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4-26.悩む三人。

〇リク〇


 少し落ち着きましたの。

 とはいえ、望お兄様を観ると、嬉しくなるのは変わらない。

 接客している望お兄様へ視線を向ける。

 ドキドキは変わらない。

 けれども、先ほどみたいな暴走した感情は出てこない。


「リク君大丈夫かい?」


 そう声を掛けてくれるのも嬉しい。

 少なくとも、望お兄様はウチを意識してくれている。

 それが判っただけでも儲けものだった。


「大丈夫ですの♪

 望さん」


 元気よく答える。

 そうすると望さんが一瞬怪訝な顔をするが、嬉しそうに微笑んでくれる。


「あはっ」


 ウチも嬉しくなる。

 ふとお腹を撫でる。

 今も、望さんを観ると滲むような甘く切ない感覚を覚えるが、これが間違いのない恋だと思うと嬉しくなる。

 ウチの初恋は間違いなかった。

 望さんはハシタナイ私も受け入れてくれたのだ。


「とはいえ、仕事しますの。

 ポイント稼ぎ、ポイント稼ぎ……」

「リクお嬢様」

「⁈」


 普段、自分からは声を掛けてこない星川の呼びかけに驚いた。

 睨みつけて、


「裏切者」

「ぐはっ!」


 倒れ伏す黒服に皆の視線が集まるが気にしたモノではない。


「……リクお嬢様の罵倒も良いモノですねー」


 前言撤回。

 さすがにウチのイメージが良くない。

 立たせて聞く。


「何のよう」


 マジメモードになってる自分が居る。

 元々、星川にはこっちが多いので、いいのだが。


「花火、望さんと楽しみたくないですか?」

「詳しく」


 内容を聞いて思う。

 この執事はいつもながら優秀だ。


「お姉ちゃんをどうしようかな……」


 正直な話、一番の懸念事項だ。

 邪険にはしたくないし、出来れば一緒が良い。

 とはいえ、望さんと二人で楽しみたいという気持ちも沸いている。

 ソラ?

 知らない姉ですの。



〇美怜〇


『どうするんですか?』

「聞いちゃったんだけど、どうしよう」


 演目が始まるまで時間があり、携帯からブースの様子を観ようとアクセスしたときのことだ。

 星川さんの企みを聞いてしまった。

 つまり花火を、望と観るためのセッティングという話だ。


『マスター?』

「私も望と観たいのは確かなんだよ」


 記憶の共有、経験の積み重ね、それは私たちに必要なことだ。

 とはいえ、


「ソラさん相手なら当然に私を優先してというんだけど……。

 あんなことがあった後だし、親の謝罪の代わりに二人にさせてあげたい気持ちもあるんだよ」

『何故です?』

「リクちゃんは私の妹で、真剣に望に恋してるからだよ。

 姉としての行動なら自重だし」


 さておき、吊るされている唯莉さんの方を向くと、


「みなもーん、そろそろおろしてーや」

「イヤです。

 スパー終わるまでは大人しゅうしててください」


 元気そうに跳ねているので大丈夫そうだ。

 というか、もうちょっと静かになるまで放置しといて良いかもしれない。


『……何故、恋してるからと、二人にさせてあげる必要が?』

「リクちゃんに頑張って欲しいんだよ。

 それを邪魔したくない」

『頑張る。

 つまり、マスターはリクさんが努力の必要があると、見ているわけですね。

 余裕の表れですね、理解』

「余裕とかではないんだけどね?

 望が一番に見てくれるのは当然に私なんだから」

『それを余裕というのでは?』


 違う気がするが、言葉にならないので放置することにする。

 同時に思考も放棄する。


「リクちゃんに楽しんでもらお」


 これで良いと思う。

 でも、少しチクりと心が軋んだような気がして、


「?」


 胸を抑えた。

 何だろうと思ったが、既に痛くなかった。

 小牧さんの出し物の内容は頭に入ってこなかった。



〇望〇


 イベントも終わりに差し掛かり、夕暮れ時だ。

 ブースは撤退が始まっている。

 流石の僕も疲れが出始めている上に、日焼けが痛くなってきている。

 人並み程度は耐えれるとはいえ、僕もアルビノなのだと自覚せざる得ない。


「望さん、大丈夫ですの?」


 リク君が僕が顔をしかめたのを観たようで、声を掛けてくれる。

 人前でそれは失態だな、と反省しつつ。


「大丈夫さ」


 っと、安心させようと笑顔になる。

 するとリク君が、僕の手を持つ。


「こんなに赤くなってますの」


 熱い皮膚にリク君の小さい手が冷たく感じられ、気持ちいい。


「大丈夫さ、美怜の丸焼き状態より全然ましだからね」

「お姉ちゃんの?」

「一度、丸焦げになったことがある」


 あの時は難儀したと今でこそ笑みが浮かぶ。

 美怜は僕を拒絶していたし、僕も居なくなろうとしていた。


「大変ですの……。

 何か、望さんやお姉ちゃんのお手伝いになることはないですの?」

「こればっかしはね。

 気遣ってくれるだけで十分さ」


 と、リク君の頭を撫でてる。


「はぅっ……」


 頬を赤らめて嬉しそうにしてくれる。

 いつものリク君なら無邪気に喜んでくれそうなモノだが、ちょっと寂しい。

 とはいえ、これはこれで有りだとは思う。


『望、リクちゃんのこと甘やかすよね。

 私が居ないことをいいことに……』

「それは美怜もだろ……っ⁈」


 聞きなれた声に驚き、振り向くが美怜はいない。

 いるのはディスプレイに表示されたミリィだ。


「あれ……気のせいか?」


 美怜への依存が進みすぎて、妄想がとも思う。

 もう僕はダメかもしれない。


『ここだよ、ここ』


 ミリィが手を振ってくる。

 思考が一瞬止まり、脳裏で思考が繋がる。


「美怜か」

『ピンポーンだよ。

 油断も隙も無いんだよ、後で正座だよ。

 所で晩御飯どうする?』

「適当に出来合いのモノを買って帰ろうかとは考えているが?」

『そしたら食べてきたらいいんだよ、リクちゃんと』

「美怜?」


 美怜の言動が妙だ。らしくない。

 普段なら、私もと言うだろう。


『楽しんできたらいいんだよ』


 っと、強い口調で言われ、ミリィの姿が消える。

 モニターには電源が入っていることから見るに、回線を切ったらしい。


「どうしたんだ、美怜……」


 まさか、水戸に何かされたのか⁈

 っと浮かぶが、それは無いだろうと打ち消す。

 小牧君や……唯莉さんも一緒の筈だ。


「お姉ちゃん……」


 リク君には思う所があったらしい。

 少し悩み、


「お姉ちゃんを確保しましょう」


 そう提案してきた。

 異論はなかった。


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