表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
103/199

2-44.家族キス。

〇望〇


「久しぶりに望と二人きりになるね」

「妹が居なくなって寂しいかい?」


 その背中、ソラ君と並んだその姿を見送り終えた美怜の声色が小さい。


「寂しいよ。

 でもね、リクちゃんにもソラさんにも頑張って欲しいんだよ。

 私ですら、お姉ちゃんと呼んでくれたんだから。

 ソラさんとリクちゃんは仲良くして欲しいんだよ」

「とはいえ、狭い市内だ、スグに会えるさ」

「そうだね」


 寂しそうな美怜の頭を撫でてやる。

 くすぐったそうにしながら僕の胸に頭を預けてくる。

 自分より小さな女の子と仲良くなることも無かったはずだ。

 良い経験となっただろう。


「望は寂しい?」

「どうだろうね。

 僕は割とドライな面がある。

 こうなるだろうとは予想していて心構えも出来ていたからね。

 美怜もそう仕向けただろ?」

「うん。

 でも、やっぱり寂しいんだよ」

「仕方ないさ」


 ただ、


「僕とソラ君がもしも、結婚まで行ったら美怜から見ても本当の妹になるんだがね?」

「そっかー。

 リクちゃんと結婚してもそうだよね」

「その場合、美怜が妹かもしれないがね?」

「お姉ちゃんが良いもん!

 望が弟になればいいんだよ!」


 そう苦笑いを浮かべながら、語尾を強くしてくる。


「ありがと、気が軽くなったんだよ」


 そして、察しの良い美怜は僕の冗談に気付いてくれる。


「美怜は賢いな。

 賢いと言えば、テストの点数、言った通りだったろ?」

「望すごいね。

 私が望のことだけを考えるだけで満点を取るなんて」

「本当にすごいのは君なんだがね?」


 美怜は天才だ。

 リク君の前ではこの真実は邪魔になるので言わなかったが、今回の件で良く理解できた。

 美怜は試験の全回答を理解した上で、少なくともクラス全員の点数を無意識に予想し、的中させるだけの能力がある。

 そうでなければ、全科目平均点なんて離れ業をやってのけることが出来ない。

 だから、今回、僕の点数だけを意識させることで満点《僕と同じ点数》を取らすことが出来た。

 僕ですら難しいその所業ををいとも簡単に行うことが出来る。

 天才であると自覚している僕とも別次元の存在だ。

 家族ながら、恐ろしいと思う。


「さて、お姫様、キスはどうする?」


 報酬の件だ。

 結論、僕とは同点だがソラ君には勝ったのだ。

 美怜は僕に請求する権利がある。


「したいけど、今はいいかな」

「?」

「少し感傷に浸りたいから」


 判る。

 センチメンタルな気分というヤツだ。


「それにいつも朝、望にキスしてるんだもん。

 寝ている間に」

「……は?」


 思考が止まった。

 いつも、とは何だろうか。

 僕の口内を知っていたかのように嘗め回すことが出来た理由がこれかと頭が痛くなった。

 やたら夢の中で、美怜やソラ君に襲われるのだが、これが原因の一端かと、納得できてしまった。


「美怜、あとで正座」


 そういえば色々と問いただす必要がある。

 もしかしたら叱りつける必要もある。

 もしかしたらではない、確実にだ。


「やだもん。

 それを認めてもらうために頑張ったんだもん」


 そっぽを向かれて譲る気が無いぞと示される。

 それだけ、僕の事とのキスに執着していたのだろう。

 心の中が温まると同時にいじわるがしたくなった。


「美怜」

「……何?」


 名前を呼ぶと、渋々とこっちを向いてくれる。

 良い子である。

 良い子にはご褒美を上げなければいけないと、僕は唇同士をぶつけた。

 そして美怜の柔らかい弾力のある唇に跳ね返されるように軽くタッチしただけで離れる。

 美怜は赤い眼が段々と見開き、自分の唇を人差し指で確かめるようになぞる。


「ふむ、こういうのもありだね?」

「の、望!

 き、キスしたよね、今!」

「バードキスというヤツだね?」

「へー、そうなんだ。

 ……って、あんだけキス嫌がってたのに、なんでって聞いてるんだよ!」

「僕からするのが悪いのかい?

 君は自分の都合ばかり押し付ける」


 僕は笑顔を浮かべながら言ってやる。


「家族デートの単語でちょっと考え方が変わったのさ。

 キスなら良いんじゃないかなと、別に減るモノでもないしね?

 君は本当に僕を依存させてくれる」


 美怜とのキスが気持ちよかったというのはある。

 手の件といい、美怜は僕を依存させるための魅力が詰まっている。

 さておき、


「美怜は僕からされるのはイヤかい?」

「……イヤじゃないもん」


 美怜が少し俯き、僕を上目づかいで見てくる。

 白い頬には朱が差し、指でモジモジしながら、恥ずかしそうに、でも微笑んでくれた。


「同点だった報酬としては良いんじゃないかね。

 勝ったら好きな時にキスが出来る。

 それが同点なら、僕が認める時にキス出来る、丁度いい塩梅だね?

 それに僕が許可しないと、美怜はジャンプしてもキスが届かないからね?」

「うー、背が伸びる体操しないと……。

 でも唯莉ゆいりさん見ていると、絶望しかないんだよ。

 お母さんも成長止まってたらしいし」

「あれは色々、規格外だと思うが」


 さておき、


「キスは家の中なら、許可したらしていい。

 僕もする。

 これでいいかい?」


 ある程度のルールを決めようかと思ったが、無粋な気がした。

 僕もしたい時があるだろう。


「うん、いいよ。

 ……じゃぁ、もう一回、お願いしていい?」

「仰せのままに」


 背を屈めて、軽く触れあうだけのキス。

 これだけだというのに、


「えへへー」


 美怜は白百合の花を咲かせ、僕の心を温かくする。

 もっと早く解禁すれば良かったかもしれない。

|ω・`)第二部完! ここまでお読みいただきありがとうございました。


|ω・`)また感想、レビュー、ブクマ、評価して頂いた方には感謝を……!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on


cont_access.php?citi_cont_id=955366064&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