1-S2.小話:平沼・唯莉と計画。
|ω・`)家族計画の黒幕:京都タワーでの追記分です。場面は望が去った後。
|ω・`)視点が主人公二人じゃない上、若干のネタバレを含むので、載せるか悩んでおりました。すみません。
○唯莉○
「家族に甘えたいってのは別にええんやで、望。
それをしたいってのはあんたもそうなのはわかっとるんや。
甘えたり、甘えさせたりでええねん。家族がどういうものか求めてみたらええんや」
彼の後ろ姿が消えるのを確認し、そう本心を吐露する。
「嬉しそう、そう思えましたやろ?
この計画は家族を求めていた彼のためでもあるんや。良かった、良かった」
「有難う、僕が不甲斐ないばかりに。
――ところでどうだい、僕の自慢の息子は」
唯莉さん自身、驚いている自分がいることを自覚した。
彼が他人を自分の誇りみたいに言うことも、自分の非を述べることも珍しいことだからだ。
「くやしいですわ。
唯莉さんはどうしても妹の娘とみとって、美怜ちゃんを更正させることはでけへんかったやろしな」
負けた気がして悔しい。しかし、同時に私は望にある懸念を抱いていた。
「ただ、彼もムリしてますな」
トラウマの件もあるが、それ以外にももう一つ。
「あんさんに認められたい、そこで無理をしておりますわ。代理品、彼は自分をこう称したことがありますんや――ほんま賢い子や。まぁ、美怜のことはそのこととは関係なく、好ましいというのが本音でしょうし、問題は感じまへんけどね?」
そして余ったコーヒーに砂糖を追加し、一気に煽る。
口の中に甘さが広がり、脳にいきわたるのを感じる。仕事でパソコンと文章に向かう時と同じ感じだ。
それでも口寂しいので氷砂糖を取り出し、咥える。
「――僕こそ、失格だよ。
あの娘に相対すると発作を起こし倒れてしまう。
悠莉を思い出してしまってな。
……そしてそんな情けないトラウマ持ちの僕が優しい言葉を望に掛けていいものかと」
沈む隣に大きく、息をついて馬鹿にしておく。
「美怜ちゃんのことは段々大丈夫になってきましたんや。
昔は美怜ちゃんの変装でもゆり姉思い出して駄目やったのに。
もう少しやから、そんなに気を落とさんほうがええで?」
一つは美怜に唯莉さんの姉、ゆり姉を思い出してしまうことによる発作のこと。
唯莉さんがゆり姉そっくしに変身しても大丈夫なのだが、美怜ちゃんにどんな格好させても駄目だったので難儀している。
「望のことも今はちゃいますやろ?
なら、認めてやればええんやないですか?
始業式の話を見たとき、えらい嬉しそうやったやないですか」
もう一つは彼の望に対する態度。幾度となく望と話をしているが、道化で本心を見え難くしているが、本当のところは素直タイプだ。
隣にいる彼も黙りを決め込むことで本心を見え難くしてくるが、本当のところは素直タイプなので親子やなと思う。
そもそもに望の道化は昔の彼、ゆり姉が逝く前までの彼にそっくりなわけだが。
「言わなければ伝わらないこともありますわ。
今度、会った時、きっちり自分の息子やと言ってやればええんやで」
「面白い冗談だ」
彼はそれを聞き、悩み――タバコを取り出し、一息つく。そして心底、面白そうに笑む。
「唯莉、あの計画をすすめてくれ」
「はいはい、ええよええよ。名前を呼んでくれたしね? お兄ちゃん」
「やめたまえその呼び方は、高校の頃を思い出す――お互いにそんな歳ではないだろ?」
久しぶりに見る彼の笑顔が嬉しく思えた。
――ゆり姉、ようやく彼は進めそうや。
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