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4-10.日常:委員会活動

〇美怜〇


 委員会会議。

 望は隣に居るが、面白そうに議長の話を聞いている。

 基本的に委員会では大人しい。


「さて、来週のちゃった祭りへ。

 学校スペースに委員会から昼のイベントに有志数人に参加してもらいたい訳だが」


 ちゃった祭り。

 舞鶴で行われる一年に一度の大きなお祭りだ。

 とはいえ、私は家からしか花火を観たことがない。

 人混みは苦手だし、ワザワザ変装をするのが大変なので当然ともいえる。

 今年は……どうしよう。


「九条ー、参加してくれないか?

 舞鶴に住んでいるし、参加しやすいだろう。

 また、顔役としては十分だ」

「ふむ」


 望が一旦、考えるような仕草をする。

 私を一瞥し、会長を観る。

 会長、委員会会長兼生徒会長の男性だ。


「美怜に関しては?」

「アルビノの件があるから無理にとは言わないが。

 目立つし、出来ればやってもらいたい」


 まぁ、目立つよね、私。

 望もそうだが、アルビノの容姿は普通とは一線を画す。

 髪、肌、そして眼の色すら他の人と違う。

 昔はそれで悩んだものだ。


「内容は先ほど、お聞きした感じでは学校説明をする場所とのことですね?」


 望の口調は先輩相手とは思えない、丁寧ではあるが謙譲も尊敬もしてない言葉回しである。

 よくもまぁ、と思うが、いつもの望である。


「そうだ」

「学校からノルマとかあるんですよね?

 委員会活動への資金の増減がかかっている。

 あと、会長ご自身の推薦に絡むとか」

「……よく知っているね」

「ノルマの数値をお聞きしても?」

「二百人だ」


 一般生徒の私には良く判らない話だ。

 さておき、受けた望は考える素振りを見せ、


「貸し三つで倍にしてみせますよ?

 会長の部活にご協力頂ければですが」


 望が言って見せた。

 出来ないことは基本言わない望だ。

 自信満々に腕を組んでいる。


「……」


 今度は会長が考え、望を一瞥する。

 そしてポンと柏手かしわでを叩き、


「乗った」

「契約成立だ」


 会議が終わり、望は会長と話を詰めると言って、二人で話している。

 私はそんな様子を観てはいるが、話の内容が難しくて理解出来ず脱落している。

 望曰く、私の理解力・洞察力はずば抜けているそうだが、自覚は無い。

 専門用語とか知識とかが入ってくると理解出来なくなってしまう。


「妹ちゃんも大変ね、あんな兄を持つと」


 っと声を掛けてくるのは、委員会の副会長だ。三年生だ。

 こんな風に私が一人で居ると時折、声を掛けてくれる。

 他の人は何だか、私に声を掛けづらいらしい。

 望の事とか、私の得意な容姿とかで。

 さておき、


「いえいえ、いつもの事ですから。

 それに悪意は無いって判って貰えれば、望は素直です。

 邪気はたまにありますが」

「邪気ねぇ……」


 副会長が視線を打ち合わせている会長と望に向ける。


「予算はこんなもんで……」

「いやいや、それだとちょっと……」

「ここの生徒会の経費をちょっとこうやれば、帳簿的にも問題ないかと……」

「むむ、逆にここの機材を部活から出せば」

「そっちの方がいいですね……。

 ならその費用の分、こうして……」


 望の笑顔から邪気がこぼれ出ていた。

 何か企んでいる顔だ。

 唯莉さんといい、望といい、基本的に企むのが好きだ。

 いつか、クフフと笑わないか不安である。


「九条さん、優秀よねー。

 生徒会にも入ればいいのに」

「興味が無い、そうです。

 そもそもクラス委員長してるのも別の理由からですし」

「別の?」

「私を委員長にするためです」


 言うと怪訝な顔をされる。

 説明すると長い訳で、端的に言えば、


「私を高校デビューさせるための保護者的な役目なんです」

「噂通りのシスコンてな訳ね。

 最初、二年では……今でいう三年では、鳳凰寺さんあたりが来るって思ってたからね。

「当然、そう思いますよね。

 ソラさん優秀ですし、いい人ですし、行動力抜群ですし……」


 言ってて気が重くなる。

 私は未だに試験以外では勝てていない。

 リクちゃんに言ってる手前もあって頑張ってはいるが、女性としてはまだまだ壁が高い。


「妹ちゃんも鳳凰寺さんに勝つぐらいには優秀じゃないの。

 全校一位。

 それに誰にも負けないくらい可愛いし」

「そ、そんなことないですよ」


 というモノの嬉しくなってしまう。

 恥ずかしがらなくなったのは成長なのだろう。

 素直に他人の言葉を受け入れられるようになったのは望のお陰だ。


「目端も整ってるし、ほっぺたつつくと気持ちよさそうだし、髪も肌白いし……って言うと、これ差別になるのかな。

 ごめんね?」

「いえ、気にしてません。

 望には、それを呪いにするのも、ギフトにするのも自分次第だと。

 ギフトと考えるようにしてますので」

「強いね、妹ちゃんは」


 そう言われてもピンとこない。

 私は望が居るから強いのであって、自身はまだまだだと思う。


「美怜、お祭りの手伝いをしてくれ」

「ん、いいよー」


 どうやら話が終わったらしい。

 

「でも、当日に私、流石に昼間ずっと出っ放しは嫌だよ?

 肌が丸焼けチキンになって痛いし」


 死にかけたことがあるので、これは切実だ。

 アルビノの弱点、私はまだマシな方とはいえ、あまり長時間外に居るのは推奨されない。

 特に紫外線除けが汗や水で剥がれてしまう夏は。


「当日は、美怜に仕事をさせない。

 本番はそれまでだ」

「……?」


 何を企んでいるのか、望の意図が読めなかった。

 望の意図を読もうとすると、時折、ブロックがかかることがある。

 知識的なものが不足しているのか、トレースしきれないのだ。

 ただ、悪い事にはならないだろうという、ことだけは判った。


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