18.いってらっしゃいは大切だよね
次の日の朝
「レイラ!もう日が出ているぞ!起きろ!!」
「ん〜……あと……3時間…」
「長すぎるだろうが!!!10分辺りならまだしも…半日終わってしまうぞ!それに早く起きてしなくてはならないことがあるのでは無かったか!?」
「そうだった!!何のために朝早くに目覚ましをかけたって話だよ!」
「それで目が覚めたのは我だがな!!」
私は急いで顔を洗い、着替えをして玄関へ向かった。
クラウは部屋で待っているそうだ。
目標の人物はちょうど家から出るところだった。
「父様!!」
「む…レイラ?何故こんな時間に起きている?」
蒼色の瞳が睨むようにこちらを見る。このしかめっ面がデフォルトのような厳つい大人が私の父、ライズレー・クリスタル。
正直な感想を述べます。
顔、怖!!!!
子供の私が言うのもアレだけど眼力で人を凍らせることができそう。
ちなみに私は母よりでツリ目ではありません。色は父からだけど。見た目は悪役令嬢っぽくはないです。
「おー、本当だ。珍しいですね、どうしましたお嬢様。」
そしてこちらに翠色で優しく笑いかけてくる父とは正反対な柔らかい雰囲気の持ち主である父の従者、フィズ。
…なんだろうこの二極化された空気は。
ってそうじゃなくて要件を言わないと。呆気に取られている場合ではない。
「父様たちをお見送りに来ました。」
すると父は一瞬頭の上に?が出そうな顔をした。
「…それだけか?」
いや、実際そうなんだけど……そんなに怒った顔しなくても…おこっ…て…ないのか?これは。
「あなた、忘れ物よ。あら、レイラ?今日は早起きね。どうしたの?」
多分お弁当の袋を持ってきた母様が私に気づく。
「父様たちのお見送りですよ母様。」
「まあ、偉いわねぇ。ほら、あなた。」
母が父に屈むよう合図する。父は訳も分からず言う通りにする。
行ってこいってことですね!了解しました!!女は度胸!いざ、参る!!
走り寄って父の胸に飛びつく。
「いってらっしゃい父様!」
「………」
父が私を抱き上げて動かなくなった。顔は真顔です。ぶっちゃけちょっと怖いです。
………何事?
「父様?」
へんじがない。ただのしかばねのようだ。
………
マジで息してなくない?ちょっと父?本当の屍になっちゃうよ!?
「ゴホッ!!……ゲホッ…」
父、蘇生した!!
「あ…ああ…行ってくる……」
「「いってらっしゃい」」
父はフラフラした足取りで玄関から出て行く。あっ、父様前見て、そっちは木で………大丈夫かなぁ。
「旦那様は任せといて下さい。お嬢様もお身体には気をつけてくださいね。」
「フィズもいってらっしゃい!」
こちらに笑顔で手を振るとフィズは父様の後を追いかけて行った。
少しの静けさのあと、母様が口を開く。
「父様たちは最近お仕事で疲れていたみたいなのよ。今日はレイラのお陰でいつもよりきっと頑張れるわよ!」
これさぁ…家庭問題で一番深刻なのって父様なんじゃないのかな……
これからどうしようかなと考える私なのであった。
とりあえず家族のいってらっしゃいは大切だよね!!




