表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
110/199

3-5.僕のだと宣言す。

〇望〇


「ぇっと、街で聞いたんよ」


 苦しそうな反応は嘘だ。

 人は基本、とっさに嘘や自分に自信が無いことを言う際に目が泳いだりする。

 それが今まさに行われた。


「本当かね?」


 何処かで知ったのは間違いない。

 問い詰めるべきか悩むが、やはり問い詰めることにする。

 鳳凰寺家の件もあり、お父さんも唯莉ゆいりさんも僕にあえて言っていないことがあるのは明白だ。

 小牧・ミナモという人物は、美怜の友達であるという前情報があった。

 ただ、それだけだ。

 格闘技をやっていることまでは調べてあるが、その親の背景までは調べていない。

 ソラ君の件でワザと僕に渡していない情報、特に世代の情報は留意すべき点があることは明白だ。

 心に構えを作る。


「あー、それな。

 何だか、街の中で少女が叫んでて痴情のもつれがどうとかなんとかでさ。

 望と鳳凰寺、許嫁になったとかいう噂があるんだわ。

 ミナモもそれを何処かで聞いたんじゃないか?」

「うん、そうや」


 っと、起き上がる水戸から事実が提示された、小牧君が頷いた。

 これ以上、追及すべきか悩む。

 しかし、事実があり、それを伝聞で聞いただけなら自信の無さでの反応もあり得る。

 だが、僕は嘘だと確信している。

 一旦保留して、別の角度から衝撃を与えることにする。


「ちょっと、ソラ君、体を借りる」

「はい?」


 ソラ君の顔にはてなマークが浮かぶが、無視してお姫様抱っこしながら立ち上がる。


「ぇ、あ、はい⁈」


 顔を真っ赤にし慌てるソラ君は珍しい。

 僕がいつも慌てさせられてるので新鮮で、やり返した感が強くなる。

 それでも僕に暴れずしがみついてくれるのでありがたい。


「紹介しよう、僕の許嫁。

 鳳凰寺・ソラ君だ。

 叫んだ少女は恐らくソラ君の妹だろう」

「「……え?」」


 ――ぇ?


 クラス中が静まり返った。

 

「話が飛びすぎだろ、お前ら!」

「全てが想定内で収まるとは限らないという事だね?」


 自戒込みだ。

 想定外の結果だからね、これ自体は。

 ざわざわとクラスの話題が集まる。

 推測だろうが、いくつかの点であっているのは興味深い。


「と言う訳で、ソラ君は僕のだ」


 断言してやった。


「ぇ、委員長、シスコンでしょ?」「いや、確かに付き合っているのは確かだったが」「カモフラージュの筈では?」「妹ちゃんと結婚出来ないから隠れ蓑とか」「家に殴りこんだとか聞いたわよ?」「警備相手に無双したらしい」「強行突破して父親に向かって、啖呵を切ったらしいわ」「ひえ、怖い人が出入りする鳳凰寺家だろ」「命知らずというか、男気があるというか」「カッコいい」「なにそれ怖い、強盗殺しの小牧じゃないんだぞ?」「なにそれ、そっちも興味ある」「やっぱりきちんと宣言してくれるとか、憧れる」「濡れる」「トップネタよ、トップねた!」


 観客が爆発したような騒ぎになった。

 クラス中どころか、廊下からもどんどん人が集まってくる。


「望君……」


 皆から向けられる好奇の目線。

 目頭を潤ませて僕を捉えるソラ君の視線が胸元から。

 心地よい。

 噂されるのも良いのだが、ある程度情報に指向性を与えておいた方が良いと考えたからだ。

 コントロール出来ない情報は時に面倒になる。

 ただ一人からは殺気。

 美怜が赤い目をし、口を尖らせていた。

 嫉妬深い兎も可愛いと思う。


「ちなみにだ!」


 だからと言う訳ではないが続ける。

 その爆音の中でも僕の声は皆に響く。

 皆が一瞬で静まり返った。


「後、シスコンは治ってないから、安心したまえ。

 美怜も僕のだ。

 ラブレターなんざ入れたら……わかるね?」

「えへへー、のぞむー」


 周りの有象無象に視線を向けるとヒイっと、クモの子を散らすように逃げていく。

 美怜だけは嬉しそうに抱き着いてくる。


「と言う訳だ」


 ソラ君を椅子に座らせて、美怜の頭を撫でる。

 美怜のくすぐったそうに身震いをする仕草は兎を思わせ、ほんわかする。


「どう言う訳だよ!

 鳳凰寺の下り、あんだけの啖呵を切ったのは最高だったよ!

 普通、あんなの言えねえよ!

 でもな、その次にすぐいつも通り以上のシスコン発言をするんじゃねぇ!

 二股じゃない点が凄くギリギリのラインだな!」

「どっちも最高ではないかね?

 ちゃんと僕は二人について、正々堂々と述べた」

「いやまぁ、そうなんだが」

「倫理的にも問題ないだろう?

 当然、美怜に引っ付く悪い虫を除去するというのも僕の役目だしね!」


 水戸が頭を抱える。

 常人には理解が難しいのかもしれない。

 さておき、


「小牧君が知っているのは唯莉さん辺りと繋がっているのかと思ってちょっと警戒した。

 あの人苦手なんでね?」

「唯莉さんならまぁ、警戒して当然やわ。

 あの人、私もよう知っとるから。

 平沼っちと友達になった後、私もよくしてもろたから」

 

 小牧君はそう言い、同意をしてくれる。

 でも、笑い方が下手だね、小牧君。

 笑顔が安堵に染まっていて、誤魔化せたと言っているようなものだ。

 

「小牧さん?

 何か誤魔化してない?」


 美怜が赤い目で小牧君に食い入るように近づき、喰いついた。


「イヤ何も?」

「小牧さん?」


 洞察力を持って、周りを騙し続けていた美怜だ。

 小牧君には詰め寄る美怜は初めてなのか、どうしたらいいか戸惑いが見える。


「あー、唯莉さん、ごめんなさいアカンわ」


 万歳をあげて降参を示す。


「唯莉さんから聞いてたんや」

「小牧さんの道場だね?

 しかも、今日、朝かな?

 いつもと何か違ったもんね?

 首に何かで抑えられた跡が微かにあったし。

 占いの本も忘れている」

「どこぞの少年探偵みたいに大当たりや。

 ホンマに平沼っち?」

「私は私だよ」

 

 そして小牧君を開放する美怜は僕を観て提案してくる。


「望。

 ちょっとお話しに行こ?

 たぶん、何か企んでるだよ」

「あぁ」


 午後は小牧家に殴り込みが決まった。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on


cont_access.php?citi_cont_id=955366064&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