プロローグ
「ねぇ長谷川くん、お願いだから今日のことはみんなには内緒にしてて…」
そう言って、赤く紅潮させた顔で近づいてくる隣の席の佐々木さん。眼鏡の下にある少し茶色がかった瞳が揺れている。
何が起こったかというと、つい数分前、ホームルームが終わり、委員会に行っている途中で筆箱を忘れたことに気づいた俺はもう一度教室に戻った。それが問題だったのだ。なんと、隣の席の佐々木さんが教室で1人で制服を脱ぎ、下着姿になっていたところを目撃してしまった。…ただの下着姿ではない。真っ白な白い肌にはいくつも縄が巡らされていた。つまり、縛られていたのだ。
教室のドアの隙間からその姿を見ていた俺は、うっかりドアに手が触れ、思わず隠れてしまった。
「誰かそこにいるの…?」
やばい、完全にやばい。やってしまった。
ドアの外で動揺しているうちに、いつの間にか佐々木さんは制服を着て、教室の中からドアの外にいる俺を見ていた。
「あれ?長谷川くんだ。こんなところでなにしてるの?」
っと、今さっきのことがまるで無かったかのように俺に話しかけた。
いや、どう考えてもおかしいだろ。という俺の心の中の言葉は出てこず、ドアの前で唖然として立っていた。すると、いきなり佐々木さんが教室のドアを開け、俺の腕を引っ張り、教室の中へと引きづり込んだ。
「ねぇ長谷川くん、お願いだから今日のことはみんなには内緒にしてて…」
そして、冒頭に戻る。
佐々木さんと言えば、俺の隣の席の女の子で、どんな感じなのかと言うと、髪は肩にかかるぐらい。手は折れそうなほど細くて色も白い。いつもマスクと眼鏡をしていて、はっきり言ってほとんど素顔を見たことがない。しかし、高校に入ってからの入学式で一度だけ見たことがある。とにかく可愛かった。目なんかぱっちり二重で大きかったし鼻筋は通ってて、まるでアニメの中から出てきた女の子みたいだった。
「ちょ、ちょっと待って佐々木さん!いきなりなにしてるの?!」
突然俺を教室の中に引きづり込んだかと思えば、顔を近づけてきた。ほんとに可愛い顔してるなぁ。いや、今はそんなこと思っている場合じゃない。
「なにって、わかるでしょ?契約よ。ペットにはご主人様がいるでしょ?それと同じこと。長谷川くん、私のご主人様になってくれる?」
「いやいやいや、そんなのわかんないって!ていうか、顔が近いんだってぇぇぇ!」
そう、ここから始まったんだ。俺と佐々木さんの歪んだ関係から始まった壮絶なストーリーが。
書いといてなんだけど、佐々木さんって僕の理想の女の子なんだよね。