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第13話 ライラ、その愛

私は、勢い良く扉をあけるとそこには。そこにいたのは。


「ライラ!」

「ああん。ジン。ようこそ、私のお店に!」


粉まみれのライラ。庶民の作業着をまとって、迎える広げられた手は豆だらけ。

そして、その後ろには若い男。彼は恥ずかしげに頭をかいた。


「る、ルミナス!?」

「やぁ、ジンさま。一瞥以来でした」


「キミは死んだはずじゃ?」

「そうなんです。でもやり残したことがあって現世をさまよっているのですぅぅぅ」


と手を胸の前にたらして幽霊のフリ。

それをライラは笑いながら叩く。

それはあの時のような暴力ではない。強くなく、弱くなく。二人からあふれる親密さ。

何が起きているのかまったく分からない。


「いったい、どうなっているのだ!?」

「やだ。ジン。気づかない? 私たち駆け落ちしたのよ!」


「か、駆け落ちだって? だってキミはルミナスのことを」

「あら。ホラみなさい。ルミナス。私の演技力は親友のジンすら騙してたのよ?」


「ええ、ホントかなぁ? ジン様。ホントにライラのあんなクサい芝居に騙されました?」


芝居だって?

そして、ライラと呼び捨て。お嬢様とは呼んでいない。

この二人、本当に駆け落ちしたのか?

リックに婚約破棄された悲しみで?

だが分からない。だったらなぜランドン公爵はルミナスを処刑したなどと。


「もっとちゃんと教えてくれ。ランドン公爵はルミナスを処刑したといっていたんだぞ?」

「ああ、そうよね。今まで騙してごめんなさい。ジン。私とルミナスは昔からずっと一緒だったの。それは知ってるわよね」


「ああ」

「ルミナスは下僕として買われてきたの。私の世話係として。でもね、小さい頃から私たち、お互いを愛するようになっていたの。だけど私には王子の婚約者として選ばれた道があったわ。将来はどうしても離ればなれになってしまう。私たちは決心したの。二人で庭園にある池に入って自殺しようとしたのよ。でも死ねなかった。二人はすんでのところで助けられたの。お父様は怒って、ルミナスを遠くに売ってしまおうとしたのよ。でもそんなことをしたら、ますます私は悲しむと思ったのね。ある計略を私たちに伝えてきたの」


「計略だって?」

「そう。私が悪役になることよ。ランドン家総ぐるみで、私はダメな公爵令嬢、王太子の婚約者に向かぬと吹聴、演技。嫁いだお姉様たちには被害が及ばないようにしながらね」


「あ、あれは演技だったって?」

「そうよ。辛かったわ。何度やめようとおもったか。ルミナスは公共の場でプライドをズタズタにされ、私は愛する人を思いっきり叩かなくてはいけない。でも、部屋に戻ったら互いに励まし合ったの。この苦労の向こう側にはきっと幸せな結婚が待っているんだって」


「信じられない。あれが演技だったなんて」

「ほんと? 良かった。ルミナスはクサいクサいっていってたけど、結局みんな騙されたでしょ。それによって王太子から婚約破棄させる。私は失意のうちに出奔。ルミナスはその咎で処刑。でもその裏側は、手に手を取り合っての結婚。お父様からもらった資金で開いた小さなお店。うふふ。どうジン。驚いた?」


驚いた。

しかし、あのお嬢様でしかなかったライラがなんともたくましい。

手には豆。顔は粉だらけ。髪も乱れてシラミもいるかもしれない。

だが彼女はこの生活を選んだのだ。愛する人との。


「そうだ! ジン。お夕食を一緒にいかが? ちょうど一段落したのよ。お菓子を食べない? クッキーにドーナッツ。サイドディニッシュに川魚のフライ。ルミナスが前の川に罠を仕掛けてるのよ。上手なんだから。そりゃぁ貴族の皿に比べたらまるで何も無いわよ。でもとっても美味しいんだから」

「ライラ、あれもあっただろ。豆と川エビのスープ」


「シッ! あれはもう二皿分しかないのよ」


慌ててルミナスに静かにというサインを送るライラ。私は笑ってしまった。


「親友が作る料理ならばどんなものでも美味しく頂けるよ」

「ホント? 嬉しいわ。主婦になってからそんなに経ってないから上手じゃないけど」


狭い仕事場の次の部屋は狭いダイニング。

ライラは狭いキッチンに行って、料理を作り出した。


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― 新着の感想 ―
[一言] そういうことだったのかあああ!!!!
[一言] このことはリックも知ってましたね。
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