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2-33.同居人が増えた。

〇望〇


「正座」

「はい」


 家に帰ると、美怜が仁王立ちしており、居間で早速、正座させれた。

 知ってた。

 その後ろには予想通り、ウチにたどり着いたリク君がいた。

 それも知ってた。

 リク君が逃げ出して当てがある所は美怜しかいない。

 なお、星川氏は強敵だった。

 機会があればどこかで語られるかもしれない。

 絶対、次戦う機会があれば力押しはしない。

 相手の土俵で戦うのは本当に馬鹿がやることだ。


「話は聞いたよ。

 ソラさんと許嫁になったって。

 何、彼氏彼女(仮)の(仮)をすっ飛ばして、結婚の約束をした仲になってるんだよ!

 ねぇ、望の口から答えてよ!」


 血を吸ったようなルビー色をした目。

 本気で怒っているぞ、今からお前の血を見せろと言わんばかりに訴えかけてくる。


「美怜、言い訳に聞こえるかもしれないが、僕も嵌められたんだ」

「望が嵌められるとか想像出来ないんだよ。

 本当なら誰にそんなことを?」

「お父さん」


 美怜が頭を抱える。

 確かに、お父さんなら出来るなと美怜が渋い顔をする。


「望が言えなかったってことはお父さんに何かお願いされてたの?

 家族計画みたいに」

「ソラ君のお見合いを止めろ、それが今回のミッションの内容。

 ついでにソラ君の母親からの当主権利のはく奪、ある家の破滅フラグを立て……まぁ、これはおまけだ。

 つまり、鳳凰寺家の家族計画だね?

 お父さんとソラ君の父君は旧友で、それ経由で色々」

「……で、大人同士の都合に巻き込まれたと。

 つまり、お父さんとリクちゃんのお父さんは望とソラさんをくっつけようともしていた?」

「そんな所さ。

 僕としては迂闊だったね。

 感情的に成ってソラ君を助けることにしか目が向かず、大局を忘れるとは。

 無条件にお父さんを信じるのはやめようと思ったね、全く」


 美怜の眼から血の気が消える。

 だが、それは一瞬だ。

 瞬間沸騰したかのように赤くなり、そして立ち上がり宣言する。

 

「んとね、ちょっとお父さん殺してくる」

「待て待て待て、家族殺しはやめろ。

 傷が残る」

「望どいて、お父さん殺せない」


 だって、と美怜は続ける。


「私が本当に怒っているのは、望をまた道具扱いしたことだよ!」


 僕も怒りを覚えている理由を美怜は手元でスマホを操作しながら言ってくれる。

 スマホで送信ボタンが連打されており、あて先はお父さんなのが見える。

 嬉しいことだ。


「ソラさんと許嫁になろうが、婚約しようが、本人の意思ならいいよ。

 イヤだけど、究極的には許すと思うんだよ。

 それでも望は私を一番考えてくれるだろうし」

「そうだろね、僕もそう思う」


 とはいえ、美怜には家族殺しの汚名を被って欲しくない訳だが。

 殺すなら僕がやる。

 クソ親父も故郷の舞鶴湾に沈められるなら本望であろう。

 さておき、


「まぁ、許嫁(保留中)なんだけどね、今」

「どういうこと?」


 美怜はおろかリク君が僕に対して、クエッションマークを浮かべてくる。


「リク君を追いかけることであやふやにしてきた」

「ナイスだよ、望。

 汚い大人みたいなことしてるけど、汚い大人相手ならいい手だと思うよ」

「また、ソラ君に投げ飛ばされる気がするけどね?

