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2-26.図書館でのご相談。

〇望〇


「ソラ君、相談を聞こうか。

 リク君の事かと思うが」


 デートも後半、図書館でのことだった。

 ある程度の復習を自習で終わらせ、問題の出し合いが終わってからそう僕は問いかけた。

 するとソラ君が驚きですわと、ゲジ眉を跳ね上げ、緑色の眼を見開く。


「魔法使いですのね、ホント。

 どこで妹のことをお知りに?」

「シンデレラは美怜だけどね?

 ちょっと、まあ、機会があってね」


 いつものやり取りはさておき。


「ソラ君は仲良くしたいんだろ?」

「はい。

 美怜さんと望君の関係を見ていたら、羨ましくなりましてね?

 別に私が嫌いな訳ではないですし。

 そう考えたら、仲良くしたいなって心が言うんです、半分は血を分けてますし」


 ソラ君が寂しそうに、そして楽しそうに言う。


「驚かずに聞いて欲しいんだが」


 はい? っと、小首を傾げるソラ君の動作は可愛いのだが、続ける。


「リク君、恐らく、僕の事が好きだ」

「……?」


 ソラ君が小首を傾げたまま、止まった。


「は?」 

 

 僕が恐怖を感じる微笑みがソラ君に浮かぶ。

 

「……望君、前言撤回、あのクソな妹をズタズタにしてさしあげようかと存じますわ。

 家督を奪う?

 私なら出来ますわよ、ふふふふふふ。

 姉妹なら犯罪行為も親告罪ですし、家も体面を気にして動けませんしね。

 一度、望君に潰された私は慢心もありませんしね、ふふふふふ」


 美怜や僕に敵意を向けてきた昔のソラ君がそこに居た。

 傲慢、自信満々。

 僕や美怜に今向けてきてくれているたおやかさ等は微塵も無く、眼には潰すと書いてある。

 更に今まで使わなかった家の権力も使いましょうかと、呟いているので、無制限階級のサドンデスマッチを想定している様だ。

 絶対に血で血を洗うやつだ。


「待て待て、嫉妬心はありがたいが、物騒すぎる。

 最近、助けた少女がリク君でね、なつかれてしまったんだ」


 流石に僕を慕ってくれる、二人を殺し合わせるのは気分が悪い。

 ソラ君の方が僕としては、扱いが重い訳だが、とはいえだ。


「あー、なるほど、つまり一目ぼれされたわけですわね?

 それで付け込まれたと。

 望君、身内になると優しいですし、何だかんだ純粋な好意には弱いですし」


 なんか惚気られてる気がする。

 こそばゆい。


「リク、可愛いですからね?

 私と違って肌、黒く無いですし、眉毛もギザギザじゃないですし、胸もありますし」

「ソラ君もリク君も美怜も他人の長所で自分を傷つけるのはどうかと思うんだがね?」

「無いと思うから、不足していると思うから、欲するんですよ。

 人間ですもの。

 ただ、それをどうするかは本人次第」


 その言い回しになると身に覚えがありすぎるから困る。

 僕も美怜も家族が無くて、欲しくて、結果的には依存症だ。

 美怜の居ない生活は考えられない。


「結論、リク君が僕とソラ君が付き合ってるのを観たら、絶対に嫌われるから諦めた方が良いと思うんだが?」

「望君は私と付き合うのがイヤなんですか?」


 言われて、言い回しに勘違いされるような文面に成っていることに気づかされる。

 自分でも珍しいミスだ。

 何を諦めた方が良いかが抜けていた。


「すまない、言い回しを間違えた。

 僕との交際を諦めた方が良いと聞こえたんだね?

 当初は確かに思考誘導の果てと考えていたが、今はそんなことないさ。

 少しずつ絆されてるのは間違いない」

「ずるいですわ、その言い方。

 好きだよ、ソラ君ぐらい言ってくれていいじゃないですか。

 嘘でもいいから」

「嘘で喜ばしてもね?

