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4-14.新日常:美怜とソラの青春デート

〇美怜〇


「という訳で、昨日、写真撮影とレコーディングをしていた訳です」

「それはお忙しい土曜日でしたわね」


 っと、ソラさんに話題がてら昨日のことを話す。

 ここは紡績工場の跡地に建てられたショッピングモール。

 西舞鶴駅から少し歩き、小牧さんの家に近い。

 とはいえ、今回は足があった。

 星川さんだ。

 今は「自分は買うモノは無いのでー」とハイエースで待機している。


「星川さん、ホント暇なんですね。

 リクちゃんいないと」

「基本的に専属ですからね。

 御父様から用を命じられない限りは」


 望はというと、リクちゃんが林間学校なので家庭教師をお休み。

 学校で会長を手伝うと、制服を着て出かけて行った。


「とはいえ、星川さん、望に私の私服の写真撮影を頼まれているそうです」

「なるほどですわね」


 っとソラさんは微笑みながら、私と手に持った水着を比べながら、あーでもない、こーでもないと悩んでいる。


「全部買ってしまって、ファッションショーを家で行うのもありですわね」

「それはちょっとどうかと思うんです……」


 そして出てくるのはお金持ちの発想に若干、引く。

 私の家も裕福ではあると思うが、ソラさんの発想を実現するまでではない。

 望の貯金は知らない。

 毎月生活費を入れてくれるし、貯金は有るらしいが、聞いたことは無い。


「白色に合わせるカラー……」

 

 私の最もたる特徴であるアルビノでソラさんは悩んでいる様だ。

 確かに常人離れした容姿のそれは通常の観点から外れて悩むに値するだろう。


「ソラも自身の肌でよく悩むんで、だからこそコーディネートを学んだわけで……」


 っというソラさんは奇麗な褐色肌だ。

 太陽で焼いているわけではない、ハーフなのだ。

 入念に手入れされた肌は、スベスベしており、とても健康的に見える。


「瞳の色も考慮に入れ……蒼と赤に切り替わりますわね」

「感情が高まらなきゃ、基本、蒼ですけどね」

「イエローベースで考えて、シーズンカラーは……オータムですわね」

「?」

 

 言われ、理解できないのでクエッションマークが浮かぶ。


「ぇっとですね、先ず二種類に大別します。

 イエローベース、そしてブルーベースと言われるカラー配分です。

 簡単に申し上げますと、色自体が主張するか、色を通して空気が見えてくるかですわね」


 っと、ソラさんが爽やかな明るいピンク色、そして鮮やかなビビットレッドの水着を持ち出してくる。


「これらがブルーベース。

 白味を含んだ空気を思わせるこちらのピンクがサマータイプ。

 ハッキリした色で透明な空気を感じさせる赤い方がウィンタータイプですわ」


 今度は緑色のを二枚だしてくる。

 一つは若葉を思わせる明るい緑。

 もう一つは深く淹れた茶を思わせる濃いめの緑。


「これに対し、色自体が温かみを感じさせるのがイエローベース。

 こちらの新緑を思わせる緑がスプリング。

 抹茶を思わせる深みのある色合いの緑色がオータムになります」


 成程っと思う。

 つまりだ、四季を思い浮かべた時の色に近いのだ。


「夏は日射で色が白味を覚える。

 冬は空気が澄んで色が鮮やかに出る。

 春は明るく可愛らしいお花畑を色が思わせる形に。

 秋は紅葉など、深みのある温かい色合い……。

 こんな感じですか?」

「本当に理解力高いですわね」


 眼を見開いて褒められるので正解だったらしい。


「そうすると、ソラさんはサマー?

 ドレスの色が緑の中でもエメラルドグリーンで、白味がかかってたような気もするし」

「正解ですわ」


 なるほど、簡単だ。

 ソラさんは今来ている服も薄い緑色のワンピースだ。

 時折、着こなしの見事さからか人から目線を向けられている。


「ただ、美怜さんの場合、ウィンターも似合うんですよね。

 白いからこそ、着ている色がくっきり出るのが悩みで悩みで。

 黒とか白とかも行けるのは羨ましいですわね」

「今来ているのも白いワンピースだもんね……」


 いつもの一張羅だ。

 シンプルかつ清廉された逸品だ。


「それに水着も大人な感じの方が可愛いのより似合うと思うんですよね。

 美怜さんは顔立ちこそ、幼い感じがありますが……」


 幼い……事実だけにぐさっ、ちょっと心に刺さった。

 ソラさんの表情を観ると悩んでおり、


「可愛いより清純さなんですよね、私のイメージでは」


 清純……全く言いなれていない言葉だ。

 望からも出たことが無い。


「例えば、リクなんかだと可愛いが当てはまりますよね?」

「間違いないんだよ」


 ソラさんの言葉で頭に浮かぶ私達の妹。

 金髪、黄色人系、ロリで基本的にもみ上げをらせん状にして、後ろはツインテール。

 顔立ちも中学生らしく幼く、時折見せる大人な色香は有る物の、総じて可愛いと思う。

 なついてくれる姿もそれこそ愛くるしい。


「美怜さんの場合は、飾り付けた符号的な可愛らしさよりもですね……。

 そう、居るだけである存在感、芯、美しさというモノを強調すべき何だと思いますわ。

 つまり素材で勝負」

「……何かソラさんにそう言われると、何だかこそばゆい感じがします」


 目立つのは確かだ。

 アルビノの容姿は、人目を引く。

 だからこそ、呪いで嫌いだったし、望のお陰で自身のギフトであると受け入れている。


「つまり、無地あるいはフチのラインに一色あるだけのビキニとかいいと思うんですよね」

「……はぃ?」


 ちょっと、私の思考が止まった。

 油断していたらしい。

 ソラさんも望の同類で突拍子の無い事を始めることがある。


「大きな胸を強調しつつ、色を活かしつつ、飾らない!

 ビキニ以外の選択肢は無いかと!」

「ソラさんソラさん、周りから注目が!」

「は! ソラとしたことが熱くなりすぎましたわ……」


 と言いつつ、頭を下げてくれる。


「というわけでこういう、バンドゥビキニとかがお勧めですわね」


 ビキニというモノの腋周りへも一周している感じだ。

 むしろ昔していたサラシに近い。

 しかし、よく見れば、


「胸元空いてるよね、これ……」

「その見事な谷間を強調すべきかと」

 

 セクハラされている気分とはこういうのだろうか。

 ソラさんに怒りではないが、やるせなさが沸いてくる。


「ソラには無いので……」

「……あー」


 と言われ、悲し気にソラさんが両手をあてる胸元へ視線。

 小牧さんのようにまな板だったり、ペタンとまで言わないが、慎ましい。


「望君を悩殺出来ない……!」

「代わりに私で悩殺させる気ですか!

 見せる相手、望だけですよ⁈」

「いえ、これは美怜さんを着飾るのが楽しいだけです。

 というわけで、これもこれもこれも試してみましょう!

 ビキニの定番、三角ビキニも良さそうですわ!」


 ソラさんが嬉しそうに私を試着室に服と一緒に押し込めた。

 勢いで押し切られてしまった感じがあるが悪い気分ではなく、むしろ楽しんでいる自分が居た。

 女性の友達付き合いというのはこういうモノだろうと、青春に思えたからだ。

 

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