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22.父の馬謝罪

木々が生い茂った公爵邸の敷地を抜け、過ぎ行く街並み、青い空を眺める。

馬車には初めて乗ったけど思ったより快適だなぁ。



「敷地外への外出は初めてだったか?外は楽しいが、危険なものもあるから気をつけるんだぞ。」


「そうだよレイラ。例えば管理の行き届いていない従魔とかさ。特に気をつけないとだよね。」


「「………」」



さっきから兄様と父様はずっとこんな雰囲気。私とフィズはなにも話さずというか話せず、クラウも寝ている。返事をするのも怖いです。



「……突然、何かに憑かれたかのようだったんだ。いつもは……」


「言い訳?父様は自分の立場を自覚しているんですか?あのことでレイラに、魔獣に、どれだけの被害があったと思ってるんですか!!」


「その……な…」




険悪ムードな馬車は大きく揺れた。その拍子に私の胸元から小さな黄色いふわふわが飛び出してしまった。



「ん………」



なんてタイミング!!!

クラウも寝ぼけて無防備になってたらしい。

間違えて喋ったりしないでよ?


……で、どうするの?この空気……




「お嬢様、それって…魔獣ですか?何故服の中に…」


「レイラの従魔、クラちゃんだってさ。」


「従魔……!?その歳でもう…」



なんだか驚かれた様子です。



「しかもそれは輝し……むぐ。」



なにかを言いかけた父様の口を兄様が塞いだ。喋るなって意思表示ですか?ひど過ぎません?



「サンダーバードの亜種だってさ。レイラが契約出来たとこから見るに劣等種なんだろうね。」



なんだか兄様が父様を睨んでいるように見えるけれど気のせいだろうか。


「それでも凄いんじゃないですか?お嬢様はテイマーの素質があるんですかね?」


「テイマー?」


「いわゆる魔獣使いのことだな。冒険者に多く、共に討伐依頼や採取依頼を受けるのだ。」


「父様は違うのかな。魔獣はいたけれど…」


「私は違う。従魔を従えているだけではテイマーとは言えないからな。…私は従えていたのかさえ分からなかったからな。」


「テイマーは互いの関係を分からせた上でその力を制御し、力を振るう時は際限なく使える者だからね。関係の確立も出来てなければ程遠いのかなぁ。」



「兄様、言い過ぎです。知ってるなら聞かなくてもいいじゃないですか。」



流石の父も凹んでいるようだ。大きな体を縮こませている。


「でもレイラ…」

「いいんだ。ライルの言うことが正しい。自分の魔獣を管理できなかった私が全て悪い。」



それから少し距離を取っている兄様とその後ろの私に頭を下げた。



「レイラ、ライル。すまなかった。私のせいでお前たちを辛い目に合わせた。仕事を終えてきちんとした場所で謝りたかったがここで言わせてもらう。……今後、一切お前たちを同じような目に合わせない。許さなくていい。ただ、もう一度お前たちの父として守るチャンスをくれないだろうか。」



「父様、私は怒ってませんよ。それに問題は止められたのに近付いた私にあります。なので気落ちしないで下さい、できれば笑ってる父様が見たいです。」


「レイラ……ありがとう。」


父様、ずっと気にしていたのかな。それに仕事を頑張ってたのって私たちにしっかりと謝るために終わらせようとしてたのかな?



兄様、父様は私たちのこと、とっても気にしてくれていたみたいですよ。




「…なんで僕にも謝るわけ?」


「さっきお前が言ったように今回の件で魔獣全体の印象を悪くした。お前の目指す夢を邪魔してしまい、それに魔獣の好きなお前は傷ついただろう。本当にすまない。」


「………」



父様の馬車内での謝罪。略して馬謝罪ですかね。

…すみません、ふざけるとこじゃなかったですね。





「…覚えてたんだ。僕の夢。」



呟いた声は私には聞き取れなかった。




「そろそろ着きますよっと。」




フィズの声から少しして馬車が城の前で止まった。


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