 家族計画で嘘はもうこりごりだよ。

 さておき、リク君と仲良くなるのは難しいんじゃないかなと言いたかったわけだが。

 申し訳ない」

「それは判ってます」


 わざと勘違いしたことを白状したソラ君は、手元のペンを回す。

 僕は遊ばれたようだ。


「僕も他言出来ない情報があるから、どうしたものやら」

「何ですの、それ?」


 独り言を聞かれ突っ込まれる。

 ソラ君といる際の僕自身のワキが甘くなっている気がする。

 反省。


「言いたくないが、美怜と仲が良い」


 誤魔化すように別の情報を与える。


「あの妹、ちょっと舞鶴湾に沈めてきますわね。

 望君は異性として好きですが、美怜さんのことも私好きなんですから」 

「待て待て、美怜が悲しむ」


 確かにそうですわねと、立ち上がったソラ君が座りなおす。


「とはいえ、嫌われる理由って思い至らないんですよね」

「優秀な姉がイヤだってさ」

「それは自分が出来ない言い訳だと思うんですけど、どうでしょうか?」

「僕もそう思う。

 妬みにしか思えないし、事実は事実として受けれるべきだからね。

 それを虐めたり、引き込んだりして釘を引っ込めようとさせたりする考えは、僕は嫌いだ」

「その節は本当に申し訳ありませんでした。

 土下座いたしましょうか」


 僕の言葉の暴力がソラ君を撃ち抜いた。

 悲痛な面持ちで僕を見てくる。

 とはいえ、誘導したのは僕であり、謝罪させたり許さないぞというと美怜が怒るのでやらないわけだが。


「あれは僕も悪いから」

「うう、望君優しい……」


 僕の手を掴んできて嬉しさを表現するソラ君。

 間違いなくマッチポンプだが気にしないでおこう。これぐらいは言葉遊びだ。

 ともあれ、人の優越は確かに存在する。


「母親にそれを言われて嫌な気持ちになっているみたいだね」

「良く知ってますわね。

 月二で家族で食事をするのですが、テストの点や体育の成績などをリクが責められていることはありますわね」

「人並み以上に出来ているのにだね?」

「その通りですわ」


 ノートに図解しながら考えを纏めていく。


「解決策としては、四つ。

 ❶、ソラ君のスペックを下げること、これは論外だ。

 美怜がアルビノ隠したり平均点取ったりすることと同じで許せない。

 これを選んだら僕は間違いなくソラ君を見限る、却下だ」


 ソラ君のスペックが高いことは責めるべきではない。


「❷、母親の影響力を排除する」

「却下ですわ。

 お父様もソラの件で立場が弱いので、内輪揉めで強行的に当主から排除したとなれば他家に弱みを見せることに成りますわ。

 外的要因が絡めばまた別でしょうが……。

 だから、リクに厳しくしている面もございますし」


 調べていたことだが、事実としてソラ君が否定してくれる。

 お父さんからの頼み事にも絡んでいるので、始めから外している。


「➌、リク君のスペックを底上げする」

「出来なくは無いですが、今すぐにというのは難しいでしょうね」

「❹、➌を前提としながらも、ソラ君への悪感情を減らす」

「どういうことですの?」


 ノートの切れ端に嫉妬心と書いた文字をバツし、憧れと書く。


「気持ちのすり替えだ。

 嫉妬心なら、憧憬にしたりだね?

 単純に凄いと思わせて自分も成りたいと思わせるのは難しいから、

 母親や家への感情を悪化させて、ソラ君への悪感情の理由をすり替えるのが楽かとは思うけどね」


 言うは簡単だ。

 僕の得意分野、洗脳や、扇動や意識誘導の基本である。

 僕なら出来ないことも無いと思うが、出た所勝負になりそうではある。

 お父さんからの頼み事次第では難しくなるからだ。


「あるいはソラ君に対しての苦手感の克服だが……」


 ❺案もあるが言わない。

 これは美怜の協力が必要だからだ。

 美怜に負担を掛けたくはない、これは僕が背負い込んだことだ。

 そう心に飲み込んだ。

 どうしたものかと考えるが答えが出ないので、一旦思考を置いておく。

 人間、一度手を付けて起くと無意識に思考が働き、整理整頓される。

 本当に悩んだときはぺー太君を使うが、そうならないことを願おう。

 時間を見ると、そろそろバスに乗る時間が近くなっていた。

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