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2-12.望のお好みは?

〇望〇


「そんなに金髪の女の子がいいの?」


 僕の口元がぺー太君、バッテン口元になった

 美怜のその質問は自分にとって想定外。

 それはゴザール、地方によくある複合商業施設での買い物中のことだった。

 僕が引いているカートに真っ赤なトマトを放り込みながら、美怜そう言った。


「ほら、リクちゃんといい、ソラさんといい」

「待て待て、二人とも僕から仕掛けた相手じゃない」


 大根を追加しながら弁解に回る。

 そもそもに、ソラ君は美怜が仕掛けたことだし、リク君はただの迷子だ。


「――私も染めた方が良い?」

「美怜の白髪は良いものだからヤメナサイ」

「えへへー」


 嬉しそうに頬が綻ぶ美怜。

 アルビノに関して考え方次第だと、過去に言っていたことを思い出す。

 目立つから嫌いだと言っていた美怜の姿はもう遠い過去だ。


「伸ばすのは?」

「……ありじゃないか?」


 魚を選んでいた望にそう質問すると一瞬だけ悩み、答えを出す。


「例えば、美怜がロングヘア―になるとしよう。

 そこで僕は美怜の髪の毛で遊ぶことが出来る。

 気分によって、ポニーテール、ツインテール、団子、エトセトラ……。

 夢が広がるね⁈」


 手にしたイカの割き方で脳内想定しつつ、美怜に当てはめていく。

 案外、ツインテールとか良いかもしれない。元気バロメーターが増える。

 まてまて、三つ編みとかも小牧君と被るが、知的な感じが増える。


「だが、今ぐらいの髪の毛でも僕は好きだからなぁ。

 手すきするとスーッと通る感じで白のそれがパラパラっとおりていく感じがたまらない」

「望、すごく恥ずかしい事言ってる……」


 今のショートボブもなぁ、捨てがたい。

 だからと、顔を桃のように赤らめてうつむいた美怜の髪に手を入れようとし――場所を考え弁える。

 流石に駅前のベンチぐらいならまだしもだ、人が往来している所では邪魔にしかならない。


「まぁ、カスタム妹をするというよりは、僕は美怜がどう僕を驚かしてくれるのかの方が好みではあるからね」


 代わりに春雨を手に取りつつカートに入れる。


「そういえば、望って好みのタイプの女の子ってどんな人なの?」

「水戸にも聞かれた時には、こう答えた。

 無い、とね?」

「ホモなの?」


 美怜の眼が心配そうに僕を見てくる。

 同時に「だからかな……」と何かを納得している、何を納得したのか気になるが突っ込まないことにする。

 突っ込んだら頭が痛い質問や事実を提示される気がするので回避行動だ。


「水戸と同じボケはやめなさい、知能が下がる。

 あいつは女の好みをおっぱいと答えるような奴だぞ?

 無乳の小牧君が不憫で仕方ないね」

「全くの同意だけど、何で小牧さんの胸のサイズを知っているの?

 水戸さん?」

「彼の胸を見る力は確かに目を見張るものがあるが、今回のは重心からの見立てだ」

 

 美怜の顔にはてなが浮かぶ。

 格闘技の経験が無いと判りづらいなとかみ砕いて説明することにする。


「小牧君は正直、僕やソラ君よりも強い筈だ。

 体さばきが自然体で軸がずれていない。

 そして水戸を殴り飛ばす時なんかを見ていると良く分かるのだが、

 格闘技をするうえで必要のない部分があれば動きが変わる筈のモーションが男性強者とさほど変わらない。

 つまり彼女は男性か、胸が無いという結論になる」

「男性疑惑は言っちゃだめだよ?

 流石に傷つくから」


 流石に僕も必要性が無ければデリケートな会話をして敵にするような真似はしない。

 水戸?

