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2-20.小話:前準備だけでこんなにも嬉しい。

〇ソラ〇


 デートである。

 初デートである。

 ソラのテンションはマックスまで上がり切っていた。


「何を着ていきましょうか」


 悩む。

 普段ならその時の気分で、サッと決まる。

 だが、今回はそうはいかない。

 望君が相手だ。私、鳳凰寺・ソラが本気を出すべき相手だ。

 そして赤茶色ブレザー制服以外の自分を見せる大チャンスだ。

 ギャップを感じさせるもよし、いつも通りの自分だと安心させるもよし、戦略は幅広い。

 まだ日があるというのに気合いが入る。


「色からして悩みますわね」


 ソラの肌は万年褐色肌だ。

 焼いているわけではなくハーフだからなのだが、仕方ない部分ではある。

 とはいえ、正直、美怜さんのような白い肌に憧れもする。

 髪もそうだ。余談なく手入れしているとはいえ、ソラは金髪だ。

 確かに人目を引き、眩いばかりの光沢を放つこ髪の毛は嫌いではない。

 しかし、望君は美怜さんのことが大好きで、その髪の毛は白だ。

 色合い的には黒味が濃い自分の金髪を白味に近くするために薄くしようかと悩むぐらいはする。


「とはいえ、そんな私も魅力的だといって頂けてますから、やりませんが」


 顔がにやける。

 望君は基本的に外見で判断するようなタイプではない。

 胸が妹よりも小さいのが悩みとは言え、美怜さんのように大きいのは羨ましいと思うモノの成りたいとは思わない。

 何事もバランスである。

 全体的なスタイルには自信があるし、それを保つための努力は欠かしていない。


「こういう時は、資料を使うべきですわね」


 判らなければ、他を参考にすればいい。それが一番早く、正確だ。

 丸のみは危険だが。

 取り出したるはファッション雑誌。

 奇抜だったり、ちょっとこれはというモノは飛ばし、自分の色にあったコーディネートという項目を開ける。

 曰く、人間には二種類あるらしい。

 全体的に黄色が強いゴールドタイプと青色が強いプラチナタイプ。

 ソラは前者だ。


「黄色からオレンジっぽい色合いと」


 緑系やターコイズブルーも良いらしい。

 鏡を見て自分を観察する。


「薄い緑色で攻めますか」


 決め手は自分の瞳の色。

 エメラルドグリーンに近いそれに合わせるのがムリが無く、かつ自分らしいと考えたかだ。

 夏を感じさせるように色彩も悪くない。

 とは言え使い方を間違えれば、目立ち過ぎる色ではある。

 スカートなどに使い、上はピンクや白などで纏めてバランスを取るべきか。

 あるいはワンピースにしてしまうか、悩む。


「パーティーに行くわけではありませんから、動きやすいモノ……」


 自室に備え付けられたウォークインクローゼットに入り、悩む。

 とりあえず、取り出したのは、

 ❶、ちょっと色味の濃い緑のチェック柄のフレアスカート、丈は制服と同じ程度の膝程までのモノ。

 シンプルかつ一般的で安心感があり、ふわっと広がるイメージがある。

 ❷、濃い目の緑と黒のチェック柄、プリーツスカートも膝までのモノ。

 トップスとの組み合わせが幅広い、

 ➌、薄緑のシャツワンピース。

 着回しのいい服で腰周りを縛るウエストマークをすれば、スタイル感がある印象に早変わりする。


「ここまでは絞りましたが……」


 悩む。

 だから、ソラは望君にどう見て欲しいかを考える。

 可愛い、幼いイメージ、あどけなさ、巨乳と浮かぶのは美怜さん。

 そのフィールドで戦うのは先ず避ける。

 間違いなく勝てない。

 すると大人らしく、スレンダーさや知的さ、ファッション性の高さなどで勝負するべきかとも思う。

 ただ、力を入れすぎては望君は見抜いてしまう。

 等身大かつというのは絶対条件だ。

 ならば、ムリの無い格好という前提が出てくる。

 

「よし、これとこれで行きましょうか」


 服は決まった。

 私らしい選択かつ、ムリも無い、納得の出来だ。

 望君の反応が楽しみである。

 とはいえ、過度に期待しすぎると、勝手に失望して望君への愛が陰ってしまうのでそこそこに抑える。

 私が好きなのは私が思う望君じゃなくて、彼自身なのだから。

 私に居場所を与えてくれて、同じだと認めてくれた魔法使いの悪役。


「シンデレラは私ではありませんがね」


 イケナイと思う。

 美怜さんへの嫉妬めいた感情がまた湧き出てくる。

 彼の一番は彼女であって私ではない。

 美怜さん自身のことも好きだし、何というか見ていると女性同士ながら可愛いと思う。

 虐めたいとか嗜虐心が無いと言われるかというと嘘になる。

 もう二度とやらないが。

 さておき、


「一歩ずつ、詰めてますからね」


 その結果がデートだ。

 キスをして、彼氏彼女(仮)になって、デートだ。

 順番は何だか変だが、テンションはマックス迄あがろうというものだ。

 頭の話題が最初と同じことを言っている気がするが、仕方ない。

 だって、


「嬉しいんですもの」


 鏡の中の自分は、今まで見た自身で一番楽しそうに見えた。

 待ち遠しい。

 恋するということは何と素晴らしい事なのだろう。

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