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26.クラウの秘技

あの後は準備された夕食を食べた。とても和やかな雰囲気で、自分が貴族であることを忘れてしまうようだった。


そう、普通の家族。


病人に気を遣って昔より優しく接してくれるようなこともなく、お行儀が悪ければ注意され、父様が目の前で母様に怒られる。ただ、そんなことが私はとても心地良かった。



………ただし途中で帰ってきた縄で縛られ引きずられてきたボロボロのフィズと不自然な程笑顔のフリアンは見なかったこととする。




最初はどうなることかと思ったけど、無事家族が良好な関係になれて良かった。



現在私は自室のベッドの上に座っている。



「どうした?」



クラウにそう尋ねられる。ちなみにクラウも一緒に食事をしていた。お腹いっぱいになったせいか、もう眠たそうだ。



「いや、ちょっと考え事。もう寝よっか。」



まだ死亡フラグが片付いた訳じゃない。むしろこれから…いや、まだ始まってすらない。


けど、大切に思える家族になれたんだから素直に喜んでもいいよね。



「それじゃ、おやすみ〜。」


「明日こそ自分で起きるんだぞ。」


「努力する〜。」


「またそんなこと言って………おやすみ。」


「うん。」



今を幸せに思えるのは大切な事だ。私は毛布の心地よさの中でそう思い、眠りについたのであった。








次の日




「レイラ、起きろ。もう時間だぞ。」


「あと二時間………」


「よし、いい度胸だ。思い知らせてやる。」




寝ぼけた瞳にクラウの姿が映る。



えーと、手と尻尾に何かもってる……?よく分からないなぁ………



「くらえ!モーニングノイズ!!」



カンカンカァン!!!と、金属の激しくぶつかり合う

ような甲高い音が部屋中に響き渡った。



「………っっっ〜〜〜〜るさぁぁぁあああい!!!」



頭にくる!!マジで無理!朝からキッツイ!!!



「どうだ思い知ったか。これが我が新たな秘技………

対寝坊レイラ専用のモーニングノイズ!!」



クラウは私のお腹の上にちょこんと乗っかりドヤ顔である。可愛いんだけど音が……完全に目覚めましたよ。ええ。



「秘技って…持ってるのフライパンとおたま?なんでそんな古典的な…」


「うむ、我が台所を飛んでいる時にこの二つの武器が偶然にもぶつかってな。耳に入れたくない騒音を奏でたため朝のレイラにと閃いたのだ。」



なんでそういう発想に…まぁ、毎回迷惑かける私が悪いけどさ。


「フライパンとかは勝手にとってきちゃったの?」


「いや?レイラの母と弱い方のメイドは言葉は発していなくとも許可を出してくれたぞ。」



目は口ほどに物を言うにしても、母様、メリル。なんで鳥姿のクラウがフライパンを持ち出すのに疑問を感じないんですか!!




クラウが家に慣れたのはいい事だけど流石に管理が甘すぎるのではないかと思う今日の朝でした。



いや、うん。今までで一番キタよね。もう寝坊したくありません。






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