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36.貴族バトル

国王が鎮座する応接の間、そこには王様と少し遠いけどベルリス王子もいる。それともう一人…誰だろう?城の中ではあまり見たことのない貴族であろう男性がいた。身につけているものはいかにもな装飾品で、己の権力をこれでもかとアピールしているようで個人的にはあまり良いセンスと思えない。



静かな一つの空間を破ったのは父様だった。


「何の用だ」



私の頭の中で?マークが踊った。まさかの自覚なし?それに相手は国王なんですが?

かなり焦った私とは反対に、国王は平然と、そして呆れたように口を開く。


「あれだけの騒ぎを起こしておいて…全くお前というやつは昔から…」


ちょっとした口喧嘩が始まった。父と国王は昔からの幼馴染らしく、いつもこのような状態らしい。


国のトップ達がそれでいいのか…


「仕方ないだろう。我が家の天使が連れ去られたと言うのだぞ。お前はそれでもじっとしていられるというのか」


すいません、父様。それは私のせいです。ですがいい訳になっていません。


「それは…まぁ、そうだな」


国王様もそこは納得するとこじゃないでしょう!!


遠くでベルリス王子が笑いを堪えている姿が見えた。



王家と公爵家とは思えない程和やかな雰囲気に合わない声が上がる。


「最近の公爵様は些か横暴な面が多く見られるようですがこの国の中心となる人物として相応しいと到底思えませんなぁ」


突如嫌味全開でこちらに吐き捨ててきた男。喋り方までTHE・貴族という感じだな。


「誰だお前は」


いや知らないのかい。父様は知っとかなきゃ駄目なんじゃないのだろうか。


「なっ…!私はスーリオ伯爵です!国の財政についての管理を担っている公爵家に最も近い伯爵家の者です。…それより、此度の件…いくらなんでもなんの責任もなしに終わるという事にはできますまい?」



あー、もう既にこいつの狙いが読めた。大方、ウチの後釜狙いってとこだろう。そしてあわよくば宰相の座さえも手にすること。こっちの失態を浮き彫りにして周りの信頼を落とす為にこのようなことを言い始めたんだろうな。


「責任…?一体なんのでしょうか。」


そこで口を開いたのは私や父様ではなくラルさんだった。


「…はい?城内にパニックをもたらし、人々に危害を加えたのですから…」

「確かに多くの方にパニックを招いてしまったのは事実かもしれません。しかし、城内の人物への危害や物品の破損は一切ありません。それにアフターケアも既に済んでいますし、この問題はほぼ解決済みと言っても過言ではありません。」


更に近くへいつのまにか寄っていたベルリス王子も口を開く。


「それに今回の一件で多くの不正者を発見し、逮捕できた。これはむしろ大いなる功績と言っていいだろう」


その言葉に国王様も頷く。


「だから元々、罰するつもりで呼び出したわけではないのだが…」

「でっ、ですが公爵様の近頃の行動は目に余るのではないでしょうか?己の仕事をこなしきれず、そこにいるまだ10にも満たない年齢の子供に仕事を手伝わせているというような話も伺っておりますが?」


「あっ、その事について少しいいでしょうか」

ここに来て、私は初めて声を上げる。


「私と兄様は自分から志願してお手伝いをさせていただいています。それと先程、己の仕事をこなしきれていない、と仰られていましたが…」


「失礼します。レイラ、頼まれた書類をいくつか持ってきたけどこれでいいかい?」


「ありがとうございます兄様。これらを見て頂きたいのですが…父様の執務室に届いていましたが…これは明らかに宰相の仕事の範囲外ですよね?あくまで宰相に送られる書類はまとめたデータや発案の可否や許可と最終チェックを行うことです。にも関わらずこれらは全くまとめられておらず、しかもそれが執務室にある書類の3割から4割を占めていました。しかしそれを私たちが来る前まで、本来の人数の半数以下でこなしていました。…これでもまだ父様の力量が不足していると言い張れるでしょうか」


