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3-40.親二人の結婚式。

〇美怜〇


 血の件で色々あったモノの、学校の体育館で結婚式が始まった。

 望、ソラさん、六道さんが、三人で企んでいた計画だ。

 参列者は少ない。

 私、望、ソラさん、リクちゃん、小牧さん、星川さん、六道さんだ。

 他に黒服の方々が二十名ほど居るが、参列というか給仕であろう。


「おいしいですね-、リクお嬢様」

「ソラ姉様が作ったのもありますの。

 く……やはり、女は料理もできないとだめですの?」


 というか、星川さん、給仕側に回らなくていいんですかね?

 参列者に紛れて、ムシャムシャと立食の御馳走を食べ始めている。

 黒服の人たちから働けよという目線が突き刺さっている気がする。


「新郎新婦の準備が整ったようなので、始めようか」


 右手にギブスをしたままの望が、ポケットから取り出したマイクを持って檀上に飛び乗った。


「後ろに注目だ。

 さて、新郎、新婦が仲良く入場だ!」


 と、良く結婚式のドラマでなる音楽がなり、入口が開かれる。

 お父さんは黒いタキシード。

 唯莉さんは白いウェディングドレスだ。

 レースの花が所々、あしらわれており、可愛さを強調されている。

 ただ、背の差もあって、


「くくく、まるで親子みたいじゃの」


 流石の唯莉さんもドレス姿でとびかかるわけにはいかないらしい。

 酒のせいか顔を赤らめている六道氏をにらみつけるだけだ。

 さておき、


「唯莉さん、奇麗ですね」

「私が作りましたから。

 着ていただいている美怜さんのドレスに合わせてデザインしましたわ。

 ふふふ、ソラ特製ですわ!」


 私のドレスは赤だ。

 確かにレースで花、バラだろうか? を彩られている。

 最初に着た時は、役者不足だと思ったモノだが、ここに来る前に、


「よく似合っているから安心したまえ」

「誕生日プレゼントですので、返品は不可能ですわよ?」

「お姉ちゃんとお揃いですのー!」


 と望とソラさんとリクちゃんに言われ、折角なのでとこれで式に出ている。

 リクちゃんともお揃いの赤。

 三着ともソラさんがデザインしたそうだ。

 本人のも瞳の色に合わせたエメラルドグリーンベースで同型だ。

 聞いてみたら、折角なので自分のも作りましたとか言われた。

 この人、多才すぎる気がするし、行動力がありすぎる気がする。


「私も平沼っちみたいな奇麗なドレスがよかった……」

「すみません、小牧さん分には流石に用意が無くて」


 不満を漏らす小牧さんは眼鏡と三つ編みは戻したが、胴着のままだ。

 帰ろうとしたところをソラさんに止められ、渋々参加している。


「なら、この前の貸しをチャラにしといて」

「それで良ければ、はい」


 唯莉さんと相対した同士やら、何だかんだあったからか、二人の親密度が上がっている気がする。

 悪い事ではない。


「さて、色々すっ飛ばして、指輪の交換と行きましょうか。

 というかだね、既に色々吹っ飛ばしてるし。

 神前でも何でも無いし、各自の予定もあるだろうからね?」

「ちょっとまつんじゃ、小僧。

 ワシのスピーチを!」

「そんな予定は聞いていないので省略だね?」

「御父様、三十分ぐらいのスピーチを延々と練習してましたの。

 そんなのは却下ですの。

 星川!」

「はいはい、無駄かつ参加者をイライラさせるスピーチはボッシュートですよー!」


 リクちゃんも親指を立てて、星川さんにゴーサインを送っている。

 ただ星川さん、スタンガンは良いのだろうか……?


「さて、うるさい、ご友人は沈黙しましたので。

 指輪の交換だね。

 指輪が無い?

 そこは抜かりない」


 望の手には二つの黒い小さな箱が。


「代金は後でお支払いください。

 ローンも可」

「用意周到じゃないか……!」

「主犯は六道氏ですがね?」

「く、逆だな?

 お前こそが主犯か⁈」

「よく踊って頂けましたね?

 僕としてはあなたの狼狽ぶりを観て、

 唯莉さんの惨敗ぶりを観て、

 六道氏もあなたに打ち負かされるのを観て、

 大満足ですがね?」

「後で見てろよ、望」

「式はちゃんと見させていただきますよ。

 特等席からたっぷりと」


 お父さんの口がバッテンになる。

 逆に指輪を渡す望は黒い笑みを浮かべていた。


「おっと、誓いの言葉を忘れてましたね?

 今更感があると思うがね?

 はい、新郎のつむぎ氏、あなたは唯莉氏を永遠に愛しますか?」

「……死ぬまでは。

 死んだら悠莉に懇願して、一緒に楽しむ」

「はい、最低な言葉ですね。

 美怜はこんな大人にひっかからないように」

「お父さんみたいなダメ男には引っかからないから安心して」


 言い返すと、周りから笑いが上がる。


「はい、気を取り直して、新婦の唯莉氏。

 あなたは紬氏を永遠に愛しますか」

「……はぁ、マイクよこしぃ」


 望がマイクを渡すと、唯莉さんは大きく深呼吸。


「ゆり姉。

 見取るか?

 あんたの好きだった人は唯莉さんのになった、悔しかったら出てきいや!」


 そして肩を震わせる。


「ほんま、出てこんかったら貰てまうで、ええんか?」


 この期に及んで及び腰のようだ。

 望がヤレヤレと嘆息する。

 いい加減、呆れているらしい。


「美怜、頼んだ。

 僕よりもよっぽど響くだろう」

「了解だよ。

 唯莉さん」


 言ってやる。

 きっと私は今、赤い眼だ。

 

「いい加減長い。

 お母さんは、お父さんに唯莉さんを頼むってそう言ったよ。

 だから、さっさと誓って?」

「……」


 唯莉さんが私を観る。

 ため息を一つ。

 深呼吸し、マイクを望に投げる。


つむぎ、ちょい動かんでな?」


 そしてお父さんに抱き着き、持ち前の力技で首元に抱き着き、唇を唇に当てて、離れる。

 首に取りついたまま、唯莉さんは皆の方を向き、


「誓う。

 唯莉さんは美怜ちゃんや望の母親になって、子供も産んで、ゆり姉を超える!

 死んでそっち行ったら悔し涙ながさせたるわ!」

 

 言い切った。

 嬉しくなった私は拍手。

 すると望が拍手し、リクちゃんもソラさんも、そして全員に伝播した。


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