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詩集「七夜詩篇」

「悲しいのです」

作者: 詩月 七夜

道端に落ちたせみはね


既に主は地にかえ


取り残された「夏の夢」


羽搏はばいた昔日の蒼穹そら


翅は声無く呟いた


悲しいのです


悲しいのです




降りしきる雪片は無情の美


その中で身動きしない古びた電柱は


背負った歳月に押し潰されそう


老いた木の身体で冬の嵐に打ちひしがれ


言葉をつむがぬその身を嘆き


やがて朽ちるように倒れ伏す


命の綱たる電線が上げるのは


風を切り裂く金切り声


悲しいのです


悲しいのです




明滅する命脈に


か細く繋ぐ呼吸音さいごのあがき


視界は細く霞みゆく


だから囲む人々の顔も見えない


遠くから聞こえる呼び声も


やがては糸のように断ち切れる


囲む皆が口にする


「逝かないで」という餞別に


微笑むしか答えが無い


悲しいのです


悲しいのです




ただ悲しいのです


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― 新着の感想 ―
[良い点] 心がふるえました。 とにかく悲しくなって泣きたくなってしまいました。 分析力がないので、うまく説明できないのですが、詩月様の言葉に同調させてしまう力があるのでしょうね。 [一言] いつ…
[一言] 冬は季節感だけでもさみしさを感じさせますね。 生き物が死に絶える季節、つらい強風が吹く季節。 その悲しさがうまく表現されていると感じました。
[良い点] 蝉の翅から取り残された「夏の夢」へと繋がっていく。 読む人によって、色んな夢がよぎると思います。 電柱の鳴き声、古きものの悲鳴、なんとなく過疎の村を連想しました。 最後の連、これだけは…
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