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2-4.彼氏彼女の事情(仮)

〇望〇


 僕の視点が周り、上向きに倒される。

 受け身は取ったが、ソラ君に覆いかぶされる。

 これもいつぞやの再現に近い。


「はぁ……。

 望君、真剣に考えてその結論ですわよね?」

「そうだ、青春もしたいが、美怜との家族生活もしっかり楽しみたいのでね?

 ようやく手に入れた家族だよ?

 彼女である君にかまけてとか、僕が望んだことが出来なくなってしまう。

 僕は君より美怜を優先する」


 事実だ。

 だから僕は彼女の翠色の眼を見て、紳士的に述べる。

 眼を見て話す効果には、相手が僕が恋愛感情や好意を持っていると思わせたり、信頼を現すことも出来る。

 あんまりやりすぎると威圧感を与えることもあるが、ソラ君は大丈夫だ。


「ただ、家族としてだがね?

 これは前、君に誤解させたままだと思うから言っておく。

 僕はあくまでも美怜のことは家族としてみているし、美怜もそう見ている」

「それは安心ですわね、はぁ……

 シスコンですわよね、全く。

 血縁関係が無いのにそこまで言われる美怜さんが羨ましく思いますわ。

 ソラには家族なんていないに等しい」 


 呆れられてしまう。

 それと同時に理解されていることを示され、気持ちが軽くなる。

 それにと、ソラ君が続けようとしたが、言葉を濁す。

 僕は何だろうかと疑問を覚えるが、続ける。


「で、返答はどうかね?」


 どうもこうも無い気がする。

 普通、こんなことを言われたらそんな男には愛想を尽かす。


「答えをしっていらっしゃいますのに。

 ……意地悪ですわ。

 

 ――ありがとうございます。


 私自身、貴方の居場所に成れるように、頑張りますわ」


 ただ、ソラ君の場合は別だ。

 頬を膨らませて文句を言われるが、最期には嬉しそうに特徴的なゲジゲジ眉毛、ゲジ眉を跳ね上げていた。


「……申し訳ないとおもうが、性分でね?」

「惚れた弱みですわ。

 例えもっと都合のいい関係であろうと私は受け入れたでしょうし、きっと悪にもなる覚悟でしたわ。

 それに比べたら(仮)とはいえ、彼氏彼女です。

 舞い上がらなくてどうするのでしょうか。

 正直、半分は嬉しかったですし」


 フフフと笑う。

 少し陰を含んだ笑いで何かを企んでいるのが、透けて見える。

 まぁ、そんな様子でもどう楽しもうかと考えている限りは僕も彼女も楽しくやれると確信できる。


「美怜さんにアドバンテージ取られたままだと負けてしまいましたでしょうし」

「美怜がなんだって?」

「何でもございませんわ」


 よく聞こえなかったので聴き返すが、パタパタと手を振り、はぐらかされてしまう。


「それで(仮)ですので、ソラを試食されますか?」

「――は?」

 

 そう愉悦を張り付けたソラ君が体を密着させてくる。

 薄い胸の奥、ドクンドクンと彼女の心臓の音がしてくるので、愉悦で仮面をかぶっているだけで、本当は恥ずかしいのかもしれない。

 逆にそのギャップは可愛く思えて、ヤバいね?


「ほら、キスは頂きましたし……次はB?

 あるいは飛び越してCまで行ってしまいましょうか?

 当然、処女ですわよ」


 処女ビッチというのはこういうのを言うのだろうか?

 ふと、最近、インターネットで見た単語が浮かんで当てはまってしまった。


「待て待て」

「ワン」


 手で耳を作った犬真似が存外可愛くて、ドキッとしてしまった。

 衝動的な感覚を覚え、ヤバいと思ったので、引きはがす。


「ドキドキされましたわね?

 ソラとしては致してしまってよろしいですのに。

 彼氏と彼女ですし」

「ムリを言うな。

 そんなに心臓をドキドキ言わせて……君も内心、パニックなのだろう?」

「……バレましたわね」


 彼女はニッコリとして舌をチロッとだし、茶目けをみせてくれる。


「(仮)だということをちゃんと認識してくれるとありがたいのだがね……」

「高校生同士だからセーフですわ」

「アウトだ、アウト、淫行条例にもそう書いてある」

「交際中ならセーフでは?」


 ソラ君があれ? っと疑問を浮かべるので、僕は結論から述べる。


「(仮)とついているから、真剣交際の定義に当てはまらないからな……!

 淫行の定義は『青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交又は性交類似行為』となる。

 つまり抵触する可能性が高いわけだ」

「なんだか、事前準備されていたようなセリフですわね?

 めちゃくちゃ固い感じがあって、望君らしいと言えば望君らしいのですが」

「想定内だからね?

 ただ、キスならいいさ……」

 

 とはいえ、全部禁止するとこの前の男子トイレの件みたいにソラ君が暴走しかねないので、譲歩することで方向性を与える。

 上手く乗せられた気もするが、これぐらいなら想定内だ。


「では、早速」

「ま、ま――!」


 止める間もなく、軽く啄むように押し当てられる。

 フニッとした感触、それはすぐ消える。


「フフフ、今日もこれだけで満足ですわ」


 パアッっとひまわりが咲くように彼女の笑顔が綻び、ゲジ眉も跳ね上がる。

 なんというか、キス自体よりも行為の後に、ニコニコと嬉しそうにするソラ君の表情を見ると心が満たされる感じがある。

 キスでこれだけなら、これ以上はどうなるのかは気にならなくもないが自制である。

 自分自身に自制を促すためにと言う意味も(仮)にはある。


「さて、改めてよろしくお願いします、望君」

「こちらこそよろしくお願いします、マイハニー!」

「それは何だか軽く見られてる気がしますので、普通にソラでお願いいたしますわ。

 ……ダーリン」


 ソラ君のポツリと零れた最後の言葉は僕から顔を背けて、恥ずかしそうだった。


「ソラ君、ムリしなくていいよ?

 可愛いけど」

「あぁ、もう!

 望君の事なんて……好きなんですから!

 絶対(仮)を外させますわ!」

「頑張りたまえ、そんなソラ君を応援している」

「……!」


 からかわれたのが癪に障ったのか、もう一度キスされた。


「うう、絶対絶対ですわよ!」


 こうして彼氏彼女の事情(仮)の付き合いが始まった。

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