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2-7.アルビノ少女は悩む。

〇美怜〇


『一時間ほど遅くれる、すまない』


 望からのメッセージが届く。

 何かに巻き込まれたのかな?

 っと浮かぶが、今日はソラさんにカップル(仮)を提案しにいっていたのを思い出す。


「まぁ、望がぶん殴られて重症とかまではあるよね」


 女の子に対して、キープですよと明示しているようなものである。

 女性視点で見ればたまったものではない。

 しかしながら、私との生活を優先してくれている背景を理解しているので、致し方ないとも感じる。

 ソラさんには悪いけど、私は望ともっと家族したいのだ。


『早く帰ってきてねー、今日は鶏肉のシチューだよ、ぐつぐつー』


 レスポンスが遅くなると心配させそうなので、簡潔な返信を行う。

 理由は聞かない。

 まぁ、ソラさんとのことなら後で聞けるだろうから。


「さて、私のやることをやってしまいますか」


 今日は早く帰ったので、勉強は終わらせている。

 絶対に次のテストはソラさんに負けるわけにはいかないのだ。


「望とのキスは私もしたいからね……」


 黙って、朝に寝込みを襲うような真似をせず、堂々としたいのだ。

 ちゃんと望にも私を味わってほしいのだ。

 なぜならば、


「家族でキスぐらいは当然なんだよ」


 さておき、今やることは料理だ。

 今日の当番は私で、先日買い物していた鶏肉でシチューをするのだ。

 味覚に関しては望と私は違うことを理解している。

 例えば、私はドクターペッパーが好きだが、望は飲むサ□ンパスことルートビアが好きなのだ。

 他人から見ればどっちもどっちだと言われる気がしないでもないが、私たちにとっては明確に違うと言える。

 あと玉子焼きも例に上がる。


「ソラさんの玉子焼き、美味しいからなぁ……」


 思い出すのはソラさん手作り玉子焼き。

 醤油を利かせた作りだ。

 私の場合は砂糖を利かせた甘いやつが好みなのだが、望はソラさんの方が好みに合うということを言っている。

 しかも本人の腕で加算される。


「割と何でもできるよね、ソラさん」


 劣等感がある。

 成績優秀、スポーツ万能、容姿端麗、料理絶品、金髪翠眼、化粧に関しても教えてもらうことがある。

 人当たりも良い。オカシイ人格が出ることもあるが、基本的に真面目なお嬢様だ。

 怖い部分も最近は望にお熱で全く出てこない。

 

「望もなんでもできるよね……」


 私の家族。

 成績優秀、スポーツ万能、容姿端麗、料理絶品、白髪。

 頭は時折、オカシイことがあるけど、基本的に早い。

 口での言い合いは勝てる気がしない。

 私が勝つときは結局、望が折れてくれる時だけだ。

 この二人が並んでいると、割とお似合いだと思う。頭オカシイ部分も含め。


「私も何かないのかなぁ……」

 

 持っているモノ。

 アルビノは目立つから良いとして、太ましい体、小さいミニサイズ。

 料理は万能だがプロの域ではない。

 スポーツは全然ダメ。成績は平均点。


「いけないいけない」


 あんまり否定しすぎると、望に言われたことを破るので頭を振る。

 小さい可愛らしい容姿とでも言い換えよう。

 ソラさんを下して、人気一位になったこともあるのだ。

 少しは自信を持とう、うん。


「望も可愛い言ってくれるしね?」


 奇麗だ。とも言ってくれたことを思い出すと、ちょっと頬が熱くなるのを覚えた。

 そんなこと言われたことが無かったのもあるが、とても嬉しかったことを覚えている。


「でも、私にも何かないのかなぁ」


 再び同じ思考に囚われる。

 何というか、自分を自身が理解できていないのが一番大きい気がする。

 趣味はゲーム。これなら望にも勝てる。

 戦略系は知識の差があってズルをしている気分になるモノの、基本勝てないゲームは無い。


「胸だけならソラさんに勝ってるけど……」


 何だかまた大きくなってる気がする。

 時折、ブラジャーがキツイ。

 腹の肉とか、アンダーとかは変わっていないので、多分、胸がまた大きくなったのだ。

 変装していた時みたいに、サラシにしようか本気で悩むほどだ。

 多分だけどサラシにしなくなった分、強制が取れ、また成長し始めているのかもしれない。


「唯莉さんみたいに成長しないのも何だけど、

 一部だけ成長するのも何だかなぁ」


 浮かぶは叔母の姿。

 永年小学生とは望の言葉だが、言い得て捉えている。

 あの人は十二歳から成長していない。


「胸、大きい方が好きならいいんだけど」


 望は女性の好みを言わない。

 霞さんとの会話を聞いてる限りでも女性のタイプははぐらかしている感じがある。

 それはともあれ、シチューの最後の仕上げに入る。

 普通は炒めて煮込んだ具材にシチューの元を入れることが多いと聞くが、平沼家では更にチーズを入れる。

 しかも、二種類。粉にしたパルメザンとチェダーだ。

 これにより、より一層の深みが増すのだ。


「ただいま」

「おかえりだよー」


 ちょうどいい、時間に望が帰って来た。

 火を止め、迎えに行く。


「……望、ソラさんに怒られたの?」


 観れば、彼の胸元のボタンが幾つか取れていた。

 胸ぐらを掴まれたような感じだ。


「いや、まぁ、違うんだが……後でボタンを付けるから裁縫道具を貸してくれ」

「いいよ、私が縫うよ、

 ほらシャツ渡して」


 と、シャツを脱がせる。

 そして着替えるように自分の部屋に行くように促す。


「望の匂いがするね……」

 

 それを見送った後、ふと鼻孔をくすぐる匂いがあった。

 シャツから香るそれは男の人の匂いだと気づいた。

 望はあまり体臭がしない上に、香水を軽く振るので珍しいことだ。


「すんすん」


 あ、良いかもしれない。

 何というか胸元をくすぐられるような匂いだ。

 もっと強く嗅ぎたくなる。

 ちょっと、顔をうずめたくなった。

 ちょっとだけなら……


「美怜~、十分だけ作業するから、それまで待っててくれ」

「あわわわ」


 望の声が二階からして、驚いて腰が抜けてしまった。

 見られたら望に何を思われるかと慌ててしまったのだ。


「美怜?

 凄い音がしたけど、大丈夫かい?」

「うん、だいじょうぶだよ~」


 そう誤魔化し、十分後に向け、晩御飯の最終調整に入るのであった。

 望はそのシチューを美味しいと嬉しそうに食べてくれた。

 そんな望を見ながら家族と言えども、使用済みのシャツの匂いを嗅ぐ行為はしないだろうなと自分の行動を恥じた。

 例えば、望が私の使用済みの下着をスンスンしていたら……別にいい気がするけど。


 ……なら良いのでは?


「美怜?」


 物思いに浸かすぎたようだ。

 望がシチューを食べる手を止め、心配そうな眼で私を見てきてくれていた。

 ちょっと、頭のネジが外れていたようだ。


「あ、うん、ちょっと考え事してただけだよ」


 誤魔化すように手を振りながら、望を安心させようとする。

 反省。

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