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4ー46.帰宅。

〇美怜〇


「ただいまー!」


 誰も居ないのは判っているけど、言葉にしてしまう私が居る。

 そんな様子を望はニコニコと見てくれている。

 久しぶりに感じる我が家である。

 それだけ、長かった。

 疲れていたのか帰りの電車は寝続けてしまった。


「おかえりですのー」


 ……反応が返ってきた。

 泥棒かと思うが、廊下を駆けてくるのは良く見知った顔で、


「リクちゃん、ただいま」


 私の妹が居た。

 彼女は家の鍵を持っている。

 何かがあって待ってくれていたのだろう。


「お姉ちゃんの携帯のGPS的にそろそろかなーっと思いまして」

「……望、いや、ミリィ、対策して貰っていい?」

『あいあいさー、GPS情報を偽装するようにしますねー』


 とりあえず、プライバシーは確保である。


「ミリィ、今の美怜の命令は却下で」

『ふえ?』


 望が割り込むように言ってくることに、ミリィが戸惑いを見せる。


「僕の周りで一番何かあった時に対応が難しいからだ」

『マスター、どうします?』


 過保護な気もするが、とはいえ、望の周りで言えば私は無力だ。


「望が言うなら間違いないんだよ。

 でも、リクちゃんは悪用禁止だよ?」

「悪用はしませんの。

 望お兄様とのデート予定時間中は見てませんのー。

 昼には戻る予定とお聞きしてましたが、時間より遅かったので心配したんですの。

 迎えに行こうかとも」


 それはまぁ、確かに延長があったからだ。

 外は既に日が沈み始めている。


「観れば、九条家の墓にも行かれていたようで」

「あぁ、そうだね。

 リク君は場所を知っていたのか」

「お盆前ということで御父様からそういうことを色々と。

 九条のお父様のお父様に世話になっていたことも懐かしげに。

 とはいえ、頭がパンクしてしまいますの」


 次当主は大変そうである。


「僕も少しずつ聞いてはいるが、基本的に教えてくれないのがね?

 自分で探れと言われているのか、唯莉さんの鳳凰寺家嫌いが極まっているのかは微妙な所だが」


 望が笑いながら言うが、リクちゃんはキョトンとした眼で、


「この前、唯莉さんはウチ宛てに謝罪に来てくれましたの」

「「……詳しく」」


 私と望の言葉が被った。

 唯莉さんの謝罪している姿が想像できないのは、私も望も同一見解だろう。


「御父様が凄い微妙な顔でしたの。

 一人で来た唯莉さんと会話を終えた後、私が呼ばれまして。

 したら、この前……性についての件で、お節介だったと土下座頂きました」

「まぁ、それぐらいは当然だと思うけど」


 危険な目にもあったし、何よりリクちゃんが暴走した引き金だ。


「ウチとしては、逆にお礼を言いたいぐらいでしたのに。

 ソラも御母様も教えて頂けませんでしたから」


 っと、望を観るリクちゃん。

 その目には色を感じるのは間違いないだろう。


「後は……内緒にしておきましょう」


 えへへっと、私を観ながら笑みを作り、言葉を途中で切ってきた。


「気になるけど……気にしない方がいいモノかな?」

「さぁ、どうでしょうか」


 意地の悪い笑みを浮かべてくる。

 あえて言葉にした理由は私に対して何だろうかと意識させるためであろう。


「むっ、素直なリクちゃんじゃないんだよ」

「ふへぇぇ」


 とりあえず、小悪魔なリクちゃんの頬っぺたを伸ばしておくことにする。

 お餅みたいな肌触りが癖になりそうだ。


「二人とも、仲が良いのは嬉しいが、とりあえず荷物を片付けよう」


 そんな様子を望は楽しそうに観ていた。

 さておき、片づけ終えて、居間に座る四人。

 そう四人だ。


「ソラ姉様はついてこなくても良かったですのに……」

 

 望の膝の上に自分の席だと、座るリクちゃんがそう文句を対面の姿に言う。

 そうソラさんだ。

 青筋を浮かべながらも笑みを張りつかせた表情をリクちゃんに向けている。


「最近、リクの抜け駆けが酷いから観てるんですわよ」

「抜け駆けはされる方が悪いんですの。

 それに許嫁のポジション分、アドバンテージを譲歩してくれてもいいですの。

 指輪も頂いてませんし」


 頬を膨らませたリクちゃんが望の小指のそれをなぞる。


「誕生日プレゼントに送るつもりだが?」


 そんなリクちゃんの頭を撫でながら、笑みを向ける望。

 するとリクちゃんはハッとしたように緑色のまなこを見開き、次の瞬間、笑顔の花を咲かせながら、


「望さん……!」


 抱きついて、後ろに望を押し倒していた。

 そして猫のように胸元に頬擦りをし始めるので、ソラさんに首根っこを掴まれて引き離される。


「泥棒猫、ここに極まり……。

 望君、本気ですの?」

「まあ、そう考えるぐらいにはリク君を手放したくないのは事実だ」

「はぁ……なら、いいですわ。

 ソラは望君にしたがいますし、御父様の描いた図通りなので、悪いことにも成らないかと」


 と言いながら、ソラさんの表情は面白くなさそうだ。


「代わりに、ソラ君、明日にでもデートしようか」

「しょうがないですわね♥️

 スケジュール空けてみます」


 それで表情がパッと向日葵が咲いたようになるから、チョロい。

 ただ、私はそうならない。


「望……」

「美怜、顔が怖い」

「そりゃそうだよ!

 家族デートの余韻を楽しむ時間なのに、望は恋愛ゲームみたいに次のスケジュールを立てているんだもん!」


 言ってやる。

 嫉妬だろうと、そう自覚している。

 今、私の眼はきっと赤い。


「美怜」

「なんだよ?!」

「後でそうしよう」


 そう言われると、私の怒りが萎むのが判る。私も大概、


「お姉ちゃんもチョロいですの」


 リクちゃんの言う通りだと思う。


「こほん。

 所で、リクちゃんもソラさんも、今日は何かご用が?

 お土産は明日、持っていく予定だったけど」


 だから誤魔化すように話題を切り替えることにした。


l´・ω・`)ここが最新話です。ブクマ、評価、レビュー、感想など頂けると奮起します。


l´・ω・`)リアル事情あるため、現状ペースを遅らせます。お楽しみの方には申し訳ないです。

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