はい! お嬢様!」


ライラはルミナスに護衛を任じたのだ。その罵声に教室がざわめき凍り付く。

余りにもヒドい。もっと言い方があるのではないか。あとでライラを諭さなくてはなるまい。

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