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4-7.日常:こんな風に物事が決まる。

〇望〇


「ソラもデートしたいですわ」


 と、返ってくることまでは予想内である。


「それと美怜さんともしたいですわね」

「ぇ、女の子同士だよ」

「いいじゃないですか、ショッピング!

 美怜さんをコーディネート!

 萌えますわね!

 燃えますわね!」


 それも予想内ではあるが、どうかと思う。

 この前のキスの件もあるが、割と僕の許嫁は頭がおかしい気がする。


「あはは……。

 いいよ、ソラさん。

 今度、何処かいこう?」

「!」


 ソラ君の顔にヒマワリが咲くように輝く。

 ゲジ眉も跳ね上がり、嬉しそうだ。

 

「といっても、舞鶴からですと遠くても京都市内ですわね。

 神戸も同じくらいの距離ですが地理感も馴染みのお店もございますので。

 市内の量販店に行ったことないので、そこに行くのもありですが」


 それ以外ないとも言う。

 ちなみに福知山も敦賀も田舎だ。

 なお、金沢は電車で四時間、車で三時間かかる。


「とはいえ、女の子同士の買い物は初めてですからね、ふふふ」

「私もだよ。

 ……というか、ここに居る四人はここまで暗い青春な気がするんだよ」

「否定でけへん……」


 頭を抱える小牧君を尻目に、僕も笑いながら「そうだね」と頷く。

 事実なので否定しようがない。


「あれ俺は?」

「霞さんは何だかんだリア充っぽいし……。

 デートもしてるし、野球部だし、陽キャだし。

 ソラさんが他の女子と買い物とかにいかなかったのは意外だったかな」

「一歩引かれてましたので」


 高嶺の花という言葉が浮かぶ。

 ソラ君が舞鶴市内の商店街で買い物をしている姿は浮かばない。


「あ、私、リクちゃんと買い物したことある。

 晩御飯とかの買い物もしたし、リクちゃんの部屋着や寝間着もゴザールで買ったんだよ」

「リク……あの子は色々と初めてを奪っていく……!」


 ソラ君が奥歯をギリリと噛みしめ、握り拳をぎゅっと作る。


「リクちゃんとは買い物行かないの?」

「……行きませんわね。

 服のセンスが違うので、行きつけも違いますし。

 それに星川がついていますので」


 なお、星川氏は私服を観たことが無い。

 火傷を隠しているのもあるのだろうが、スーツ姿である。

 その分、写真のためにリク君のことを本気でコーディネートする気がする。

 

「そしたらソラ君、美怜のことを頼めるかね?

 美怜にも青春という奴を味わってもらいたい」

「はい、承りました。

 それで、ソラと望君のデートは何処に行きますか?」

「そんな話は決定してないだろう……」


 とはいえ、邪険には出来ない。


「まぁ、ソラ君が今度はコーディネートしてくれ」

「……はい♪」


 悲し気な表情から一変、嬉しさで笑顔が花開いた。

 意地悪をする僕にコロコロ変わるソラ君。

 なんというか、いつもの僕らである。


「むー、望、私とのデートが先だよ?」


 逆に美怜が不機嫌だ。

 フンスフンス、兎みたいに怒っている。

 可愛いなぁ、と思いながら頭にポンと手を置き、撫でる。


「ご、誤魔化されないんだよ!」


 と言いつつ、笑顔になってくれる美怜。

 チョロすぎないかと不安に思うが、可愛い。


「それで美怜とデートする場所を悩んでいてだね?」

「お前、時折凄いよな。

 許嫁の前かつ、家族とのデートを堂々と言い放てるんだから」

「もっと褒めてくれていいぞ、水戸」


 水戸がげんなりした表情で僕を観る。

 

「海は……平沼ちゃんがダメそうだな」

「水着姿浮かべなくて、助かったわね?」


 小牧君にそう言われ、青筋が浮かぶ水戸。

 コホンと彼は落ち着きを取り戻し、続ける。


「寺社仏閣への興味度は?」

「私はあんまり興味ないんだよ。

 でも、金閣寺とか、清水寺とかは実物をみたくもなるんだよ」


 あんまり寺社仏閣に興味が無い人でも見に行きたくなるという場所は有る物だ。

 例えば、美怜のあげた二か所に加え、銀閣寺とか、稲荷大社とか、上下の鴨神社とか。


「昔はレジャーランドみたいなモノだったからね。

 何かしら見どころがあったり、恋愛とか現代利益を謳ったりしたわけだ」

「確かに金閣寺なら金ぴかのお堂、清水は飛び降りる台、稲荷大社なら千本鳥居だなー。

 あと、縁きり神社とかは利益だし

 ミナモは詳しかったよな、そこら辺」

「占いしとるからなー。

 とはいえ、デートするような場所ではないと思うんよ。

 変なもん、たまに見えるし……」

「あー、そういうの出やすいっていうよね。

 心霊写真」

「人が集まるところには出やすいという奴かもしれないね?」


 そういう俗説はよくある。

 まぁ、光の加減で他の人が移っていたり可能性が高いとも言うが。


「そういったところを外した京都なら、

 京都タワー、漫画ミュージアム、鉄道博物館、植物園、河原町、祇園……ぐらいだな」

「京都タワーはパッとしないイメージしかないんだがね。

 どちらかというと、地下浴場がメインな気がするね?」


 高速バスを使う人が入っているイメージが強い。

 考えていると水戸から、


「天橋立とかはどーなん?」


 想定外の場所が飛んできた。

 宮津にある日本三景の一つだ。他は松島と宮島。


「そういえば、私行ったことないんだよ」

「平沼っちは小学生の遠足は休んでたからなー」

「あー」


 ともあれ、近いのは確かだ。

 調べてみると隣町の宮津から船で入れることも確認が出来る。


「天橋立は温泉地でもあるのか……。 

 『神々の遊び湯』、何というかインパクトはあるね?」

「丹後半島、そういうの多いからなー。

 鬼やら、天女の話とか。

 後は旧伊勢があちらかしこにあるわけで」

「せやな……」


 と、小牧君が微妙な顔をする。

 永年小学生の顔がクフフと浮かんだのかもしれないと思うと納得できた。

 あれは現代の酒呑童子で確かに鬼のたぐいだ。

 しばらくは病院に封印されているので安心は出来るが、いっそそのままの方が精神的には楽だね。


「確かに悪くない選択肢だ。

 僕も実物は見たことが無い」

 

 行き先の方向性は決まった。

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