17.VSライル・クリスタル
クリスタル家食堂にて
「…あのさぁ、レイラ。」
「なんですか兄様?」
「さっきあれだけ話してまだ足りないの?」
「いや、十分過ぎるほどにお話しを頂きましたよ?」
「じゃあ僕、最初の方になんて言った?」
「えーっと、いつ、どこで、なにをしていたのか説明しろって…」
「ならまだ話していなかったことがあるよね?その頭の上に乗っている生物について説明してくれる?」
「ああ、この子ですか。森で友達になったサンダーバードのクラu……クラちゃんです。」
クラウから名前をできるだけ伏せろとのことなのでこの呼び方にしたのである。
「従魔?レイラが?……ちょっと契約紋を見せて。」
私は手の甲にクラウと契約後に浮かんできた紋様を見せた。ちなみにクラウによって他人から見ると主従契約に見えるようになってるそうです。魔法ってすごいね!
いや、そんな紋様の違いなんか人にわかるわけなくない?
「たしかに契約紋。主従か…。契約は確かみたいだけど一つ聞いていい?その従魔って本当にサンダーバード?」
ちゃんと見分けてるし。流石兄様。流石魔獣オタク。
というかマズくない?完璧なサンダーバードを疑われたよ?
「…何故そうおもったんですかね?」
「羽の並びが不自然で翼の部分は色が濃いし、体が小さ過ぎるよ。」
おうふ。凄い的確に突いてきます。流石魔獣オタクですね。
「あー、アー、幼体だからちょっと変な所があるみたいなんですよね〜。出会った時はかなり弱ってたみたいですし。」
弱ってたのは事実なので全くの嘘という訳ではない。
「いや、幼体なら羽の色は薄いし大きさも平均より8cm程度小さい。弱っていたとしてもおかしい所だらけだよ。まるで下手くそな裁縫で作った体みたいだ。」
グサリ
「というかサンダーバードにしようとして別のものになってしまった失敗作みたいだ。」
もうやめてぇぇぇ!!!
どうすればいいの!?このままでは…
クラウ!ヘルプ!って顔を背けるな!
「それにクラちゃんってもしかして…」
くっ…このままでは……仕方ない。
ここで奥の手を出してしまおう!
「兄様、実はですね。怒られると思って言わなかったんですけど……この子、多分特別な個体なんですよ。」
「特別な?亜種ってことかい?でもそんなの発見されていたっけ?いや、見たことはあるような…そう言われればそんな見た目だったかな?」
ラッキー!!偶然にも兄様の気持ちと変装が一致した!このまま押し切れ!!
「そうなんです。私も見たときびっくりしましたよ。この子、怪我を負っていて少し面倒をみてあげたら懐かれちゃったんです。なので契約も偶然できたというか…」
なんだかクラウが不服そうだが我慢してくれ。もうちょっとだから。
「なるほど。レイラでも契約できたってことは劣等種の部類に入るのかな?それで、その子を家で飼いたいと?」
「その通りです。兄様!」
「うーん。僕は構わないよ。母様は?」
「いいんじゃないの?こんなに可愛い子なんだし。」
「本当ですか!?ありがとうございます!」
「その代わりに後でちゃんと見せてくれる?珍しい種だから気になるし。…あとはまたお話しが必要かもしれないね?」
「ごちそうさまでした!兄様、母様おやすみなさい!!」
私は全速力で自分の部屋へ戻った。
とりあえず変装作戦は成功ね!!
どうよクラウ!!
「……何故、そんなに自信満々な顔ができるんだ?」
レイラは胸を張って、クラウは呆れたようすで笑っていた。
「……」
少年は考える。妹が連れてきたアレが普通のものではないことを……
「今は害意はないみたいだし、余計な手出しはせずに様子見と言った所かな。念の為SSSランク冒険者を探しておくか。うーん、見つかるかな」
でも、とふと思いついたのは先程の妹と頭に乗った生物の姿。
「あの様子だと大丈夫そうではあるなぁ。ホント、兄としては心配だけど、嬉しく思えることかもね。」
自分の夢。成長するたびに無理だと思ってきた目標。
二人を見ているとなんだかすぐ前にあるような気がしたのだった。