 僕としては別に許嫁ぐらいはいいんだが、制限されるのはやっぱりイヤなんでね」

「望らしくて安心したよ」


 美怜が僕を観て、安堵と呆れた顔を浮かべてくれる。

 いつも通りだと、そう言いたいのだろう。


「ただ、ソラ君の家の名誉を守るためにもしなくちゃいけない。

 何、外聞上だけだ、美怜がイヤならほとぼりが冷めたら解除してもいい。

 先ず、美怜に許可をと思ってね。

 許してくれるかね?」

「そこはリクちゃんから聞いてる。

 恩があったソラさんにしてあげられる、最大の事だと思うから……仕方ないけど、許すよ。

 望も決める前に言ってくれたもん。

 ソラさんのお陰で、望と仲直り出来た事実は消えないもん。

 それぐらいならいいんだよ」

「ありがとう、美怜」

「えへへー、どういたしましてだよ」


 美怜が嬉しそうに抱き着いてくる。

 いつも通りの柔らかい抱き心地で安心する。

 とはいえ、客人の前だ、すぐ離れる。

 仲の良さを見せつけすぎたのか、リク君が硬直したままである。


「さてさて、リク君を君はどうしたい?」

「……家に帰ります。

 望お兄様にも、お姉ちゃんにも迷惑を掛けたくないので」

「私は迷惑じゃないよ。

 望、帰さなきゃ、ダメ?」


 リク君から不承不承ふしょうぶしょうというのが顔に滲みでている。

 帰りたくないぞと、言っているようなものなので助け舟を出すことにする。


「別に帰る必要なんかないんだがね?

 懸念していることであろうことを一つ一つ消していこう」


 さて、今重要なのは、彼女の義務感を優しく解きほぐしてあげることだ。

 あとは罪悪感もだが。

 それらは彼女の家ではムリだろう。


「先ず、鳳凰寺家の力は僕に及ばない。

 というか、美怜にも及ばない筈」

「なんで?」

「唯莉さん」

「あー」


 唯莉さんという単語で理解と美怜が浮かべてくる。

 便利な人である。


「まぁ、悠莉さんも舞鶴湾にリク君の父君を沈めたことがあるらしいので、大丈夫だろう」

「私のお母さん像が崩れそうな情報だよ、それ!」


 無視して、二つ目だ。


「外聞については、今からソラ君と許嫁になると正式に言ってくることで解決できる。

 リク君の安否を連絡するついでに言えばいい」

「……許嫁がついでですの?」


 意図的に僕が言ったことに、リク君が喰いついた。

 つまり、リク君を優先すると言ってあげることで、心持ちを軽くして挙げたのだ。

 事実、


「別に拘ってないのでね?

 さておき、リク君が男の所にいたと外にバレたとしても家と家の繋がりが強固であると見せつけるだけになるからね。

 お兄さん、お姉さんの家にいるのは別に不思議な事ではないからね?」

「えへへー、お姉さん♪」


 美怜がその言葉でリク君に嬉しそうに抱き着く。

 ポカンとしたままのリク君は美怜の豊満な胸に押しつぶされるままになっている。


「三つ目だ。

 美怜も僕も邪険にはしない。

 というか、この美怜を見て、邪険にするように見えるかね?」

「……でも、お邪魔に「「ならないから安心したまえ(てね)」」」


 二人で言葉を重ねてやった。


「部屋も唯莉さんの部屋が」

「却下、有害なモノが多すぎるよ、あの部屋」

「そんな部屋に出入りしている誰かね?

 だから有害な美怜になっているのかね?」

「私は有害じゃ無いよ、家族愛の形を調べてるだけだよ。

 資料探してると、過激な本が出てくるからリクちゃんに見せられないんだよ」

「つまり過激な家族愛の原因はそこだね」

「別々の事をくっ付けるのは詭弁だか、曲解だよ?

 大丈夫、望?」


 心配そうな眼でみてくる美怜。

 いつも通りの美怜だと眩暈を覚えながら、唯莉さんの部屋を片付けることを決めた。

 唯莉さんに美怜の緊急時以外、入るなと言われているが構うものか。


「私の部屋を使えばいいんだよ?

 私は望の部屋でいつも通り寝るし」


 最近寝るのには使われていないベッドとパソコンとゲームしかない部屋の事である。

 女の子らしさの欠片も無いのはどうかと思うが、美怜らしいと言えば、美怜らしい。


「……へ?

 ご兄妹一緒に寝られてるんですの?」

「うん。

 てなわけで問題ないことが確定したよね?」


 疑問をに対し、それが普通だと言わんばかりの無垢さでそういうものだとリク君を納得させてしまう。

 僕の美怜ながら恐ろしいやつである。


「いいんですの?」

「どーぞどーぞ、誰かがお泊りなんて初めてだよ。

 小牧さんも泊りにきたことないし、気が済むまで居ていいんだよ?」

「僕もそうだね」


 美怜と僕も友達という概念が薄い。


「それではお世話になりますの」


 一時的にだが、同居人が増えた。


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