いつかは国王にも問い合わせようと思っていたところだ。父様達は気づいていただろうけど、周りへ尋ねる時間が無かったんだろう。


「………っ!」

言葉に詰まった様子を見て私は再度口を開く。


「その中にはこのような…財務に関するまとめられていないものも含まれていましたが、何か説明をいただけるでしょうか」


「それは…分配者の間違いだろう。元の量が多いせいで、違和感をかんじなかったんでしょう」


必死に取り繕おうとしているようだが、内心呆れた。間違いで4割も仕事が増えるなど、こちらとしてはたまったもんじゃない。


「フリアン」

「こちらの者でございます」



自分で呼んでおいてなんだけど、突如現れるのは心臓に良くない。ヒッてなったわ。

と、それはおいといてと。


この人が持ってきていた書類に先程のものが混ざっていた。おかしいと思ったんだよね。いくら父様が怖いからってみんなしてあんな逃げるように去っていくなんて。それにやけに人数も多かった。


ちなみに中々口を割ってくれそうに無かったので、「公爵と既に裏の取れている伯爵、どちらにつく方が良いと思う?」とちょっとした相談をしたらすぐに話してくれた。


「…はい。私はスーリオ伯爵や他の方に書類を運んでおりました。すると毎日のように、適当な量の仕事を公爵様へ回せとの指示が下りていました」


「デタラメだ!そんな庶民の女一人の話など、なんの根拠もにもならん!!!」


ヒステリックに叫びを上げる。…どうせ無駄なのにね。


「身分はともかく、確かに一人の証言では信憑性が薄いですね。では、他の方にもしてもらいましょう」


フリアンに連れてきてもらったのだが、それはもう沢山いた。書類のことのみならず、嫌がらせや身分さを利用した暴力など、頼んでもいない証拠品やその他のことまで話してくれた。


国王もドン引きしている。


私も若干引いているが、怒っているのだ。

お忘れかもしれないが、これが原因で私の家族は仲が険悪になり、やがて崩壊。そして私は将来断罪されることになるのだ。…まぁ、原因はそれだけではないだろうけど。


「これは国王様にも飛び火しますよ。いくら直接関わっていないにしても、知らなかったでは済まされないことです。それに父様の過剰分の支払い金額…下手すれば国家予算に関わってきますが」


「うぅむ…そう来るか…」


困る王様と、逆に自慢気な父。ま、まぁいいけれど…

とりあえず罪の露見したスーリオ伯爵や、他の者は騎士団に連れていかれた。


「ですが、私達は王家の信頼を落としたいわけでも、潰れてほしいわけでもありません。なので、別の要求に変えさせて頂きます。」


「…その要求とは?」


「一つは、労働環境の改善。父様のみならず、仕事量に差が出すぎることはあまり頂けません。それに同じ程度の量ならば、余裕が持てる人も出るでしょうし、いざ問題が起きても助け合えます。休暇を取ることだって今までより簡単になるでしょう」


「…はぁ」


「そして二つ目として、宰相の執務室では既に使っているこの草案を全体に通して欲しいのです。これによって効率化できると考えられます」


「そんなことでいいのか…?」


「もちろんある程度多くお金も請求しますが、困っているわけではないので。」


「お前もそれでいいのか…?」


「問題ない。私も既に納得している」


「もう一つよろしいでしょうか。先程捕らえられた方達と少し、お話をさせて頂きたいのですが」

…兄様?なんだかちょっと怖いんですけど?


「同じく私もご相伴に預かりたいのです」

「ああ、それは僕も同じだね」


ラルさんとベルリス王子も賛同する。

二人の目的は多分、弟や妹を追い詰めた者への仕返しだろう。なぜなら、ガイゼル王子やミルがスーリオ伯爵や、他の者を見たときに明らかな怯えを見せたからだ。…ガイゼル王子は後ろの方にいてあんまり分からなかったけど。


じゃあ、兄様は何故?私は特に怯えたところとかはないのに…


「今日は疲れただろうし、レイラは先に帰っていなよ。僕は父様ともう少しだけここにいるからさ」


怖い笑顔の兄様に気圧されて私はフリアンと帰ることにした。



…うん、とりあえず一件落着だろうし、あんまり深く考えなくて良いよね!!


久々に頭すっごい使って疲れたし、そういえばお昼ご飯はあまり食べれなかったし夕飯は何か考えながらフリアンの操る快適な馬車に揺られていた。

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