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わちゃわちゃする私 9

 私とオオガキ君の間に割り込んで来たタダが他クラの女子たちにあっと言う間に囲まれてしまった。

 それをヘラっと指さしながらニコニコして、「すごいね」と口パクで私に言うオオガキ君。うん、と小さくうなずく私。

「で?ユズルちゃん」とオオガキ君。「ユズルちゃんはどれがお勧め?今さぁイズミ君が勝手に包んでくれたけど、ユズルちゃんのお勧めも食べとこうかな」

「私は抹茶が好きかも」

やっぱり私のチケットも上げた方がいいのかな。綿あめのチケットもらったのにどうしよう。

「あ、じゃあさそれ2個買って後で綿あめと一緒に食べようか?あ~~でも甘いもんと甘いもんはキツいかも…」

 一緒に?

 でもそう言いかけたオオガキ君がガツっと前のめりになって私にぶつかりかけ、オオガキ君が片手で私の肩を、そして片手でテーブルを掴んでくれて私たちは体制を崩さずに済んだ。タダがまた売り子になっているのを見て急に入って来た3年生の女子がオオガキ君に思い切りぶつかったのだ。

 「あ、ごめんごめん」とだけオオガキ君に言って、「どれがいちばんおいしい?」と、タダに聞くナイスバディな3年の髪の長い先輩女子。急にタダにたかっていた1年女子が小娘に見える。

 けれど聞かれたタダは、ただでさえあまり持ち合わせていなかった商魂を完全になくしたみたいだった。

「…」

何も答えないタダだ。


 「じゃあイズミ君が焼いたのどれ?」と聞く先輩女子。

おっぱいの大きな先輩。3年だけどたまに見かける事はある。うちの、草食系男子が多い中途半端な進学校では結構目立つ部類のいかつめの男子といたりするから。

 すごいなタダ。こういう先輩女子にも目を付けられてるのか。


 「みんなで焼いたんで」と、ぼっそり答えるタダ。

「え~~~」とごねる先輩。「イズミ君の焼いたのがいいなぁ~~~っていうかさぁ、彼女っぽい子がクラスにいるって聞いたけどどの子?」

うえ~~~!!と思う。いきなり来た。周りのクラスメートが私をチラチラ見るのですぐに先輩にバレる。

「え?この子?え?そうなの?」

目を反らす私。

「へ~~~。あ、そう」と言う先輩。「ふ~~ん。へ~~~。あそう。…ふ~~~ん」

やだな。納得の言葉を吐きながら全く納得していない感じをもろわかりに出す先輩だ。自分に自信があるんだろうな。なにしろおっぱい大きいもんね…悔しいな。


 「イズミ君、こういう子が好きなんだ~~~」

「こういう子?」タダが冷たい口調で聞き返した。

「こういうなんていうかぁ…」と先輩が言いかけたところにしてタダがぶち切れて「あんたここでそういう…」と言いかけるのをオオガキ君が止めてくれた。

「先輩先輩、」オオガキ君が先輩女子に言う。「抹茶がうまいらしいですよ。オレとお揃いで抹茶買っときましょう」

なにこの子、みたいな顔でオオガキ君を一瞬見たが、先輩女子はやはりタダに聞いた。

「抹茶?なんかおばさんくさくない?美味しいの?そうなのぉ?苦くない?ねえイズミ君」と先輩。

やっぱおっぱい大きいなこの先輩。…羨ましい。

 そこへ「100円ですありがとうございま~~~す」と急に大きな声がして、私もオオガキ君もタダも先輩も振り向くとハタナカさんがいた。


 「お買い上げありがとうございま~~~す100円いただきます」と私をぐいっと押しのけて会計係に収まるハタナカさん。「ほら、オオガキも100円」

オオガキ君に手を差し出し100円徴収するハタナカさん。

なにこの子、みたいな顔でハタナカさんを見る先輩女子。そして、なんですかぁ?みたいな顔で見返すハタナカさん。ハタナカさん止めて~~。なんかまた人が多くなって来たし…

 その中しばらく見つめ合って、「いや買うけどさ。あとそれとそれもおいしそうじゃん」と注文してハタナカさんに300円渡す先輩。

 なんだ買ってくれるんだ怒って帰っちゃうかと思ったのに。

「「「「ありがとうございます!」」」」と帰る先輩に声を合わせるハタナカさんとタダと私とオオガキ君だ。

 オオガキ君までお礼言ってる。あの先輩も300円分も買ってくれたしハタナカさんすごいな…良かった、と安心してヘラっと笑いかけたら、「ちっ」とハタナカさんが舌打ちした。

