表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/199

2-8.教室の中心でキスをしてと叫ぶ。

〇美怜〇


「平沼っち、また平均点ね、

 もう目立つとか目立たないとか気にしなくてもええんやろ?」

 

 お昼休み。

 小牧さんが唐揚げ弁当を広げ始める私を見ながら呆れる。

 ずっと長い付き合いで、いつものことだと思われているのだろう。


「何故、平均点なのか聞いていいかね?」


 望も呆れたように私を問い詰めてきている。

 小テストが終わり、結果の見せあいが発生した昼休みの時間だ。

 和気あいあいとした空気がいつもなら、今は少し望が不機嫌だ。

 まるで、外に広がる雨雲を思わせる。


「つい癖で」


 そう癖だ。

 私はここに入る入試以外はほぼほぼ、平均点を取ってきた。

 目立たないためだ。

 目立たなければ虐められないということに立脚したその考えが今でも捨てられないのだ。

 もう虐められることは無いし、あるとしても望が何とかしてくれるのは実証済みだ。


「美怜、それは僕が頼りないと言いたいのかね?」


 望がヨヨヨとワザとらしく崩れ落ちながら言ってくる。


「どうしても抜けないんだよ。

 テスト中やその前に、皆の様子を観察して、平均点を取るようにしてしまうのが」

「どこの漫画のキャラやねん」


 小牧さんの突っ込みで気配を殺すのが癖になっている画像が浮かぶ。


「私自身、満点は難しいけど、平均点なら簡単に狙えるしね?」 

「そちらの方が高等テクニックな気がしますけど」


 ソラさんがお弁当もといお重を持って、望の席の隣、私から見て反対側に座る。

 いつもの定位置だ。

 外は雨だというのに今日も髪の毛が手入れされて乱れもしていない、

 ミルクチョコレート肌も艶やかだ。

 美人だ。

 やはり実物を見るとなんというか同じ生物としての格の違いを覚えて、劣等感を感じてしまう。


「平均点すら怪しい俺にその能力を下さい、お願いします」

「水戸は授業中寝るのをやめたらいいと思うわよ?」

「だって、眠いんだ、仕方ないだろ……」


 霞さんが泣きながら、言ってくると始まるいつもの漫才。

 小牧さんは困り果てながらも、写したノートを霞さんに手渡す。


「中間テストも平均を狙われる形ですか?」

「多分」


 ――ふむ、っとソラさんは考え込む。


「そしたら私と勝負いたしません?」

「成績ですか?」


 話の流れから察するにこうだろう。


「平均値を狙わない目的があれば、解決すると思いますので」

「確かに、意識すれば治ると思います。

 入試みたいに」


 あの時は、この学校に入って唯莉ゆいりさんとの生活を続けるという人生の目的とも言える理由が有った。

 今では別にどうでもよくなっているそれなので、人生とは何とも。


「結局、体育祭のお弁当勝負も流れてしまいましたし」

「僕の一日権を賭けるのは無しな?」


 望が機先を制すると、ソラさんの頬が不満そうに膨れる。

 そう一日権を賭けた勝負は流れたまま、ノーゲームになっている。

 ソラさんのお弁当は皆で食べたらしい――食べて欲しかった望や私を除いて。

 私のお弁当がダメになってしまったのは私の責任ではあるので仕方ないのだが、その事で少しソラさんに負い目を感じている。


「というかだね、ソラ君、君が今更、今一日権貰ってどうするのかね?」

「カップルっぽい事したいのですわ」


 ソラ君は重箱を広げながら、頬をあからめる。

 今日のお弁当の中身は、唐揚げをメインとして、葉物、煮物ご飯と栄養のバランスが取れている。


「バカップル爆発しろ」

「水戸、お前も大概だと思うのだが?」

「?」


 言われた霞さんは不思議はてなマークを浮かべる。

 小牧さんが可哀そうになってきた。

 毎日、弁当を作ってきて一歩進んだかと思ったら、それが日常になってそれ以上には進んで無いようだ。

 ゲームで言えば、フラグが立つまで同じことの繰り返しの状態なのだろう。


「小牧君、この朴念仁、鈍感系主人公でも気取っているつもりなのかね?」

「これが素よ、残念ながら」


 もう諦めたわよと、呆れながら小牧さんが返している。

 小牧さんのお弁当は、今日も毒沼が広がっている。

 見た目的に問題があるだけで、味には問題ないどころか美味しいのだから凄い。


「馬鹿は置いといて」

「馬鹿って俺の事か、馬鹿と言った方が馬鹿なんだぞ」

「僕の成績を超えてから言いたまえ、さておきソラ君。

 キスはしたから、一日券はデートでもするのかね?」

「デートは当然の権利では?

 温泉旅行とかいいですわよね?」

「(仮)でなら、賛同しよう」


 望とソラさんの会話の中、私はある単語が心に詰まった。


「――キス? 

 聞いてないよ、それ」


 私は、初耳だと、それを聴き返していた。

 実際しているのだろうとは思ったのだが、実際聞いた瞬間、反射的に望に詰め寄っていた。


「美怜、顔が怖いのだが、言う必要も無いだろう」


 望が笑いながら私に対して甘引きしている。


「無いけどぉ……、

 私にもしてよ⁈」


 私の叫びにクラス中が静かになった。

 注目を集めてしまった。

 望も口元がバッテンでどうしたものかと悩んでいる。

 理由が判らなかったのかもしれない。


「普通キスって家族でもやるものでしょ⁈」


 だから、言ってやった。

 すると望は頭を抱えて考え始める。

 なんで?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on


cont_access.php?citi_cont_id=955366064&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