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4-13.非日常:私服の星川さん。

〇美怜〇


「あれ、美怜さんと九条さんじゃないですかー。

 こんなところで、どうしたんですか?」


 っと、驚きながらボックス席に移動してきて、私の隣に座る。


「こっちは晩御飯です。

 リクちゃんは?」

「林間学校です。

 ついていくにもついていけなくて。

 やけ酒を……って酒量に制限あるんでそこまで飲めないんですけどねー」


 っと運ばれてきたのはグラスビールが一杯だけだ。


「……というわけで久しぶりのお仕事なしの休日ですねー。

 旦那様からも休めと言われてるので」

「星川さん、休日ってあるんですか?」

「三百六十五日二十四時間、リクお嬢様を見守ってればそれは休日も同然……!

 最近、旦那様の仕事もあるのでそれは苦痛で仕方ありませんがねー」


 休日という概念がそもそもに狂っていることを自白する星川さん。

 

「彼氏とかは……?」

「リクお嬢様と言いたいところですが、流石にそれは恐れ多いので無いです。

 いませんよー?

 こんな傷物女なんて好いてくれる人なんて居ませんから」


 っと、笑う。


「傷……火傷の件ですか?

 化粧で隠しているの、そうですよね?」

「……鋭いですね」


 っと、サングラスの奥底の眼の動きが私を捉えたのが感じ取れた。

 感情的には……警戒?


「あ、すいません。

 プライバシーでしたね」


 ともあれ、謝る。

 すると、星川さんは笑う仕草で手を横に振りながら、


「構いませんよー。

 隠しているのは、リクお嬢様の執事としてふさわしい姿であるべきだとやっているだけですので」


 っと警戒を解いてくれる。


「体中火傷だらけで、女性としての機能は生きているモノのそれだけです。

 いっそ全部無くなってしまっていたらとも思いますがね。

 人並みの欲は消えてませんし、月のモノも来ますからねー」


 何と答えていいのか、重い。


「ふむ。

 六道氏にも言われていたね。

 男日照りの星川氏なら紹介すると言われてしまったよ」


 いつも通りのデリカシーの欠片もない望の言葉が飛んだ。

 ただ、本気は感じられない、ヤレヤレという感じでだ。


「おっと暗い話でしたね、すいません。

 気を使わせてしまいましたね」


 っと、望が道化を演じた理由を汲んでくれる。

 リクちゃんさえ絡まなければだが星川さんは大人なのだ。

 周りの大人がどうかしている人が多いのが問題な気もするが。


「ともあれ、九条さんが相手してくれるんですか-?

 サービスはしますが、三十路のおばさんで傷物ですよー?

 奇麗に隠してますし、顔は無事だったんですけどねー」


 っと言いながら、首後ろの化粧を紙ナプキンで擦って剥がす。

 すると焼けただれた跡がくっきり浮かび上がってくる。


「あんまり歳とか外見とかは気にしないのだがね?

 傷の部分は敏感だとも言うし、それはそれで楽しめるかもしれないね?

 ともあれ前提として、リク君からの評価がガタ落ちするのを君がする訳ないだろう?」

「うーん、私を理由に断らせようとしたんですが……。

 主を理由に断らせてしまったら、リクお嬢様が悪いみたいじゃないですか。

 ムムムー」

「何がムムムだ」


 望がバッサリと切ると、星川さんが笑みを浮かべ、


「女性としてはありがとうといっておきますよー」


 望が不意を突かれたらしく、固まった。

 何だろう、見惚れたとかじゃないのだが、変な感情が読み込める。

 とりあえず、机の下で足を踏んで再起動させておく。


「そういえば、星川氏はリク君に拾われる前の記憶が無いと聞いたが」

「そうですねー。

 最初の記憶は、リクお嬢様の小さい手。

 星川はそこで生まれたんです。

 三十路というのも、恐らくですし、リク様に拾われた時と同年、二十歳で戸籍を取りましたので」


 と、星川さんは感慨深さと思い出し笑いをさせながら言う。


「九条さん、いや、あなたも九条さんですね。

 つむぎさんの方が何やら知っているようですが。

 まぁ、興味もありませんのでお気遣いなく」

「まぁ、過去よりも現代なのは確かだね。

 所で一つだけ聞きたい」

「なんでしょーか」

「貴方は僕と何処かで会っていないか?

 僕も既視感か何かを覚えただけだと思うが、リク君の護衛として初めて見る以前に」


 望にしては珍しい根拠のない、確認だ。


「ありませんね。

 少なくとも、星川としての約十年間では間違いなくですねー。

 九条と鳳凰寺の仲の悪さは知っていた通りで交流もありませんでしたし」


 それは迷いのない即答だった。


「ありがとう、星川氏。

 変なことを聞いた」

「いえいえ。

 これぐらいで礼を言われることでも無いですし、もしお礼があるならリクお嬢様へ」


 っと何でもないことの様に言う。

 

「所で、リク君が帰ってくるまで暇だったら手伝ってほしいことがあるのだが」

「いいですよー。

 リクお嬢様のいないお屋敷でゴロゴロしていると、他の人に悪いですしねー。

 で、内容は?」


 そして望が祭りでの出し物の話を終えると、


「成程、で星川には何をして欲しいのですか?」

「美怜をモデルにしてあるものを作るための資料として写真やデータを取って欲しい。

 既存の写真を流用するよりも出来が良くなるだろうし」

「適任ですね。

 データはリクお嬢様にお渡ししても?」

「美怜?」

「いいよ、リクちゃんなら」


 それならばと、星川さんは快く了承してくれた。 





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