 へ?と思う。タダの前でハタナカさんが舌打ち。

「ユズりん。もっとテキパキさばけないの?なのになんでちょっと笑ってんの?」

「…あ…」

「あ、じゃないじゃん」

「…あのごめんなんか…」

「イズミ君も今シフト違うでしょ?」と今度はタダに詰め寄るハタナカさんだ。「なんでここにいるの?」

「…」答えないタダ。

「オオガキが来てたからだよね?」さらに突っ込むハタナカさん。「シフトどおりに動いてもらわないと困るんですけど!」

「あ、」とオオガキ君が言った。「オレ、店番の時間になるから、じゃあ後でねユズルちゃん」


 「いやちょっと!!」と私たちに突っ込んだのはシホリちゃんだった。「お会計止まってるから!」

 ぶつぶつ言いながらお会計に戻るハタナカさんもシホリちゃんにはちゃんと「ごめん」と言う。もちろん私も言ったが、それからはそこにいたお客をこなすためにタダも一緒にお会計に残ったので、私たちはもう販売機のように客をこなした。



 そのシフトが終わり、私とハタナカさんが休憩に入るのに教室を出ようとするとタダがハタナカさんに言う。

「次、ちゃんとまたするから今だけちょっと抜けさして10分だけ。すぐ帰って来るから」

言うだけ言って私の腕を掴み一緒に教室を出る。ひゃぁ~、とか、やだぁ、とか、言う声が聞こえるのにタダは私の腕を掴んだまま、私はそのまま引っ張られるように廊下を進む。

「ちょっと!タダ!」と言うがタダは止まらず腕も放してくれずそのまま渡り廊下を渡り、第3棟3階の今日は使われない視聴室の前まで来るとやっと止まった。今、この階には誰もいない。階下の騒がしさが遠くに感じる。急に温度も下がった感じだ。


 

 たくさんの人に腕取られて引っ張られるの見られた。

 この後どうやってハタナカさんと一緒に仕事するんだろう。さっき3年の先輩と感じ悪くなった時にもハタナカさんが来てくれて収まったのに。

 それでまだ腕は放されないし、じっと見られる。ので、目を反らしてしまう。

「…めんどくさい」とタダが言った。

「…なに?」なんの事を言ってる?

「なんかいろいろめんどくさい」吐き捨てるように言うタダだ。

「いろいろって?」

「ああいう店番とか、買いにくるだけじゃなくて絡んでくるやつとか、ハタナカとか、オオガキとか、」

「…そんな…」と言いかけたらタダが続けた。

「大島とかな!」

「私!?」

「簡単に一緒には回らないとか言ってくるしな」

「だって、どうせ店番とかで今日は回れないし」

「最初からわかってたわけじゃないじゃん」

「そうだけど…」

「なぁ、マフラーどこあんの?ロッカー?いつくれんの?」

そんなせかせかした言い方しなくても…まあ10分てハタナカさんに言って来たしすぐ教室帰んないといけないけど…


 「持ってきてない」と答える。

「は?持ってきてない!」タダが私が言ったことを大きな声で繰り返したので少し廊下に響く。「何それ、やっぱくれんの止めたって事?」

「ううん」とぶんぶん首を振る。「タダちょっと手ぇ放して」

「…」無言でやっと手を放すタダ。

「あのね、今日帰ったらタダのうちまで持って行くから。今日用事ある?」

「オレんち?オレんちまで持って来てくれんの?」

「そう。いい?…あの、好きな色を聞くとか欲しいものあげるって言ってたのに勝手に買っちゃったけど、結構似合うと思う色選んだから」

「…そうなん?」

 タダの顔と口調がやっといつもの感じに戻った感じがする。

「あ、でもやっぱ見てみて気に入んない時は私交換しに行くから遠慮なく言って欲しいからね。レシート捨ててないし」

そう言ったら、ふっ、と笑うタダ。

「大丈夫だろ。似合うと思うの選んでくれたんなら」

優しく言われて、そして今二人きりだなって急に意識したらすごくドキドキしてきたどうしよう。


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