11.ヤツと愚妹
「そうそう、最近僕が育てている子がいるんだけど……」
未だに魔獣トークをしていた二人の元にモタが急いだ様子で走り寄ってくる。
「た、大変だ坊ちゃん!!アイツが檻にいねぇ!!」
「…何の冗談だい?騎士にも依頼して厳重な警備をしていたはずだろう?」
「それが警護の騎士に聞いても突然いなくなったとしか……」
「突然…?幻惑魔法?いや、いくらヤツでもそれだけで抜け出すことはできないだろう。檻から逃げるのだとしたら実体を変えないといけない…だとしたら負った怪我を治す為に幼体化したのか?」
「どうします坊ちゃん。」
「とりあえず第一騎士団を救援に呼んで。幼体化している今なら捕獲もできるかも知れない。以前はSSSランク冒険者が偶然いたから無事だったけれど……」
そこでメリルがある事に気づく。
「…レイラお嬢様は何処にいるのでしょうか?」
「え?」
見渡しても少女の姿は見えなかった。
「…な……な…何をしてるんだあの愚妹!!こんな時にぃぃぃ!!!」
少年の悲痛な叫びが響いた。
「とりあえず私が探してきます!まだそう遠くへは行ってないはずです!」
「はぁ…僕も行くよ。」
呆れ果てながらもライルは思考を巡らす。
(レイラがもしヤツと出会ってしまったらいくら回復力以外の全能力が低下している幼体化の状態でもひとたまりもないだろう。それにヤツの傷が完治してしまったら今度こそこの国は終わる。)
緊張からか軽く息を吐く。
「魔獣でも最強と呼ばれる種族の頂点に立つドラゴンの中でも最上位。その力は神にさえ匹敵する力を持つドラゴン。」
輝神竜 クラウ・ソラス