 あいつは友達だからまぁ……


「でも、よく見てるね?」

「美怜を虐めに墜とす際、彼女と戦闘になる可能性があったので少しデータを集めたのさ」

「あー、あり得たね、間違いない」


 確かにそれはあり得た可能性だ。

 想定としては僕の悪役的な行動は、美怜を傷つけたし、それに対し攻撃的になるのは十分な動機だ。

 最終的に暴力がモノをいう事は多々ある。

 美怜が納得したように、そして安堵の息を吐いてくれる。


「話しを戻そう。

 ――考えた末、受け入れてくれる女性と答えたさ」

「なんだか、曖昧だよね」

「自分でもそう思うが、特段、女性と付き合うとかそういうことを考えたことが無かったものでね。

 身長などの外見的容姿については只の他者を分別するための符号でしかなかったのさ。

 審美眼などは問題ないと思うが、自分の好みは判らないのさ」


 なるほど、っと美怜が返してくれる。


「ちなみに、望は胸が大きい方が好き?」

「――鶏胸肉の話だな?」


 真顔な望が手に持ったそれの名称を言いながらボケたら、美怜の眼が赤くなった。

 そしてカートにそれを入れて、無視しようとしたのも悪かったのかもしれない。

 

「違うからね?

 水戸さんが好きなお胸の話だよ」

「……今度、水戸はちゃんとわからせる必要があるね、うん。

 美怜を手の内にかけるとは……」


 さておき、どうしたものか。

 どう答えていいのか正解も無ければ、自分も答えを持たない。

 美怜用にドクターペッパーを入れ、僕用にルートビアをカートに入れながら答える。


「胸ねぇ……。

 確かに、女性としての象徴であり、男性としては大きい方に惹かれるのが自然らしいね。

 とはいえ、それだけが女性の価値かと言われると疑問が残る。

 また、未成熟な方が良いという倒錯者も少なからずいる。

 そうすると、僕がどう思うかという点が重要な点なわけだがどうも思わない」

「ふーん」


 美怜が何かを考えて、そして意地の悪い笑みを浮かべた。


「そうだ、私の胸を触ってみる?」


 ――ゴクリ。


 鳴ったのは自分の喉だけではなかった。

 レジに並んで人が密集している所で言われ、人の目線を集めてしまう。

 目線の先は美怜の豊満なメロンな胸元とあどけない顔立ち。

 ただでさえ、人目を集める白い髪と肌。

 僕から見ても美少女の彼女がそんなことを言ったのだ。

 周りからも生唾を飲む音が聞こえてきた。


「美怜、そういう話は人が居ないとこで頼む。

 僕は君を守るが、君が自衛をしない言い訳にはならないからね?」

「はーい」


 人目を気にしないのは良いのだが、気にしなさすぎなのもあれなので、叱ることにする。

 受けた美怜はニコニコと僕を見てくるので、そこまで想定内だったらしく、口元がバッテンに成りかける。

 ちなみに周りからバカップル爆発しろとみられるが、家族なので筋違いである。


「そういえば、望、性欲薄そうだもんね?

 エロ本一つすら、部屋にないもん。

 触るとか言ってても実際はノータッチだし」

「ほぼほぼ理性でコントロールしてるからね」


 レジも終わり、モノを兎のアプリケットのついたエコバックに詰めていく際に問われたので、答える。


「あぁ、だから一回も自分で処理をして……」

「美怜?」


 流石に家族の領分を超えている。

 だから、美怜にちょっと本気で顔を向けた。


「ごめんなさい」

「よろしい。

 僕のプライバシーを侵すのはもう諦めたけど

 ちなみに唯莉さんの影響かね?」


 話題を変えようと、理由を探ってみることにする。


「そうだよ。

 唯莉さん、濡れ場も書いてたからね。

 たまに自己発で……」

「美怜」

「ごめんなさい」


 再び顔を向けると即座に謝ってくれる。

 誰も、永年小学生ロリババァの性事情など知りたくも無い。

 合法ではあるが、性欲が沸く奴は異常性癖の持ち主な気がしないでも――お父さんが思いつく。

 悠莉さん(中身唯莉さん)の姿はまだ少女のモノだった。

 それを孕ませて、美怜を産ませたとすると……


「まだ怒ってるの?」

「いいや、ちょっと頭痛を覚えてね……。

 人の好みって人、それぞれなんだとという実例を見つけてしまってね」


 美怜が不思議そうな顔をしてくる。

 そしてハッと閃いたように次の言葉を紡いだ。


「ふーん。

 お父さんのロリコン疑惑かな?」

「……エスパーか何かかね、君は」

「だって、唯莉さんの話が出て、望が頭痛を覚える事案というヒントがあれば簡単な推理だよ」


 美怜が当たった当たったと嬉しそうにする。

 

「まぁ、お父さんのように好きな人がロリだったみたいな話なら、好みとかは無くてもいいのかな?」


 そう結論付けた美怜は何処か晴れやかな顔をしていた。

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